CBC賞で厩舎3つ目の重賞タイトルを狙う!
2010/6/10(木)
鹿戸雄一調教師
高:先生、よろしくお願いします。
鹿:よろしくお願いします。
高:ベストロケーションは、先生が開業される前は矢野進先生の厩舎にいたんですよね。
鹿:そうそう。矢野先生の厩舎にいて、未勝利を勝った後に左前のヒザを骨折して手術をしてずっと休んでいたんですけど、矢野先生が定年を迎えられることもあって、僕のところにお話をいただいたんですよ。
高:そうなんですか。
鹿:預かることになって最初のうちはなかなかレースに使えなかったんですよね。脚元があまり良い状態ではなくて、歩様も良くなかったし、スクミもひどくてなかなか厩舎に連れてこられなくてね。
高:大変だったんですね。
鹿:何せ体が弱かったですからね。でも、せっかく預けていただいたので何とかしたいな、と思って調整を続けて「良い状態になったな」と思えるようになってから厩舎に連れてきました。
高:そして08年12月に復帰初戦を迎えられて。
鹿:そういう状況だったので、芝のレースでは厳しいだろうなと思って、ダートから使うことにしたんです。それで何回かダートを使いましたけど、全然結果が良くなかったので「一回芝に行ってみましょうか」という話になって、休みを挟んでから芝の1200メートルに使うことにしたんです。
高:なるほど。
鹿:そうしたら、そのレースで出遅れたんですけど、最後の100メートルくらいで凄い脚で追い込んで来たんです。それを見て「これはスタートが良かったら多分勝負になるかな」と思って、福島の1200メートルに行ってみたんですよ。
高:去年の4月26日のレースですね。
鹿:その時も、まだ歩様も万全ではないし、しょっちゅうスクんだりして完調ではなかったんですけど、土砂降りの馬場で2着に来たので「もうちょっと歩様が良くなればやれるだろうな」と。それで芝の1200メートルがいいな、ということでずっと使って、良い成績を残してきたんですよね。
高:結果も安定していますね。
鹿:はい。無理をせずに、悪いときは使わないで大事に使ってきましたけどね。勝つごとに、徐々に歩様も良くなってきたしスクミも無くなってきましたね。
高:良い変化があったんですね。
鹿:そうですね。それで去年の暮れに準オープンの市川ステークスを勝ってオープンに上がって、せっかく女の子で短距離で頑張る馬だし、体調もアップして体が丈夫になってきたので「これなら春先はヴィクトリアマイルを目指してみよう」ということになって、ちょっと長い距離のレースを使ったんですよね。
高:その京都牝馬ステークスでは2着でした。
鹿:ベストロケーションは雨降りが得意というわけではないですけど、他の馬よりも上手だと思うんですよね。そういうこともあって、最後まで頑張ってくれました。
高:ヴィクトリアマイルに向けて良い手応えも感じられたんじゃないですか?
鹿:そうですね。賞金も加算出来て、無理をしないでレースに出られるかな、と思いました。
高:次の阪神牝馬ステークスまで、約2ヶ月間が開きましたね。
鹿:やっぱり元々弱さがある馬なので、疲れが残ったままだと、せっかく良くなってきた状態が振り出しに戻ってしまいますからね。山元トレセンに戻してケアをしてもらって、また厩舎に戻してもらいました。
高:体調を整えて阪神牝馬ステークスに向かおう、と。
鹿:元々中山牝馬ステークスを使ってからヴィクトリアマイルに行こうと思っていましたけど、フレグモーネになってしまったんですよね。ひどい状態ではありませんでしたけど、何日間か稽古を休みましたし、そのまま稽古を続けてまたスクミが出ても嫌なので、大事をとって中山牝馬ステークスを使うのは止めました。
高:そうなんですか。
鹿:それでまた山元トレセンに戻したので、予定よりもレース間隔は開きましたけどね。
高:そして阪神牝馬ステークス、ヴィクトリアマイルと出走されましたけれども、この2戦はどうご覧になられましたか?
鹿:うーん、阪神のときは稽古が足りなかったのかもしれないし、展開も前に行った馬が総潰れみたいな感じでしたし、後から振り返ると「やむを得なかったかなあ」という気持ちもあります。その後また短期放牧に出して体調は戻っていましたし、ヴィクトリアでは体重が増えていましたけど、それに関しては特に気にはしていませんでした。
高:プラス14キロでの出走でしたけど、特に「増やそう」と思われていたわけではなかったんですか?
