角居勝彦調教師インタビュー
2009/10/25(日)
角居勝彦調教師
角:そうですね。本当に冷静ですし、行儀も良いし、飼い葉も食べてくれるし、あんまりこちらに心配をかけさせないタイプで。
-:特に手がかからず。
角:はい。若い時は蹄球炎で何度かリタイアしてしまったんですけど、その時も心配は一瞬でしたから。すぐに次の日、もしくはその午後には心配の無い状態だったので、思い悩んで思い悩んでという日々が続いたという事もありませんでしたから。
-:そうなんですか。
角:本当に凱旋門賞の下見へ行っている時に「歩様が悪い」と連絡が来て。フランスから帰って来る頃にはほとんど問題はありませんでした。エリザベス女王杯を取りやめた日も、次の日にはほとんど治っている状態でしたからね。レースに出走出来なかったのは凄く残念でしたけど、大事に至らなくてよかったです。
-:本当に突発的にその時だけ出た、という事で、普段は心配するところが無いんですね。気性はどうなんでしょうか?
角:競馬の当週に入るとピリピリして来るので、やっぱりその辺は担当者も気を使うところでしょうね。
-:レース当週になってピリピリして来るっていうのは、やはりレースが近づいて来た事が分かるんでしょうか?
角:そうですね。頭の良い馬です。
-:では、特にこれといって注文をつける事って…。
角:特には無いですね。もう年齢的にも、ある程度変動が無くなる年なので、あとは今までやってきたトレーニングを全て競馬で出せるかどうか、という事だけですから。
-:牝馬の5歳でこれだけ一線で結果を残し続けるのは凄いですよね。何が良いんでしょうかね…。
角:何が良いんでしょうね(笑)。でも、それが分かったところで同じ馬は作れないですから。
-:なるほど。
角:ウオッカから生まれる子供でも違う特徴があるでしょうし、性格や脚のちょっとした構造の違いだったりで、調整方法も変わりますから。同じ馬は二度と作れないですよね。
-:ひとつの成功例が他の馬に全部当てはまるかというと、そういう訳でもなく。
角:はい。馬に乗っているスタッフの感覚値だけは上がっていくと思いますけど。ウオッカに携わった事によって、関わったスタッフの感覚値、経験が上がっていくという事ですね。
-:それは厩舎にとって大きな財産になりますね。
角:そうですね。厩舎の財産ですから、出来るだけたくさんのスタッフにウオッカの背中を覚えていってもらうことは、厩舎にとって大事なことだと思います。
-:ウオッカの担当助手さんは、今までに何名か変わっていらっしゃいますけど、そういう狙いもあったんですか。
角:そうですね。そのスタッフなりに壁にぶつかっていったり、タイトルホルダーの名前の重さだったり、それを維持する事の難しさだったり、馬が更に進化していく部分で、支えきれる者とそうでない者が出てきますから。ウオッカに携わる事によって、スタッフの仕事ぶりが改革される部分があると思います。
-:スタッフ教育の一環もあるんですね。
角:調教師が何か言ったって覚えられないですからね(笑)。やっぱり馬に教わるしかないですから。口でいろいろ言うよりも、一回その背中を教えれば「走る馬の背中ってこういう背中なんだ」っていうのが分かりますからね。
-:なるほど。最後にウオッカの今後についてお聞きしたいのですが、来年も現役を続行する予定でいらっしゃいますか?
角:この秋の結果次第ですね。
-:これまでも素晴らしい成績を残してきているウオッカですけれども、先生がこれから先、ウオッカに望む事は何ですか?
角:そうですね…、どこまで強くなっていくのか、という部分だけですね。
-:その過程を見るのが楽しみ、という感じですか?
角:うーん…、楽しみというか…「どこまで強くなるのか」という事は、ギリギリを求める事になりますからね。そういう意味では命を削る作業になるので、必ずしも楽しい仕事ではないですよね。もう十分、名牝として牧場に帰れるだけのタイトルは持っていると思うので、どこまで命を削る作業が必要なのか、という部分の怖さはありますね。
-:では、引き際のタイミングも重要になってきますね。
角:そういうのも大事にしたいと思うし、かと言って、どこまで強い馬なのかというのを見てみたいという思いもあって。ちょうど良いバランスが難しいですね。
-:分かりました。では天皇賞を含め、この秋のウオッカの活躍を期待しています。ありがとうございました。
角:ありがとうございました。
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■最近の主な重賞勝利
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05年、08年共にJRA賞(最多賞金獲得調教師)を受賞。2008年度代表馬のウオッカをはじめ、開業以来、数々のG1ウイナーを輩出している。09年天皇賞秋にウオッカが出走を予定しており、08年に続いての連覇を狙う。 |