3歳の1月デビューから18戦を消化し、使われつつグングンと力をつけてきたケントオー。これまで挙げた5勝は全て人気以上の激走で、穴党にとっては出走してくれば目が離せない存在だ。中京記念で③着と目途を立てた後は迷いなく関屋記念を目標に調整されており、今回は主役級という立場。その成長を最も間近で感じている高橋一厩務員に、念願のタイトル奪取に向けての意気込みを聞かせてもらった。

偶然の格上挑戦を転機に大出世

-:関屋記念(G3)に出走を予定しているケントオー(牡4、栗東・西橋厩舎)の話を伺っていきます。まずは、前走の中京記念(③着)は最後ものすごい脚でしたが、率直な感想はいかがでしたか?

高橋一厩務員:あんな最後方から競馬をするとはまさか思っていませんでした。ある程度前か、中団で内に付けて、と思っていたんですけどね。今まではずっと引っ掛かる馬だったのですが、最近は調教でも乗りやすいみたいで、逆に行きっぷりが悪くて、後方からになってしまって。和田さん(和田竜二騎手)も「うわ、ゴメン」と言っていたのですが、却って終いの脚が切れたので、逆に幅が出たかなと思いますね。後ろからも行けて、前に行ってもソコソコ来られるのですから。

-:あわよくば……、という内容でしたね。結果的には収穫があったと。

高:新春Sで小牧さんが乗った時もメッチャ出遅れて、最後方からの競馬だったのに勝ったんですよ。あの時も“脚はあるんやな”と思ったので。

高橋厩務員

▲厩舎の稼ぎ頭の2頭を手掛ける高橋厩務員


-:今となっては末脚に磨きが掛かってきたことと、自在性が出てきましたね。

高:道中も引っ掛からなくなっているし、今は調教も乗りやすくなっているみたいで、4歳にしてだいぶ大人になってきたのかなと。それでも、まだ良くなるような気がするんです。この馬はいつも未完成で出して勝っちゃっている、という感じなので。

-:それまでは先行して、前々で折り合って、というのが勝ちパターンだったのですが?

高:最後方からあの脚が使えて、和田さんも「これ、どっかで重賞獲れるわ」と言ってくれているので、期待していますね。次の新潟は直線が長いので、余計に良いかなと思いますが、あとは輸送だけですね。

-:デビュー当初から1年半が経ちます。今となっては重賞級の馬ですが、3歳1月のデビュー当時の印象はいかがでしたか?

高:今でもちょっとビビリなところはありますね。とりあえず性格が子供で暴れるし、調教でも競馬でも引っ掛かったりして、乗り辛い馬でしたね。その頃、中谷さんが乗っていましたが、よくやってくれていたなと。ちょうど良くなってきた頃に和田さんに乗り替わって、ポンポンと勝ち上がったので。以前は引っ掛かってしょうがなかったので、1400mばっかり使っていたんですよ。今は1600mでも全然大丈夫ですね。

-:ゆくゆくの話になりますが、今だったらもっと長い距離でも?

高:今だったら1800~2000mでもいけると思いますが、もう1頭担当していて、今放牧に出ているスズカルパンという馬がいまして。それが大体2000mを使っていたので、ケントオーとレースが被らないようにしようと言って、1600mを使っていたら結果が出たので。


「1000万で2連勝して、上のクラスでやっていたら見た目が変わってきて、そういう競馬を覚えたら、段々折り合いも付いてきて、準オープンの時にはまあまあ折り合っていたので」


-:話は逸れますが、スズカルパンも今は芝の1800~2000mで成績を残していますね。

高:ダートで頭打ちになって、芝に転向したら切れ味があって、和田さんも「7歳になって、まだ進化している」と言って、ビックリしていましたね。

-:こちらも、この間、準オープンになりましたね。

高:そうですね。③着に来ているので、チャンスがありそうですね。どちらかと言うと、スズカルパンの方が先にオープンに行くんじゃないかと思っていたんですけどね。

-:ケントオーの方がポンポンと行ってしまったと。躍進のキッカケは格上の1000万に出走した時ですか?

高:そうですね。その頃もよく引っ掛かっていたのですが、秋に新潟の500万(⑥着)で権利が取れなくて、次に使いたくても、芝のレースになかなか入らなくて……。そうしたら、1000万がたまたま10頭立てだったので、取りあえず放り込んでおこうかと出走したら勝ったんですよ。500万のフルゲートで競馬をするよりは、頭数が少なかったのでやりやすかったのかもしれないですね。やはり揉まれると、余計に引っ掛かっていたんで。

そして、1000万で2連勝して、上のクラスでやっていたら見た目が変わってきて、そういう競馬を覚えたら、段々折り合いも付いてきて、準オープンの時にはまあまあ折り合っていたので。


