関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

川島正行調教師

川島正行調教師


これまでにアジュディミツオー、ネームヴァリュー、サクラハイスピード、サプライズパワーなど、名立たる名馬を手掛けてきた船橋競馬の川島正行調教師。

幾多の栄冠を勝ち取ってきた師が、今年の7月5日に地方通算1000勝を達成。記録の確認できる73年以降に新規開業した南関東4競馬場所属の現役調教師では、初めてとなる金字塔を打ち立てただけでなく、この春には、厩舎のエース・フリオーソで帝王賞を、マグニフィカでジャパンダートダービー(JDD)を制覇。その存在を地方競馬のみならず、競馬界に見せつけた。

そして、この秋には地方競馬のビッグイベント「JBC」が、船橋競馬場で行われる。千葉県調教師会の会長にも就任。名実共に船橋競馬・地方競馬の枠を超え、競馬界を代表する調教師として躍進を続ける川島正行調教師が、この秋もフリオーソ、マグニフィカらと共に競馬の祭典「JBC」を彩るに違いない。


■■■ 帝王賞を制したフリオーソが、日本テレビ盃で始動 ■■■

-:上半期は、川崎記念で2着に惜敗したのを皮切りに、かしわ記念もエスポワールシチーの2着、そして、帝王賞も並みいるJRA勢を退けて、史上2頭目2度目の帝王賞制覇を成し遂げたフリオーソですが、ここへ来て、更に進化した感がありますね。

川:馬の運が強いんじゃないかな。アジュディミツオーと比較すると、(基本)タイムが一丁半違うからね。一番状態のいい時で、3秒かかってるんだから。ミツオーで2秒台で3度程負けていますから。3歳の頃のタイムというのは、ミツオーも、フリオーソも、マグニフィカも変わらないんだよ。それが徐々に完成されて強くなってくるわけだからさ。

タイムだけで比較してしまうと、一番強いのはミツオーとゆう事になってしまうけれど、やっぱり、それを度外視すると、帝王賞を2度も制したわけですから、「運が強い馬だなぁ」と。[1]


-:先生の中では、やはり最高傑作はアジュディミツオーと。去年の後半などは、「衰えてきたのかな?」という成績が続いた事もありました。

川:(最高傑作は)そうだね。去年は休養させた時に、体に斑点みたいなものが出来て、それが内蔵面に影響があったのかと思いますね。毛艶も落ちてしまいましたから。

その点、この間(前走の帝王賞)は自信はあったよ。カネヒキリ、ヴァーミリアン達、ミツオーと闘ってきた馬を負かすということは、状態が良かったという事だろうしね。


-:今年の夏は状態を維持していますか?

川:ええ、前走後も至って順調。この夏の中でも、ずっと厩舎にいましたが、毛艶が褪せた感じはないし、光沢を保っていますよ。

-:先生の厩舎は、中央競馬に先駆けて馬房に冷房を設けたんですよね。

川:そうですよ。「また変わったことやってるな」と言われましたよ。冷房が入っているから管理しやすいし、実際、人間も夏は暑いのわかりますよね。それを馬に置き換えたら…、という自然な発想ですよ。馬って、寒さには強いけれど、利口なもので、馬を引いている時でも、木陰に来たら、そこに止まっちゃいますから。

-:設定温度は何度にされてらっしゃるのでしょうか?

川:25℃。ただ、今年は35~36℃という例年以上に暑い日が続いたからね、28℃くらいにしたんだよね。でないと、外気と内気の差がありすぎると良くないからね。

-:フリオーソ自身はどのようなタイプでしょうか?そして、この馬の身体面で優れている点とはどういったところでしょうか?

川:性格は大人しい。本当に大人しい。昔、クリス(現在は千葉県富里の篠原ファーム内でクリス・モルステーブルを運営)が担当している頃、クリスがさすってやると、彼の腿の上に頭をやって寝ていましたからね。

そして、レースに行くと、忍耐強さというようなものをもっているんじゃないかな。ラップなんかをみると、スピードで押し切るんじゃなくて、相手がバテるところを同じラップを維持してくるからね。


-:フリオーソは、今後、中央に再挑戦するようなプランはありませんか?

