関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

宮崎北斗騎手×高橋摩衣
高橋:北斗騎手、よろしくお願いします。

宮崎:よろしくお願いします。…何か、恥ずかしいっすね(笑)。

-:北斗さん、赤くなってますね、高橋さんと初対面でもないのに。

高橋:北斗騎手が騎手になる前の競馬学校時代から知っていますからね。最初の頃は、いつも頭がユラユラしているイメージがありました(笑)。

宮崎:そんな揺れていましたか?

高橋:中京競馬場のイベントで隣に並んだ時にずっと揺れていて(笑)。私が小声で「緊張していますか?」って聞いたら「ハイ、き、緊張してます…」って。

宮崎:そうでしたか(笑)?でも、高橋さんも揺れていましたよ(笑)。

高橋:そんな初々しい感じだった北斗騎手の印象も随分変わって、しっかりした感じになって。遂に今週G1に初めて出場するところまで来ましたけれども、ヴィクトリアマイルでセラフィックロンプに乗れると決まった経緯から教えていただけますか?

宮崎:福島牝馬ステークスの前に、武藤先生から「福島牝馬ステークスの結果次第では、次のG1もお前に乗せるぞ」と言ってもらったんです。あとは、僕がその時まだG1出場資格の31勝に到達していなかったので、それをクリアする事が条件だったんですね。福島牝馬は馬の力を全く発揮出来ないような馬場状態で、馬に可哀想な結果に終わってしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだったんですけど、オーナーから「よくやってくれた。次のG1も宮崎君で」という言葉をいただいて。

高橋:それは燃えますよね。じゃあ、あとは通算31勝をクリアすればいいという状態になったんですね。

宮崎:はい、これだけ周りの方に応援していただいているんで、絶対31勝をしてやろう!と思いました。

高橋:福島牝馬ステークスが終わった週とヴィクトリアマイル週までの間はたった2週間しかないし、不安もあったんじゃないですか?

宮崎:それはもちろんあります。「ちょっと難しいな」と思う事もありました。今までにもあまり経験した事がないようなプレッシャーですし、レースの時に手が震えて手綱を持てなくなる事もあるかもしれないな、というところまで考えましたよ。でも、あまりそういう事を考えてもしょうがない、自分がやる事をきちんとやれば大丈夫だろう、と。勝つために乗るというのは、どのレースでも同じじゃないですか。だから、こういうプレッシャーのかかる場面でいかに普段と同じように乗れるか、というところを意識しました。

高橋:プレッシャーを乗り越えて結果を残して、自信に繋がったんじゃないですか?

宮崎:はい。もちろんまだまだ足りない部分が多いですけど、このプレッシャーを受け止めて結果を出せたという事は自信になります。

高橋:素晴らしいですね。そういえば、今朝(5/13・水)にセラフィックロンプの調教に騎乗されましたけど、どうでしたか?

宮崎:良い感じでしたよ。好調をキープ出来ていると思います。

高橋:レースでも楽しみですね。

宮崎:はい。セラフィックロンプの良さを出せるようにしたいですね。トビの大きい馬ですし、広い東京コースも合うと思います。

高橋:北斗騎手とセラフィックロンプの相性も良いですよね。

宮崎:はい、僕、なぜか牝馬とは相性が良いんですけど、特にセラフィックロンプは初めて重賞を勝たせてくれた馬ですからね。でも、この前、厩舎に行って頭を撫でようとしたら噛まれそうになりましたけど(笑)。

高橋:G1に初出場するという事で楽しみにしている点はありますか?

宮崎:やっぱり大勢の観客の中で乗れるっていう点は楽しみですね。前に人から聞いたんですけど、全てのプロスポーツの中で、競馬ほど大勢のお客さんがライブ観戦できるスポーツはないらしいんですね。

高橋:あー、確かに。競馬場って何万人って入りますもんね。東京競馬場だったら10万人以上収容出来るし。

宮崎:観客が多いと、やっぱり最後の直線で追っているときも、歓声の大きさが違うなって分かるんですよ。G1になったらどんな感じなんだろうって、楽しみですね。あとは、TVで観てきた一線級の馬と戦えるのも楽しみですし、G1だとパドックの中に馬主さんが入ってきたり、そういう華やかな雰囲気も味わってみたいなって。

高橋:北斗騎手の家族も喜んでいるんじゃないですか?