-:準オープンも②着、①着と2戦で突破して、成長力というか。やっぱり和田ジョッキーとも手が合うということですね。

高:合っていたんでしょうね。前に馬を置いて壁にして、内々でジッと我慢して、直線勝負という感じで、それで結果が出ていたので。

高橋厩務員

自在性ある脚質が最大の武器

-:その後はオープンの壁に阻まれるような結果が一時続きましたね。

高:1回放牧に出して帰ってきて、マイラーズCを使ったのですが、それでも、外枠(13番)を引いて⑧着には来たんですよ。次戦の安土城Sの時もちょっと良い競馬はできなかったですけど⑧着、⑧着と続いて、米子Sの時はメチャクチャ具合が良かったので。頭数も少なくて、ただ雨がどうなんやろうと思っていたら、ドシャ降りでも大丈夫でしたね。(GI実績のある)クイーンズリング相手にどうなんやろうと思ったけど、あの馬に楽勝だったので、これはちょっと重賞でもおもしろいかなと。和田さんが「中京に行こう」と言って、中京記念を使って。

-:関屋記念に向けて、1週前の追い切りについてはどのような予定ですか?

高:明日(8/4)目一杯やって、来週の水曜は終いだけやって、木曜日に運動して、金曜日に軽く乗って、土曜日出発で行こうかと思います。

-:今回は輸送を考慮した内容ですか?

高:そうですね。3歳時に1回だけ新潟に行ったことがあって、“多分この馬はイレ込むし、体も減るやろうな……”と思ったら、プラス10キロだったんです。あんまり減らないのかなと思いつつ、その頃とは馬が違うから分からないですが……。当時のレースでは揉まれて引っ掛かっていたものね。中谷騎手は「ぶら下がっていただけで、何も出来なかったわ」と言って。あの頃よりはずいぶん大人になっているので、輸送は大丈夫だと思うんですけどね。

高橋厩務員

4日、坂路で4F53.0-13.0秒をマークしたケントオー


-:今となっては心配事も減ってきたと。

高:逆に、元気が良過ぎて怖いなと思って。新潟に輸送して1日あったら……。ちょっと行ってみないと分からないですね。

-:ここのところは当日輸送でしたものね。今のところは夏バテとか疲れもなさそうですね。

高:去年も夏は大丈夫だったので。一応、馬房ではミストとかもやっているんですけどね。これを新潟に持っていこうかなと。

-:向こうの馬房だとそういうものがないから、厩舎から持っていくと。

高:はい。やっぱり全然違いますよ。

長い直線を利して勝ちに行く一戦

-:将来に向けての課題というか、今後良くなって欲しいな、と思うような部分はありますか?

高:カイバも食べますし、勝手に体を調整してくれるから楽なんですよね。そんな増減もしないですし、大体466キロ近辺をずっといっていて。体重を量りに行ったら立ち上がって、煩くて量れないんですよね。だから、競馬当日しか量っていないのですが、そんなに増減はないかな。ただ、ボロがまだ、ちょっと油断したら下痢みたいになるので、やっぱり精神的にはピリピリしているんでしょうね。もっと良いボロをしてくれたら、もっと良い体になる気はする。消化がまだ下手なのかな。

-:その辺がもっと良くなればと。

高:精神面が問題なのかもしれない。神経質なんですね。この馬、中京で初めて(レース後の)ドーピング検査に行ったら、小便をしなくて、結局血液を抜かれて。70分経っても小便をしなくて。京都、阪神は慣れているからすぐにするんだけど、この前中京に行った時はしなかったんですよ。レースに行ったら、シッカリ走ってくれますが。普段の調教でも、軽いところだったら物見するらしくて。速いところに行くと集中するんですけどね。でも、オン、オフがシッカリしているから良いかもしれないですけどね。

高橋厩務員

-:レースに行ってシッカリ走るというのは頼もしいですね。

高:はい。どこから競馬をしても、終いが伸びるのが良いですね。

-:勝手な印象ですが、昔は内枠の時によく走った印象があります。

高:ああ、そうですね。この前は6枠(12番)だったので、今なら別に大外でも競馬できると思うんです。前はよく引っ掛かっていたから、内枠を引いた方が良いかと思っていました。

-:前走の中京記念を観ても右回り、左回りの不安は特にはありませんか?

高:和田さんも「全然関係ない」と言っていましたしね。

-:最後に、関屋記念に向けての意気込みを聞かせていただけますでしょうか。どんな競馬を期待していますか?

高:脚質に幅があることは分かったので、それを活かして、新潟の長い直線で目一杯やってくれたら楽しみですね。

-:関屋記念の後は夏休みですか?

高:1回休ませて秋に備えるのか、サマーマイルシリーズに行くのか、そこはまだ、馬主さんと相談してからみたいです。結果次第ですね。

-:ありがとうございました。重賞タイトル奪取とシリーズチャンピオンになれることを応援しています。

高:ありがとうございます。

高橋厩務員