鹿:はい。とにかく疲れをとることが第一でしたから。短期放牧に出て、良い感じでリフレッシュ出来ていました。
高:ヴィクトリアマイルでは先手を取った形になりました。
鹿:良いペースで進みましたけど、ずっと突かれる形になっていたので、展開的には厳しかったですね。でも、それを考えれば坂下まで頑張っていましたし、大きく離されたわけでもありませんからね。着順だけ見れば振るいませんでしたけど、頑張ってくれたと思います。
高:ヴィクトリアマイル後の状態はいかがでしたか?
鹿:多少の疲労はありましたけど、厩舎にそのまま置いて調整しながら疲れを取ってきました。もしヴィクトリアで結果を出せなかった場合はCBC賞を使う予定も考えていましたので、放牧に出さず厩舎で調整をしました。
高:それで体調面の問題もないので、その予定通りに出走をされる、と。
鹿:はい。状態も維持出来ていますし、今回は体が少し絞れての出走になるかもしれませんけど、カイバもしっかり食べていますから体重に関しては問題はないと思います。稽古も十分にやっていますから、良い状態で出走させられると思いますよ。
高:今年のCBC賞は京都競馬場で、ベストロケーションは一度経験がありますけど、コース適性に関してはどうお考えですか?
鹿:まあ、レースが上手な方ですから、ここの競馬場は合わない、ということは無いと思います。
高:なるほど。先生からご覧になってベストロケーションはどんな性格だと思われますか?
鹿:おっとりしていますよ。でもレースの日はカッとしますから、上手くメリハリがついていて、ちょうど良いと思います。以前に返し馬でジョッキーが落とされたこともあるくらいですから、競馬の日はちょっとピリッとするんですよ。
高:当日のどのあたりからそういうテンションになるんですか?
鹿:騎手が乗るとピリッとしますね。その前はパドックでも大人しいですよ。
高:そうですか。あと…雨も大丈夫ですもんね。
鹿:そうですね。凄く上手というわけではないですけど、他の馬に比べると苦にしませんからね。降っても降らなくても安定していますし。競馬が上手な馬ですからレース展開にも注文はありません。
高:ちなみにCBC賞のあとはどういう予定をお考えですか?
鹿:この後はひと息入れて、状態が良ければ秋の短距離の大きなところへ向かいたいなと思っています。
高:レースが楽しみですね。先生、今日はお忙しいところありがとうございました。
鹿:こちらこそありがとうございました。
高:…ここでベストロケーションが重賞を勝つと、先生の厩舎にとっては3つ目の重賞タイトルになりますね。
鹿:うーん、もっと勝ちたいですね(笑)。良い馬を預けていただいて、結構重賞に使っているのになかなか結果が残せていませんから、まだ甘いんですよ。馬主さんや牧場の方たちが凄く応援してくれているので、期待に応えないとね。
高:私たちからすると、重賞にそれだけ使えるだけでも凄いと思っちゃいますよ。開業初年にG1を勝たれていますし。
鹿:僕は運だけはあるから。あんまりこんなことばっかり言っていると馬鹿だと思われちゃうかな(笑)。
高:アハハ(笑)。
鹿:いや、運だけでいつダメになるか分からないから、サボらないで休み無く仕事をしているんですよ、僕は。周りの先生たちも凄く熱心に仕事をしているから、それ以上に働かないと置いていかれますしね。せっかく調教師としてやっているので負けるわけにはいかないですから。
高:今年は厩舎開業3年目になりますけど、ここまで振り返っていかがですか?
鹿:「焦ったらダメだな」というのは最初から決めていました。焦ったり急いだりして馬に負担がかかると故障してしまいますしね。壊したら終わりですから。大事にして可愛がってあげれば馬は応えてくれる、と信じてね。仕事面に関しては、特別なことをしているわけでもないですけど、やらなければいけない仕事を皆で一生懸命やっていますよ。厩舎の雰囲気も良いですしね。
高:いいですね。
鹿:やっぱりそういうのが重要なんじゃないかな、雰囲気良く仕事が出来るっていうことが。レースにもそれなりに使えているし、皆には楽しんで仕事をしてもらえているんじゃないかな、と思っています。1つでも着順を上げようと皆一生懸命頑張ってくれていますから、そういうのは見ていて嬉しいですよ。
高:素敵ですね。あ、また話し込んじゃいましたね。これからも応援しています。今日はありがとうございました。
鹿:いつでもどうぞ。
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■最近の主な重賞勝利 |
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08年の開業初年からエフティマイア号が牝馬クラシック路線で活躍し、秋にはスクリーンヒーロー号がアルゼンチン共和国杯とジャパンカップを連勝し、JRA賞(最優秀4歳以上牡馬)を授賞するなど、華々しいスタートを切った。 その後も順調に勝ち星を伸ばし、現在開業3年目を迎える。 CBC賞にベストロケーションを送り込み、厩舎3つ目の重賞タイトルを狙う。 |
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■出演番組
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2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。 |