関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

安田翔伍調教助手

安田翔伍調教助手(栗東・安田隆行厩舎)


今年の高松宮記念において、間違いなく主役を担うであろう安田隆行厩舎。昨年のスプリンターズSを制したカレンチャン、5連勝中のロードカナロア、短距離界でもトップクラスの実績を残すダッシャーゴーゴー、重賞ウィナー・トウカイミステリーの4頭を擁し、質量・共に上位独占も驚けない。今回は安田隆行調教師の次男であり、師の右腕とも言える存在の安田翔伍調教助手が各馬について答えてくれた。(馬名50音順に質問させていただきました)

上昇カーブを描くカレンチャン


-:まずはカレンチャンですが、去年、一気にGIを制しましたが、あそこまでのシンデレラストーリーもなかなかないことですよね。

翔:若いうちに将来性を感じる馬は沢山いると思いますが、そう思った通りにいく馬もいないもの……。凄いことですよね。

-:北海道シーズンで活躍した馬というのは、格下ではありませんが、夏シーズン限定というか、なかなか秋に活躍することが珍しいですよね。それがGIまで勝ってしまうという。しかも牝馬ですからね。

翔:カレンチャンに関しては、夏に実績があって、延長としての秋というわけでなく、秋を目標に夏から始動をしたので……。言い方が悪いですけれど、秋を目標に逆算してやってきて、夏は60~70%、スプリンターズSは100%といくように行った中での結果でしたからね。僕らの中では“夏に結果を出したから、スプリンターズSに駒を進めた”のではなく、“スプリンターズSを目指していて、夏も勝った”ような感じでした。勿論、そのレース、そのレース、100%で出せるように仕上げではいますけれど、「スプリンターズSの過程で、よく結果を出してくれたな」と。だから、例年の夏の実績馬とは、アプローチが違った部分はあるかもしれません。

-:夏のスプリント戦は、北海道と小倉にあるとは思いますが、北海道で使った理由はどういう理由があったのでしょうか?

翔:やっぱり、最大目標はスプリンターズだったので、暑さの中で輸送を繰り返すよりは、滞在競馬の北海道で競馬をする方がいいと思いました。(滞在で)手元の中に置く事で日々の変化も感じとれましたし、函館から札幌への輸送も4時間くらいで、そんなに負担は掛かりませんでした。斤量も(函館SS、キーンランドC)両方とも54キロで行けるというのも事前に調べていました。

-:トレセンでの調教施設でないと仕上げられない馬もいると思いますが、カレンチャンはそうではなかったんですね。

翔:でも、なんだかんだ苦労はしました。脚元に気を遣う面とかは解消されてきたりはしていたのですが、負担が軽いチップとかで乗っていたら、球節の繋ぎが柔らか過ぎて、剥けてしまって、馬も歩様に出すくらい、凄く痛がっていたので。キーンランドの時とかはウッドで乗ることもなく、最終追い切りも芝で追い切ったり。そういう馬が痛みを怖がるところ、精神的なケアをするのが大変でしたね。

-:それは皮膚が弱いということですか?

翔:弱いというか、繋ぎが本当に柔らかいんです。前が必要以上に擦れるような走り方をしてしまうというか。

-:それだけ関節が動くというと。

翔:だから、坂路でやるにこしたことはなかったのかと思います。



-:先週までは坂路の馬場状態があれだけ悪いのもなかなかないと思いますが、そう考えると、それも良い材料ではないですよね。

翔:そうですね。傷とは言えない程度のものだったらありましたね。ただ、当時はそれとは比べモノにならないほどでした。

-:そして、前走は人気を集めていましたが、4着でした。

翔:冬場は例年、この子はコンディションを下げてしまうんですよね。香港から帰ってきて、遠征のダメージが抜けなかった時のことを考えて、「香港から直行を視野に」という事も言っていたのですが、僕らでは体さえ余裕があれば、どこかで一回使いたいと思っていました。
というのも、間が開くと、この子は“イレ込み”と言えるほど、気持ちが入り過ぎてしまうんです。去年の伏見Sの時も、装鞍所で発汗が酷かったですからね。それに高松宮記念直行で本番にそれをやってしまうと、体力的にロスになってしまうので、どこかで一回は“ガス抜き”してやらないと行けなかったですから。
勿論、それが阪急杯でもよかったのですが、去年のスプリンターズSを制した馬として、恥ずかしい競馬は出来ないですし、少しでもチャンスのあるオーシャンSを選んだんです。輸送も問題はない馬ですから、それを使ったことで集中力は高まっていますし、ガス抜きというか、終わってみれば、使えたことが良い方に出たとは思いますね。


-:高松宮のステップとしたら言い方は悪いですが、前哨戦としてはいい予定を組めたと。

翔:一番人気に支持してもらったので、そういうのは良くないですし、勿論、勝つつもりで行きましたが、高松宮記念へ向けて、どこかで消化したいというのが、オーシャンSを使った目的でした。

-:着順やレース内容に関してはどうですか?

翔:準オープンの去年でも3着でしたし、同じアクションを起こしていたので、厳しいかとは思っていたんです。だから、僕らが思っている以上に見せ場はありましたし、休み明けという仕草もレース内容にみえましたからね。そういう意味では感触は掴めたレースでしたね。

-:ファンが気になっているのは、今回、新装の中京競馬場。カレンチャンは一度、昔の中京でも勝っていましたが、どれだけ左回りが巧いかということにもなると思います。

翔:その前回、中京を使ったのは番組上のもので、それほど中京を意識してつかったわけではありませんが、調教に乗る限りでは左回りは上手ですよ。

-:では、今の時計も掛かっていて、パワーとスタミナがいるような舞台についてはどうですか?