宮崎:そうですね。当日は競馬場に見に来てくれるみたいです。セラフィックロンプと武藤厩舎を応援する横断幕を作ってくるって言ってましたよ。

高橋:あれ、北斗騎手のは?

宮崎:僕のはもうあるので。今回は馬と厩舎を応援するものを作るみたいです。

高橋:どんなデザインか楽しみですね。では最後にファンに向けてメッセージをお願いします。

宮崎:はい。騎手になったからには乗ってみたいと、ずっと思っていた舞台に出られるのは嬉しいですけど、やっぱり遊びに行くわけではないので、自分の仕事をしっかりしたいなと思います。生意気かもしれませんけど、出るからには勝ちたいと思いますし、そういう気持ちで全力でぶつかる事が自分にとっても馬にとっても糧になると思います。

高橋:有難うございます!最後に師匠の高市(圭二)先生からメッセージを預かってきたんですけど。

宮崎:え、先生からですか?何ておっしゃってました?

高橋:えーと、要約すると「負けたらボウズだぞ」って(笑)。

宮崎:(笑)うわ、最悪じゃないっすか。僕、それで何回ボウズになった事か(笑)。

高橋:(笑)あとで先生からのメッセージを全部教えます。じゃあヴィクトリアマイルのインタビューはこのへんで。有難うございました。

-:お二人とも有難うございました。高橋さん、北斗騎手と久しぶりに話した感じはどうでした?

高橋:最初は私もちょっと恥ずかしかったですね。でもすぐに慣れました。やっぱり北斗騎手がいる23期生は、私がターフトピックス美浦担当リポーターの仕事を始めた年にデビューしたので、同期というか、何か安心できる存在なんですよね。仕事を始めた頃は、ベテランのジョッキーや調教師さんとお話しするのに凄く緊張していたので、ホッと出来る彼らの存在に救われた感じなんですよ。だから23期生の事はずっと気にしていますよ。北斗騎手が愛知杯で初めて重賞を勝った時も坂田(裕美・トレセンTIME美浦担当リポーター)と二人で「よくやったね、凄いね」って言って。北斗騎手も大人になったなあって。

宮崎:高橋さんと坂田さんは「23期生の母」的な存在ですもんね。

高橋:そう、何か見守っちゃうような気持ちで。あの愛知杯の勝利騎手インタビューの受け答えもしっかりしていてビックリしましたよ。最初の頃は緊張しながら頭を揺らしていたのに(笑)。何か自分で変わったと思うところはありますか?意識的に変えて行こうと思ったところとか。

宮崎:僕、一年目は一生懸命やっているんだけど、必死になり過ぎていて周りが見えていないっていう感じだったんですね、余裕が無くて。それが2年目、3年目になってジョッキーとしての生活のリズムにも慣れて、良い意味で余裕を持てるようになったかもしれませんね。僕はあれこれと考え込んでしまうタイプなんですけど、きちんとやる事さえやっていれば、あんまり悩み過ぎる必要は無いのかなって思うようになったんですね。自分のやるべき事をやって、あとは結果がついて来てくれればいいな、と。

高橋:最初は必死な感じだったのが、段々余裕が出てきて。北斗騎手、お調子者かと思っていたけどしっかり自己分析が出来ているんですね(笑)。

宮崎:してますよー!知らなかったんですか(笑)。今、宮崎北斗株が急上昇したんじゃないですか(笑)?

高橋:(笑)こういう返答がお調子者っぽい感じですけど、そこがまた良いんでしょうね。そういう余裕が出てきたっていうのは、フリーになった事がきっかけだったりします?

