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波多野敬二厩務員

波多野敬二厩務員(船橋・川島正行厩舎)


数多くの貴重な経験をさせてくれたフリオーソ

-:今後の種牡馬としての予定は詳しく何か聞いていますか?

波:いや、全然、分からないですね。

-:スタッドインするのはダーレーでしたよね。

波:ダーレーですね。1月7日に船橋で引退式があって、その後、いつ(馬運車に)積むかも全然、まだ聞いてないんだよね。昨日の新聞にはフリオーソの種付料が50万と出てましたね。

-:どういったのを付けるんですかね。お父さんはブライアンズタイムですが。

波:どうなんだろう?同じブライアンズタイムのタイムパラドックスもソコソコ人気あるんでしょ。

-:コツコツを産駒が走ったりしていますもんね。

波:タイムパラドックスも走っているから、フリオーソも期待したいねえ。この間もダーレーの種牡馬の獣医さんがちょうど馬を見に来て、「タイムパラドックスより馬が良いですよね」という話になって。

-:普通にみれば、フリオーソのほうが実績は上ですからね。

波:まあ、向こうは中央だから、名前は通っているんだろうけれど(笑)。結構、「付けたい」という依頼はあるらしいです。

-:50万って、結構、安い方ですよね。

波:いやいや、高いんじゃないですか。地方の馬だよ。ヴァーミリアンも最初、50万だったという話だから。地方の馬としたらね。それにアジュディミツオーで30万だから。地方にしたら高いんじゃないかと。ダーレーブランドということで、そんなに安くしないというか……。昨日の全日本2歳優駿もダーレーの馬(サマリーズ)ですからね。プリンセス・ハヤの馬。生産もダーレーだから。

-:外国居住馬主さんでG1(Jpn1)に勝ったのはおそらく初めてですよね。

波:初めてかもしれないですね。3着とかはあったかもしれないけれど。

-:語り尽くせないと思いますが、これまでのフリオーソとの思い出など、なにかエピソードを思い当たるものはありますか?

波:思い出というか、俺の先生みたいなものだから。厩務員としての腕をね……。
まだ、大したことはないんだけど、本当に色んな勉強をさせてくれた馬で。まあ、1頭、1頭、色んな勉強をさせてもらうんだけど、フリオーソの場合、最初は左前の屈腱炎の時、4年前の1月1日から預からせてもらって、それで2年間ずっと無事に来て、2年後に左前が落ち着いたなと思ったら、今度は右前が去年、出ちゃって。実際、両前屈腱炎ですよね。

そういう面もあるし、フリオーソがいたからこそ、中央の一流馬、カネヒキリ、ヴァーミリアン、エスポワールシチー、スマートファルコンとか、トランセンドらの一流馬と同じパドックを回れて、その馬の体、脚捌きがどうだとかを身近に感じられましたね。同じレースで何度か戦うたびに知り合いになった時に、「どういう調教をしているんですか?」とか、名馬を担当している厩務員さんとのちょっとした会話の中で、色んな勉強をさせてもらったというのは、全部、フリオーソがいたから、そんな話が出来るんであってね。お陰で色んな勉強をさせてもらえましたね。

ただ、乗馬になるんだったら寂しいかもしれないけど、種馬になれることが決まったので、寂しさというか、「次、頑張れよ」という感じです。馬っ気があるから、ガンガン牝馬に乗っかれば良いんじゃないかな。ハハハ(笑)。僕としては寂しいというより、うれしいよね。「良かったな」という感じで。まあ、最後まで気は抜けないけどね。




-:将来的に牧場まで見に行きますか?

波:行きます、もちろん。暇が出来たらね。元々、自分の地元が北海道ですし。

-:そうでしたね。そう言えば、最初に伺った時に「フリオーソを担当してから、仕事を一日も休んでいない」という話だったじゃないですか。

波:いまだに休んどらんね。

-:今後は休まないですか?

波:でも、フリオーソは脚元が悪いから、人に頼めないし、頼まれる方も多分、嫌だろうからね。脚元が何ともない馬が揃ったとしたら、レースの間が開いてれば、1日か2日ぐらい、「悪いけどカイバを頼むよ」というぐらいは頼んで休むかもしれないね。その間にフリオーソを見に行きたいなと思って。

-:休んだとしても、そういうことに費やすんですね。

波:ああ、休みをね。来年になって、種付けシーズンが終わったぐらいに、行ってみたいなと思う。シーズン中は牧場も忙しいと思うから。シーズンが終わってから、夏場でもちょっと時間が空いたら。顔を見て、鳴いてくれれば嬉しいよね。ハハハ。ココだと足音だけで鳴くから。さっきもココに来た時、鳴いたでしょ?