翔:力がいる馬場でも走っていますし、そういう経験をしてきた馬なので、大丈夫じゃないでしょうか。女の子ですけれど、スタミナもありますから。あの子にとってはいい舞台かと思います。



-:前走を一回使って、馬体重としては、どれくらいになりそうですか?

翔:今で490キロあるかないかに戻っているので、一緒ぐらいか、マイナスになることはないと思います。こっちが思っている以上に上積みもありますし、調整はしやすいですよ。

-:わかりました。カレンチャンを応援してくれているファンへ一言まとめてください。

翔:昨年の夏と秋のコンディションの差は、スプリンターズSで完璧と言えるくらいの違いというか、仕上がりをみせていたので、今回、状態的には「あそこまでどれだけ近づけるかな?」という部分はありますけれど、あの子は経験も違いますし、昨年よりも成長もしていると思いますので、同じようなパフォーマンスをみせられると思います。

-:ちなみに寒いよりは暖かい日であって欲しいということですか?

翔:イヤ、その日だけでは、どうこうは変わらないですし、今の状態でも十分満足出来る状態ですから。

-:真冬でなければ、もう大丈夫ということでしょうか?

翔:この冬はいつもより良かったです。一昨年なんかは明け3歳で掴みきれなくて、去年は半年の休み明けで、体を増やすのも苦労していたので。今回、そういう心配がなかったこともそうですし、例年の冬よりはいいコンディションで挑めると思います。そういう意味でも期待してください!

GIで完全燃焼したいダッシャーゴーゴー


-:ダッシャーゴーゴーはどうでしょうか?

翔:高松宮記念、セントウルSと、ちょっと可哀そうな競馬が続いているというか……、スプリンターズSや前走も消化不良な競馬ですからね。ちょっとこちらもストレスが溜まる結果が多いですよね。

-:この馬にとっては直線が長くなった中京はどう感じますか?

翔:僕は乗っていないので、競馬を観る限りの印象ですが、あまり良くないんじゃないのでしょうか(苦笑)。やっぱり、溜めて、ドカンと脚を爆発させるタイプ。脚をつかう部分が早目にきて、最後に甘くなってしまわないか、心配ですね。昨年の大井でも、枠も外で「ジョッキーは外を回ってしまった」と言っていましたが、最後は甘くなっていましたから。

-:特性が掴み辛いところがありますね。

翔:いい脚をつかえるのが一瞬で短いので……。馬場は合うとは思いますが、うまくリズムよく走れるかが課題ですね。



-:直線に入って、坂まで引っ張った手応えでいけるような。

翔:それが理想だとは思いますけれどね。それは通用しなさそうな2週間ですよね。坂を上がっても脚色が一緒になるなら、早目に仕掛けるでしょうし、騎手が替わっても、そうなるんじゃないかと思います。

-:結局、仕掛けが速くなっても、後ろもバテているような。

翔:如何に脚を溜めるか……。そのへんはジョッキーが考えて乗ってくれると思うので。

-:ただ、GIで成績が出ていない分、人気は落としそうですよね。

翔:そうですね(笑)。僕は(カレンチャンとロードカナロアの)2頭に乗せてもらっていますけれど、その立ち場でみれば、手強い相手ですし、本当に頼もしい存在であることには変わりないです。

-:何度かこの馬については取材もさせてもらって、以前は「体がシッカリしていなかった」という話もうかがいましたが、今になっての状態はどうでしょうか。

翔:調教の感触からは「完成の域に近づいた」と言っていますからね。それをどれだけ競馬に活かせるかですね。



-:初めて完全燃焼出来るGIであってほしいですね。

翔:とにかくリズムよくさせてあげたいですね。そうしたら、結果に繋がるんじゃないかと。

-:この馬もチャンスはあるわけですからね。

翔:勿論です。力はありますし、ジョッキーも信頼出来ますから。前回は色々試したかったらしいですよ。“出していって(ハミを)どれだけ噛むか?”とか。 ただ、それをやる前に不利を受けてしまって、競馬が出来なくなったというか……。そういう事があった場合に集中力が続かないタイプなので。それも欠点ではあるんですけれどね。それを出さずにスムーズなレースが出来た時に爆発力に繋がると思いますが。

-:となると、外枠でもいいのでしょうか?

翔:イヤ……、GIともなると外を回って勝てるのはディープインパクトくらいです(笑)。千二ともなれば、特にセコくいかないと。

トウカイミステリー、ロードカナロアについて
安田翔伍調教助手インタビュー後半は→

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カレンチャン、ダッシャーゴーゴー、トウカイミステリーについての
前回のインタビューはコチラ(安田景一朗調教助手インタビュー)→





【安田 翔伍】 Syougo Yasuda

昭和57年7月8日生まれ。高校時代にアイルランドに渡り、本場の馬乗りを経験。1年間の修行を経て帰国後はノーザンファームへ。その後、安田隆行厩舎に入り、フィフティワナー、カレンチャン、ロードカナロア等の活躍馬の調教を担当する。
父は安田隆行調教師、兄は同じ安田厩舎に所属する安田景一朗調教助手。兄の景一朗助手と共に厩舎の屋台骨として活躍している。