サトノキングダムは結果的にはスプリングSを回避することになってしまったが、白熱する春シーズンを迎え、有力馬を重賞に送り込みつづける名門・国枝栄厩舎。今回は阪神大賞典のタンタアレグリアを中心に、気になる素質馬たちの動向をまとめて語っていただいた。

課題を残す段階で連勝中のサトノキングダム

-:スプリングSのサトノキングダム、阪神大賞典のタンタアレグリアと東西重賞に有力馬を送り込まれる国枝栄調教師です。まず、デビュー2連勝中のサトノキングダム(牡3、美浦・国枝厩舎)の中間の動向についてお聞かせいただけますでしょうか。(取材日:3/10、サトノキングダムはスプリングSを回避)

国枝栄調教師:弥生賞の予定を2週間延ばして、スプリングS(G2)に行こうということでやっていました。それで、調教は先週、今週と半マイルからやりましたが、正直なところ(動きは)もうひとつかなという感じはしましたね。やっぱりもともと体質が弱くて、デビューが遅れたほどですからね。

-:2歳時も5月に調教をやっていたのが、また7月に延びて、最終的には12月のデビューでしたものね。

国:実際、2回使って2回とも勝っているので能力はあるのだろうけど、本質的にまだ体力が伴っていないというか……。調教を進めていくと腰に疲れがくるのでね。芯がシッカリしていないから、ドンドン調教を進めていける段階でもないのでね。

-:裏を返せば、そういう中でも2連勝してきているのは能力の高さですよね。

国:そうだね。だから、時期的に今の馬ではないのかもわからない。歳を取ってきてとか、長い目で見て良くなる時に、またグンと(状態が)上がってくるのかもしれないね。

国枝栄調教師

▲併せ馬を行うサトノキングダム(手前)


-:今後のために伺いたいのですが、気性や性格はどんな馬ですか?

国:性格は大人しいですよ。ディープインパクトの子はやっぱり優等生が多いよね。

-:「優等生が多い」というのは技術の高い牧場、生産者のもとでシッカリ手なずけられているということもあるからでしょうか。

国:いや、基本的なブレーキングとか扱いが良いのは確かだけど、馬の持っている気性ですね。例えばステイゴールドとか、ネオユニヴァース産駒などはけっこう難しいところがあるので。

-:そういう意味ではこの馬の持っているところでは素直さとか、操縦性の良さ、平均点の高さが素質の表れでもあるのですね。2戦目も中団のインで我慢ができるところを見ても、精神面の不安がない馬だと思いました。

国:初戦はどうかと思ったけど、2回目はああいう競馬ができたから、期待も高まるのだけどね。やっぱり能力はあるとは思うので、頑張ってほしいです。

タンタアレグリアは賞金加算が命題

-:続いて、阪神大賞典(G2)タンタアレグリア(牡4、美浦・国枝厩舎)はいかがですか?

国:前回ダイヤモンドS(4着)を使って、馬場が悪くて終い伸び切れなかったけど、その後も問題もなく来ています。今週も順調に追い切りができたし、来週サッとやって阪神に行こうかなと思っていますね。これも、良馬場では差のないところに来ているものの、もうワンパンチ足らないよね。競馬に行って、やはりもうひと伸びして欲しい。そこがまだ良くなるとは思うね。

-:しかし、前走はタンタアレグリアのフットワークからすると、前走の馬場もちょっと酷だったのかなと。

国:直前に雨が降っちゃってね。その日、私は関西に行って、東京にはいなかったので、聞いたら「もうドロドロになって上がってきて、馬場もちょっと合わなかった」と言ってね。(蛯名)マサヨシも「途中までこれならと思って、いざ追い出したら全然ダメだった」と言っていたから。

-:そして、もうひと伸びというお話もありましたが、菊花賞の結果(4着)を見ても、通った場所が明暗を分けたのかなというところもありますよね。同じ内枠で内を突いたキタサンブラックは一か八かにも感じましたが……。

国:それはあるよね。その前のセントライト記念の時もそうだったけど、位置取りが内と外で微妙になったり。そういう意味では「タラレバ」の領域だけど、もうちょっとセコく回ってくれればなと思ったところもあるのは事実。しかし、しょうがないことですよね。

-:ただ、あの内を突くというのは賭けでもありますものね。

国:そうそう。勝った馬が一番上手く乗れてたということだね。

国枝栄調教師

▲ウッドコースで長めから追われるタンタアレグリア(手前)前走のダメージを感じさせない


-:そこら辺で多少命運を分けたのかなと思います。肉体面では、まだまだ良くなりそうな余地はありますか?

国:まだだね。ちょっと薄手の馬で長いところを走るので、そういうタイプかもわからないけど、見た目もうちょっとシッカリして欲しいなと思うので。

-:私からすればシッカリしているように見えるものですが、プロから見ればまだまだだと。

国:いやいや、まだ。我々の好みもあるけどね。ゼンノロブロイだから、気性が素直じゃないところがあるからね。そこも気がかりではあるかな。

-:そういう気質の馬でも、この馬は比較的素直なタイプですか?

国:まあ、競馬に行って素直だよね。ただ、普段はうるさいところがあるよね。

-:それでも適性としては、長丁場という路線と。

国:長いところなら良いと思うよ。一応、出られるということになれば天皇賞(春)に、ということになるし、結果次第だよね。天皇賞(春)は(賞金的に)ギリギリになるんじゃないかなと思うけどね。今年辺りはちょっと(出走頭数が)多いのかもわからないな。

-:1週前、当週の追い切りメニューというのは、どういうものになりそうですか?

国:今週はもうやったけど、来週は輸送があるので、そんなにビッシリやらなくても良いんじゃないかな。サッとやって、向こうへ輸送をしていこうかなと思っています。

-:幸い、比較的3000m超の条件というのは、割と近年はメンバーが「揃い過ぎない」イメージがあるので、賞金を加算できるチャンスは大いにあるのかなという感じはします。

国:そうだね。とにかく良い馬場でやりたよね。それに尽きます。

気になるあの馬の動向にも言及

-:そして、皐月賞路線を見送ったプロディガルサン(牡3、美浦・国枝厩舎)は青葉賞という予定でよろしいのでしょうか?

国:青葉賞(G2)だね。これは大丈夫というか、普通にできるようになったから、レースまで40~50日くらいあるから、しっかり間に合うと思うけどね。まあ、ブランクはあるけど、何とか頑張って良い結果を望みたいね。

-:ちょっと荒削りな所がありますけど、能力は確かですからね。

国:うん。馬はシッカリしているし、トップクラスまで行けるんじゃないかなと期待しているんだけどね。

-:ジョッキーの予定は決まっていますか?

国:取りあえずは(戸崎)圭太で青葉賞までは決まっている。その後はどうなるかはわからないね。

-:分かりました。お忙しいところありがとうございました。