藤井勘一郎騎手インタビュー前編はコチラ⇒

初の南関東での期間限定騎乗 また、日本に戻る日を

-:所属されていた荒山厩舎について、荒山厩舎ならではの良さがあれば教えていただきたいのですが。

藤:先生をはじめ、厩舎スタッフの皆さんの勝つことに対する意識が本当に強いなと感じましたね。大井のリーディングも獲られていますし、重賞で活躍する馬も多く所属しています。スタッフさんも僕の乗る馬を良く仕上げてくれていて、僕が任されているのは調教を頑張ることではなく“ウチが調教するから、藤井君はレースに集中して欲しい”といった、ムードを受けました。

-:3ケ月の騎乗を終えられて22勝を挙げましたが、その数字に関してはご自身でどう感じられていますか。

藤:騎手として勝つことが最高のご褒美なので、22勝できたことは素直に嬉しいです。関係者から信頼していただいて結果を出すことができたと思います。本当に1つ1つの勝ちの積み重ねですし、来た当初は数字というよりも、内容面で1頭1頭どう自分が集中できるか考えていました。

-:「22」という数字は、多い・少ないというのはご自身の中ではないということですか?

藤:22勝という額面じゃなくてやっぱり内容で、この馬の時は2着や3着でそれが悔しかったというのはありますよね。数字よりも、例えば何回も乗せていただいている馬のどういった持ち味を出せるかなど、そういうところに集中してきましたね。

藤井勘一郎

▲暮れのシンデレラマイルでは荒山厩舎のリンダリンダで惜しくも2着

-:もう南関東の騎乗も終わられた訳ですけど、ご自身の総括として感想をお聞かせ下さい。

藤:これだけの騎乗馬をいただいて、たくさんレースに勝たせていただくことができたので、また南関東という地に戻ってきたいという思いは強いです。僕自身日本人なので、日本でレースに乗りたいという気持ちがさらに強くなりました。

-:短期騎乗が終わった後、今後の予定も決まっていたら教えていただきたいのですが。

藤:僕はオーストラリアの免許を持っているので、オーストラリアに戻って騎手を続けます。そして、その合間にまた南関東で3ケ月騎乗したいと思っていますし、これからもJRA試験に挑戦し続けたいとは思っています。

昨秋はG1馬クリソライトに3度騎乗

-:話が前後しますが、昨年のコリアCのお話も聞かせて下さい。コリアCに乗られるようになった経緯を教えていただけますか?

藤:コリアCの2ケ月前くらいに、オーナーサイドから「コリアC出走を考えているので、予定を空けておいて下さい」というメッセージがありました。それで、その時は確かシンガポールで騎乗していたのですが、シンガポールの騎乗も終わりかけで、次の地が決まっていなかったので、僕は確か牧場で乗ることになっていたんですよ。そして、牧場から栗東の矢作厩舎での研修というのは前々から予定していたのですが、ちょうどミリオンヴォルツ号とクリソライト号のコリアスプリントとコリアCの調教に、牧場と栗東内の厩舎で携わることができました。

-:コリアCのクリソライトはかなり注目度も高かったと思います。レースへの意気込みはいかがでしたか?

藤:僕自身、クリソライトにはそれまで乗ったことがなくて、やっぱりJRAの馬なのでJRAのジョッキーが乗ってもおかしくないなという中で僕を選んでいただいて、それは本当に嬉しかったです。選んでいただいたからには、調教も含めて万全の状態で臨みたいと思いました。僕自身は、ソウル競馬場は以前にもグランプリや、韓国ダービーを優勝していますし、(JRA所属でトゥクソム杯を勝った)エスメラルディーナもそうですけど、地元の馬で乗って馬場も熟知しているので、それは他のジョッキーよりもアドバンテージかなと思っていました。

-:コリアCのスタートを切った後ですが、道中はどんな思いでしたか?