宮崎:うーん、フリーになった事が転機かどうかは分からないですけど、いろんな部分で自覚するようにはなったかな…。

高橋:フリーになるには不安もあったと思いますけど。

宮崎:そうですね。フリーになる前にそういう不安というか、実際フリーになった時に起きると思われるいろいろな心配事とか確認したい事を書き出して、自問自答していったんですよ。僕は人からいろいろ言われるのを気にしちゃうタイプなので、そういうのに耐えられるかとか、フリーで3年間やってダメだったら自分でキッパリあきらめる覚悟が出来るのかとか。それで最終的にフリーになる決断を下したから、全部どんな事になろうとも受け入れようと思っています。

高橋:そうやって、自分の性格をしっかり自己分析出来ているのが凄いですよね。この間、北斗騎手について書かれた競馬雑誌のカラーページを読んだんですけど、私が一番印象に残ったのが、精神面の強さを鍛えるトレーニングをしているっていうところですね。そういう経験を積んだから、だんだん成長して強くなっていったのかなって想像していたんですけど。

宮崎:もちろんそういうのもあると思います。この仕事をやっていると、「このレースは落とせない」とか「難しい気性の馬に乗らなきゃいけない」とかいろいろなプレッシャーがあるじゃないですか。そういう時に自分を客観的に見て、その時に自分がどういう感情になって、その感情になるとレースにどういう影響があるのか、とか考えるんです。レースの時に湧き出てくる感情に流されていたら、自分の乗り方にムラが出てきてしまうじゃないですか。あと、レース前に人ともめてしまったり、自分が落ち込むような事を言われると、その後のレースでも引きずっている自分がいるなって気付いていたので、そういうのも改善していかなきゃいけない点だなって。その時その時の感情に流されて乗っていては絶対にいけないと思うんですね。だから、常に自分の感情をコントロール出来るようにする為にメンタルトレーニングをしています。

高橋:いろいろ考えていますね。私なんて失敗したら笑ってごまかしちゃいますよ(笑)。

宮崎:(笑)いや、僕もこうやって偉そうな事を言っていますけど、まだレースで同じような乗り方が出来る訳じゃありませんし、全然足りない部分ばかりですよ。レースの最中も、もっといろんな事に気付きながらレースが出来るんじゃないかなって。現時点だと、僕は限られた2、3個の事しか考えられていないんですけど、もっといろんな視点から考えて、その馬を走らせる為に一瞬一瞬で最善の判断が出来るようになっていかなきゃいけないと思います。

高橋:それだけ普段ストイックに物事を考えていて、逆にリラックスするためにやっている事はありますか?

宮崎:えー、今は部屋でピアノを弾く事にハマッてるんですけど。

高橋:ピアノ…(笑)。ちょっと面白い(笑)。まさかグランドピアノを?

宮崎:いや、普通の電子ピアノを。もし多少うるさくても、隣の部屋は草野太郎だから問題ないんです(笑)。

高橋:(笑)草野騎手だったら音楽聴きながら寝ちゃいそう。ピアノは昔からやっていたんですか?

宮崎:小学生の頃からやっていました。

高橋:ちなみに十八番はありますか?

宮崎:十八番というか、今は福山雅治の「スコール」をよく弾きます。

高橋:へー。私も実はピアノを習っていた事があるんです。ピアノ以外にも水泳、お絵描き教室、書道、ヒップホップとかいろいろやったんですけど、一番上手に出来なかったのがピアノなんです。ピアノは凄い集中力と根気が無いと出来ないんですよ。私に欠けてるものが集中力の持続なんで(笑)。ピアノを1時間連続で弾けますか?

宮崎:1時間と言わず、2時間でも3時間でも。一日中弾いちゃうくらいです。やり出したら止まらなくなっちゃいますね。

高橋:今度、演奏してくださいね。坂田と一緒に聞きに行きますよ。坂田、演奏聞いたら泣いちゃうかも(笑)。涙もろいから。

宮崎:そうなんですか、僕も涙もろいんですよ。この前も映画観て泣きましたよ。

高橋:え、何の映画ですか?