-:まさか、忘れられたりはしないでしょうね。

波:ハハハ(笑)。

■「名馬を担当している厩務員さんとの会話の中で、色んな勉強をさせてもらったというのは、全部、フリオーソがいたから、そんな話が出来るんであってね。お陰で色んな勉強をさせてもらえましたね」

-:最後で、ここまで相性の悪かった東京大賞典を初勝利となったら良いですけどね。

波:(スマート)ファルコンがいないから、チャンスはあると思う。俺、ファルコンには絶対、敵わないと思った。あのペースで逃げられて、あのまま逃げ切られるのはやっぱり……。

-:もう、時計がおかしいですからね。

波:異常な時計ですからね。でも、あのファルコンについていけるのは、本当にフリオーソしかいなかったからね。あの当時でNO.2なのかなと思った。平地ではファルコンがやっぱり強かったね。「坂が苦手だ」と言うから、中央は使わなかったみたい。ジャパンCダートとかフェブラリーSはファルコンは使わなかったけど、厩務員に聞いたら「坂がちょっと苦手です」と言っていたんだよね。

-:いよいよ、ラストランとなりますが、ここまで応援してくれたファンに向けてのコメントはありますか?

波:引退レースなんですけど、なるべくファンの夢を壊さないように良い状態で、本当に出来る限り最高の状態で出走させて、出来れば勝ちたいんだけどね。フリオーソも勝ったことがないレースなんだし、最後に……。今は脚元も本当に状態は良いんで、恥ずかしくない競馬をします。今のところは大丈夫です。

-:馬体重はどれくらいになりそうですか?

波:馬体重は510をちゃんと切るぐらいに持っていけるんで。今は520だから、あと10日あるんで、大丈夫ですよ。大井なら輸送で5キロ減るし、追い切りもあるからね。本当に今まで、アンチ、フリオーソファンっていないんだよね。みんな、フリオーソを応援してくれているんですよね。



-:そう言えば聞いたことがないですね。

波:「フリオーソはダメ」というのは、あんまり聞いたことがないんですよ、競馬場で。4場の主催者の人たちもフリオーソを応援してくれるんですよ。だから、本当にファンにも恵まれていますよ、今まで。実際、フリオーソ自体も年齢で2歳から8歳まで、まあ、7、8歳は数をあんまり走ってないんだけど、走ってきて、怪我を公表してからは、みんな心配してくれてるし。出るからにはファンの期待を裏切らないような競馬をさせてあげたいなと思います。自分の持っている力を全部、出して、出来るだけ良い状態で出走させて、花道を飾らせてあげたいなと本当に思います。まあ、引退した後も、みんな牧場に見に行ってくれたら、幸せですね。

-:あとは産駒を応援して。

波:そうですね。ぼくも産駒をやりたいですよね。チャンスがあれば、本当にやってみたいし、同じ毛色の産駒が出来ればね。みんな「種牡馬入りが決まっていたら、使うだけだろ」みたいな感じで思っている人も多いのかもしれないけど。

-:まあ、そこは勘ぐる人が多いと思うので、敢えて、そこは聞かせていただいたんですけれど、そういう気はサラサラないと。

波:全然!サラサラない。もう常にガチンコでね、ヘヘヘ。フリオーソの名に恥じないような競馬をしようと思ってます。

そもそも、フリオーソの競馬は正攻法だからね。ハナか、番手かみたいな競馬しかしないから。作戦を練ることもないし。出たなりで。(戸崎)圭太に任せるしかないですよ。この間のJCダートを見ても分かるように、多分、エスポが行くんだろうし、エスポの番手かな。枠順の関係もあるけどね。かしわ記念の時のようにフリオーソが内で、エスポが外の場合、枠順の関係があるとはいえ、あの時は圭太を怒ってしまったけれど……。
エスポって、意外と落ち着いて、途中で交わしちゃえば苦手なのは、俺は分かってるから、「敢えて、番手につけてくれ」と言ったんだけど。フリオーソがハナに行ったら、佐藤哲三騎手がかなり番手で息が入らないように突いて、突いて、ビュッと交わしちゃう展開だったからね。
アキュートなんかも今回のメンバーを見たら、3、4番手に付けてくるだろうし、スタート次弟で、本当は2、3番手が理想だと思うんだけどね。
それと、追い切りから帰ってきてからの歩様であるとか、洗い場でバンテ―ジを取った時の様子だとか、それまでは何とも言えないね。気を抜かないように。引退レースがあるとなると、出ない訳にはいかないからね。ハハハ(笑)。引退式まで用意してもらっているから、引退式までは最善の努力をして挑みます。


-:分かりました。いい結果がついてくることを祈っています。ありがとうございました。


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【波多野 敬二】 Keiji Hatano

1962年3月31日生まれ。川島正行厩舎所属。
北海道の手島健児厩舎、川崎の内田勝義厩舎での厩務員を歴任して、08年より川島厩舎に移籍。これまでに川島正行厩舎ではJRAの重賞ウィナーのディープサマーなどを担当してきた。現在はフリオーソと今秋のロジータ記念を制したエミーズパラダイスを担当。フリオーソは2009年の元旦から付きっ切りとなり、ひと時も離れることなく、名馬の走りを支えてきた。