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友道康夫調教師

友道康夫調教師


-:本日は有馬記念に出走するアンライバルドについて、お伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

友:はい、よろしくお願いします。

-:前走、菊花賞後はすぐに放牧に出されたようですが?

友:ええ。(翌週の)水曜日くらいには行って、戻ってきたのが(12月)4日ですね。

-:帰ってきたばかりですが、有馬記念へ向けて、状態面はどうでしょうか?

友:先週も違うジョッキー(本来、同馬はC.スミヨン騎手が騎乗予定だったため、スミヨン騎手が調教をつけた)に乗ってもらって(笑)。本当は今週から乗ってもらう予定だったんですけれども、スミヨンが「1回でも早く乗りたい」というので。でも「牧場から帰ってきたばかりを思えば、いい感じで仕上がっているよ」という話でした。

-:ところが…(笑)。鞍上は結局、M.デムーロ騎手になりますね?

友:デムーロには、来週も乗ってもらう予定です。スミヨンからデムーロに替わる事に関しては、どうこうはありませんが、乗ってもらって感触をどう感じてくれるかですよね。今日もココへ来て皐月賞のビデオを観て、実際に馬もみてましたけれど。「お父さんのネオユニヴァースと顔は似ていない」と言ってましたよ(笑)。でも「脚の形はよく似ている」と。脚の形まで覚えているのかなぁと思いました(笑)。

-:つなぎの柔らかいところですかね?

友:どうなんですかねぇ。僕もネオユニヴァースはあんまり見たことないんで、どうかわからないんですけれどもね。

-:アンライバルドは、中山コースで結果を残していますね。

友:一応、2戦2勝ですからね。どちらかと言えばちょっとムキになって行くタイプなので、小回りの競馬場の方が、すぐにコーナーが来て息を入れられるので、あの馬にとって走りやすいかもしれないですね。

-:やはり、気性面というのは、今でも課題でしょうか?

友:いや、秋2走はね…。調教でもそうだし、競馬場でも落ち着いていて、いい感じだった分、ゲートでガッと行っちゃって、逆に悪い方に出てしまったのかなぁと。春はどちらかといえば、出遅れ気味で後ろの方から行く感じだったんですけれど。秋は(ゲートの)出が良すぎて…。

-:その点、今の雰囲気はどうですか?



友:落ち着いてますよ。秋は競馬場の返し馬でも落ち着いてましたし。今回デムーロになって、先入観のない人が乗ってくれるから、新しい面が出てくれればと思います。

-:菊花賞は最初のコーナーで不利を受けてしまったようですが?

友:挟まれて躓いて、終わりましたよね。みんな勝った馬のあのポジションを取りに行ったので。

-:神戸新聞杯も?

友:あのレースも挟まれて、3コーナー位まで引っ掛かってましたからね…。

-:それでいて④着でしたよね。逆の意味では能力を示したかと。

友:神戸新聞杯終わった時は「これで④着なら、巻き返せる」と思いましたし、菊花賞はあの状態で3,000m走って、そこから伸びろと言ったらかわいそうですから(苦笑)。折り合いも欠いていましたし。

-:まだ、モロさが同居している感はありますか?

友:そうゆう面もあって「新しいジョッキー」にという。

-:繊細過ぎるイメージですか?

友:持っている爆発力とは、裏腹な。何事に置いても、反応した時のリアクションが大きいんですよね、あの馬は。驚いた時もウワっとしてしまうし、スイッチが入った時は凄く反応してしまうというか。まぁ、それだから走ってくるんだと思いますよ。スプリングSと皐月賞はそれが上手くいって、ゴール前で爆発できたと思うんですけれども。

-:そうゆう意味では、有馬記念もトリッキーで難しいコースですよね。

友:枠順はまだ出てないんで何とも言えませんが、できれば外枠が欲しいところです。負けている時は内枠なんですよね。デビュー2戦目の京都2歳S(③着)もそうだったし。逆に(勝ってる)皐月賞は8枠で、スプリングSも外枠で。横に馬がいるとガーっと行っちゃうんで。

-:横というのは、外ですか?