藤:クリソライトって決して簡単な馬ではなくて、強さの反面、危うさも見せる馬だなとは感じていました。でも、1コーナー過ぎてから外に切り返すことができて、(2着だった)クリノスターオーをマークできて、そこからはスムーズな展開でしたね。スタミナがあるとは感じていたので、早め早めにクリノスターオーに仕掛けていって最後は本当に強い勝ち方をしてくれました。

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-:そのゴールを切った時の気持ちをもう一度表して欲しいのですが。

藤:もう叫んでいましたね。韓国という地に2012年に僕が行って、ゼロからスタートしてたくさん勝たせていただきましたが、僕自身、海外をベースにしていることから、JRAの馬に騎乗するチャンスはそこまで回ってくる訳でもない。そんな中、韓国がすごく国際化に力を入れていることも知っていましたし、第1回のコリアCで国や陣営の熱意を感じながら勝てたことは本当に重みがありましたね。

-:そのコリアCの優勝で、藤井騎手もその後が変わったと思うのですが、気持ちの変化にしろ、周りの変化にしろ、何か大きい変化みたいなものはありましたか。

藤:いや、僕の中ではそこまで変わらないですし、南関東に来れば、またここでどういう騎乗をするかというのを試されていると思っていました。1つレースを勝ったからといってジョッキーの仕事は安心していられないです。常に結果の出せるジョッキーでありたいなと思っています。

-:クリソライトとはその後もコンビを組むことになりましたね。

藤:JBC(クラシック)はたくさんのお客さんの中で乗せていただけましたし、地方競馬最高峰のレースなので、それを経験できたことは本当に貴重な体験でした。結果(11着)は、リズムが上手く合わせられなくて残念だったのですが、また、その後も浦和記念で騎乗をいただいて、そこに関しても、自分の中で工夫して乗れたと思います。

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JRA移籍が最大の目標

-:矢作厩舎に研修に行かれたことをちょっとお伺いしたのですが、矢作厩舎で感じたこと、学んだことがあれば教えていただきたいのですが。

藤:矢作先生はダービーを勝たれていますし、2015年、2016年と全国リーディングを獲られて、すごく勢いのある厩舎だとは感じていました。もともと矢作先生が3年くらい前に出された本にすごく共感を得ていて、共通の馬主さんにぜひ矢作先生を紹介していただきたいということで、ちょっと時間をいただいたんですよ。それがキッカケで2015年、2016年と研修させていただき、あれだけ良い馬がいるので調教でも気が引き締まりながら騎乗できましたね。

-:昨年から日本でも海外の馬券が発売されるようになり、海外競馬の注目度が一気にあがりました。国際交流の流れはこのまま加速しそうですが、日本馬が海外に遠征する際、どんな馬なら現地の馬場や環境に対応できると思いますか?

藤:香港やオーストラリアは馬場が整備されていて日本の馬場と似ているので、日本馬は力が出しやすいですし、実際に結果も出ています。ヨーロッパはコースの形態や芝などがより自然に近いです。大手の厩舎は同じレースにラビットを使ったりレース中の駆け引きの要素が多く、ラップタイムがそこまで重要視されません。だから、馬群で揉まれても大丈夫で、騎手がコントロールして折り合えて、脚質に自在性がある馬が良いでしょうね。可能ならば長期滞在して馬場やペースに慣れることも重要でしょう。


「将来の仕事についてもジョッキーを続けることが僕に一番合っているなというのは理解してくれているので、本当に家族が納得して、僕の気力が続く限りは、日本に向けてチャレンジしたいですね」


-:藤井騎手の将来的な展望ですが、JRAに移籍したいという強い気持ちもあると思います。そこについてはいかがですか?

藤:日本で乗りたいというのが、本当に強い希望です。JRAは4回試験を受けて、残念ながら不合格だったのですが、奥さんも「出来る限りの我慢はするよ」と言ってくれていますし、将来の仕事についてもジョッキーを続けることが僕に一番合っているなというのは理解してくれているので、本当に家族が納得して、僕の気力が続く限りは、日本に向けてチャレンジしたいですね。

-:最後になります。応援してくれるファンのみなさんに向けて、何かメッセージがありましたら。

藤:僕自身、1頭1頭全力で乗りますし、良い騎乗ができるように、良いジョッキーになりたいですね。今まで悔しい思いをしてきましたけど、良いジョッキーになりたいという思いでやっているので、応援よろしくお願いします。

-:ありがとうございます。

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