川:考えてはいるけれど、無駄な抵抗はやめておこうかなと(笑)。無理に向こうに連れて行って、体調を崩すよりも、こっちでレースをつかってね。そもそも、色々考えたけれども、中央のコースの坂というのは、こちらの馬は経験出来ないですからね。経験の差がありますよ。

-:日本テレビ盃は負けられない一戦ですね。

川:ええ。もう(追い切りは)4本やったけれど、どれも単走でもいい内容だったし。斤量は58kgだし、ある程度のデキにはね。終い(3F)も36秒2~3で回ったんじゃないかな。

-:実戦以上の上がり時計ですね。では、前哨戦としては、高いレベルの仕上げですね。

川:そうだね。今回も58kgを背負うとはいえ、メンバーにも恵まれているし。



■■■ 3歳ダート王者・マグニフィカ ■■■

2歳時は4連勝を挙げて、南関東クラシックの主役に数えられたマグニフィカだが、暮れの全日本2歳優駿では11着に敗れ、アイドル的活躍をみせたラブミーチャンの影に隠れてしまう格好に。しかし、クラシック1冠目の羽田盃をパスするように、休養を挟むと、進化をみせるように復活。復帰戦の東京湾カップ(SⅡ)を制したのを皮切りに、東京ダービー3着、そして、中央勢を相手にJDDで逃げ切り勝ちを収めた。

-:マグニフィカは、この夏は社台ファームで過ごしたようですが、帰厩はされたのでしょうか。

川:帰ってきています。今のところ、(オーナーサイドから)南部杯という話もあるので、登録の申し込みだけは済ませました。

-:この馬はデビューから連勝したものの、暮れにはモロさもみせて、「早熟なのか?」という話もありましたが、結果的にはそうではなかったわけですね。

川:ミツオーなんかもそうだけれど、2歳から使い出して、休みを長くとった馬は、3歳のいいタイミングで良くなっているんだよね。

-:南関東の馬は東京ダービーを勝っても、JDDでは、敗れてしまうパターンはこれまでにありましたが、この馬は逆でした。[2]

川:東京ダービーは上がりが、テンのスピードで上がれれば良かったんだよ。行き過ぎたんだよね。JDDは、中央の一流馬が来て、それを負かすんだから大したものだよ。先週も妹(アイアムエレガント)が勝ったけれど、(血統に)Rahyが入っている仔はいいね。[3]

-:先生からご覧になったマグニフィカの長所はどんなところでしょうか。

川:種馬(ゼンノロブロイ)のように、お尻が角ばってるような馬は走るね。藤沢君(JRAの藤沢和雄調教師)が以前、「ペルーサを観に来てよ」って、牧場に観に行った時もあるけれど、向こうの方がゴツイよ、でも、やっぱりマグニフィカと似ているからね。

そして、藤沢君も以前、厩舎にマグニフィカを観に来たことがあって、「やっぱりロブロイの仔はこうゆう体型じゃないと走らないんだね」って、言ってたから。マグニフィカは、その(ペルーサの)ゴツさを引いた感じでソックリ。

私もこれまで色々な馬を観てきて、「(ゼンノ)ロブロイの仔がいいなぁ」と思ったのは、父がサンデー(サイレンス)で、(母系に)マイニングのミスプロの血統が入っているからね。

今は牧場に出ているけれど、ゼンノロブロイの仔の栗毛の2歳(オパキャマラッド)は、左脚が少し外向しているけれど、アレは走るよ。こっちに一旦入った時に、放馬して、馬に蹴られてね。夏はひと休みしたので、秋に戻そうかと思っている。ミスプロの18.75%のクロスを持っていて、馬の動きは抜群だね。


1:大井のダート2000mを2分3秒台で走破するという意
2:東京ダービー3着、JDDで優勝
3:9月12日の中山競馬の2歳新馬戦で半妹アイアムエレガントがデビュー勝ち


次のページへ→

1 | 2





【川島 正行】 Kawashima Masayuki

1947年千葉県出身。
騎手時代を経て、1990年に厩舎を開業。
初出走日 1990年7月25日
初勝利日 1990年7月26日
地方通算成績は1023勝(10/9/20現在)


■最近の主な重賞勝利
・10年帝王賞(フリオーソ号)
・10年ジャパンダートダービー、東京湾カップ(マグニフィカ号)


近年はコンスタントに年間100勝以上の勝ち鞍を挙げ、NARグランプリは常連。05年には地方馬初としては、初めて管理馬・アジュディミツオーをドバイワールドカップに送り出した。現在はフリオーソ、マグニフィカの他、昨年の南関東クラシックを湧かせたナイキハイグレード、ネフェルメモリーなどを要す。