宮崎:「パコと魔法の絵本」…で。僕、映画がツボみたいで、観ると結構泣いちゃうんです。

高橋:そうなんですか。競馬絡みで泣いた事はありますか?

宮崎:騎手デビューする前の、赤白帽を被っている見習いの頃に1回ありますね。自分が調教で乗っていたサクセスストーリーっていう馬が予後不良になった時に一番泣きました。僕、馬乗りが下手だったんで、1日に1頭か2頭くらいしか乗せてもらえなかったんですよ。その数少ない騎乗馬の一頭で、ずっと携わって来た馬だったんで、もう悔しいというかやり切れない思いで…凄く泣きました。その経験をする前までは、上手く乗れないときに馬にあたったり文句を言ったりしてしまう事があったけど、サクセスストーリーの経験をしてからは、自分が携わる馬には悲しい思いをさせたくないなって思うようになって。

高橋:そうなんだ。

宮崎:確かにこの社会ではそういう事もよくありますから、携わった馬が予後不良になっても「しょうがないよ」っていう人もいるかもしれないけど、そうじゃなくて、しょうがないで済ませてはいけないと思って。競走馬は人間の為に一生懸命に走ってくれている大切な存在で、普段から敬意を持って接してあげなきゃいけないんだ、っていう事を改めて思いました。

高橋:いい話ですね。

-:そうですね。そろそろ時間もあれですから、最後に高市先生からのメッセージをお伝えして。

高橋:はい。えーと「北斗。負けたらボウズだぞ」。

宮崎:それはもういいです(笑)。

高橋:やっぱり(笑)。じゃあ真面目に「緊張しないで楽しんで来い。G1は装鞍所からパドックから、普通のレースとは緊張感が全然違う。パドックでも観客席を見回したりして、存分に雰囲気を味わって来い。追い切りに乗って、枠順が決まってっていうレースまでの流れも楽しんで欲しいな。G1だから相手も強いけど、臆することなく伸び伸びと乗って来いよ!G1だからといって変な意識はしないで、後悔しないように、結果は気にしないで思い切って行って来い!負けたらボウズにすればいいんだから(笑)」というメッセージをいただきました。

宮崎:あー、有り難いですね。

高橋:先生も楽しみにしてらっしゃるでしょうね。

宮崎:喜んでくれていると思います。本当、セラフィックロンプの良いところを出せるように思いっきり乗りたいと思います。

高橋:張ってください。応援しています。今日は有難うございました!

宮崎:有難うございました。




宮崎北斗

1989年埼玉県生まれ。
2007年に美浦・高市厩舎からデビュー。
JRA通算成績は32勝(5/13現在)
初騎乗:2007年3月 3日 1回 中京1日 2R オリジナルカラー(3着/16頭)
初勝利:2007年4月21日 1回 福島7日 3R オリジナルカラー


■主な重賞勝利
・08年愛知杯(セラフィックロンプ号)
デビュー年に「民放競馬記者クラブ賞」を受賞。2008年11月に高市厩舎を離れフリーとなる。 愛知杯でセラフィックロンプに騎乗し、重賞初騎乗初勝利の快挙を成し遂げた。G1出場資格 である通算31勝をクリアし、セラフィックロンプで第4回ヴィクトリアマイルに出場を予定。 人馬ともにG1初挑戦となる。





高橋摩衣

生年月日・1982年5月28日
星座・ふたご座 出身地・東京 血液型・O型
趣味・ダンス ぬいぐるみ集め 貯金
特技・ダンス 料理 書道(二段)
好きな馬券の種類・応援馬券(単勝+複勝)

出演番組
「Hometown 板橋」「四季食彩」(ジェイコム東京・テレビ) レギュラー
「オフ娘!」(ジェイコム千葉)レギュラー
「金曜かわら版」(千葉テレビ)レギュラー
「BOOMER Do!」(J SPORTS)レギュラー
「さんまのスーパーからくりTV」レギュラーアシスタント


2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。 明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。 2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。 いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。