友:外ですね。神戸新聞杯も菊花賞も両方からバーンと挟まれちゃいましたからね。先週はそれをスミヨンに説明していたんですけれどもね(笑)。


~~~日本人騎手と外国人騎手の違い~~~


-:スミヨン騎手なんか、そうゆう事を気にしないところはあるんじゃないですか?

友:先週も、こっちから(調教を)観ていたら「かかっているのかな」というところはあったんですけれど「馬なり」っていう指示をして。でも結局、CWコースの一番時計出てますからね。本人は「かかってない」って言っていて…(笑)。

-:たぶん、外国人騎手は日本人騎手の「かかる」「かからない」とは感覚が違って、能力を損失するくらいじゃない程のかかり方なら「行きっぷりがいい」っていう、ジャッジなんでしょうね。

友:そう。外国人はガチっと抑えていますからね。それが日本人にはできないんです。日本の騎手って、いい意味では「馬の気持ちを大切に」って、リズムよく走らせて。外国人の場合は、制御して「ココはダメだ。ココは我慢させる」という感じの乗り方。調教でもそうですね。

-:ルメールなんかもカネヒキリの(昨年の)JCダートで、ハミをしっかりかけてるから、最後まで我慢できたと思うんですよね。

友:そこらへんが、日本人との違いですよね。

-:まず、かかる馬でもスタートしてから出していきますよね。

友:そうですね。日本の騎手って、ゲートをポンって出ているのに、知らないうちに後ろの方に引っ張ってて、次に見たら最後方。なんてケースが多いんですよね。そうゆう面も、馬主さんなんかは納得行かないところじゃないんですか。

-:馬と人とのコンタクトの違いですよね?

友:結局「日本人は馬に負けている」というか、なんとか馬をなだめて走ってもらおうという感じですけれど、外国人は馬を制御化に入れて、ダメな時はダメだし。調教から違いますから。

-:向こうなんか、調教の時計がないじゃないですか?

友:先週は「ノーアクションで回ってきて」って言ったら、それが一番時計(笑)。

-:具合はイイって事ですね?

友:そこまで走れるって事は具合はいいですよ(笑)。4日に帰ってきて、まだ10日ちょっとでしょ?牧場から戻って1週間しか経ってなくて「ジョッキーに乗せるような状態じゃない」って、言ったんだけれど「いい感じだ」って(笑)。



-:有馬記念は、リーチザクラウン・ブエナビスタ・スリーロールスなど「伝説の新馬戦」の4頭が集う一戦としても注目を集めていますが、その点に関しては?

友:書いてもらうことは嬉しいですけれど、気にしていません。そんな凄いメンバーになる事を知ったのは1週間くらい前で「ウチのは走るから、ココを使おう」って感じではなかったですから。でも、そのメンバーを見てもソコソコ自信もあったし、無様な競馬にはならないと思っていましたよ。

-:その時点での調教量はどうだったんでしょうか?

友:ウチの厩舎は新馬からガリガリ行くタイプではなく「これくらいなら勝てるかな?」という程度で、出しているので。アンライバルドの時も「この程度で大丈夫だろう」なんて思っていたら、もっと強いのが出てくるなんて話聞いて「アレ?」って感じでしたよ(笑)。

-:じゃあ、新馬を勝ってからさらに手応えを感じられたと?

友:そうですね。勝って「やっぱり走るな」と思いましたし、京都2歳Sを使う前に、あとの2頭(リーチザクラウン・ブエナビスタ)が強い勝ち方をして、また騒がれていましたから。京都2歳は③着でしたけれど…。

-:新馬戦って鍛えてもどうしようもない、本当のセンスとか素質が出るじゃないですか?

友:そう。厩舎によって考え方は違うと思うけれど、ウチの場合は競馬の練習というか、デビューが目標じゃないので。競馬の学習をしてくれればいいし、そんなにゲート練習もしてないし。新馬戦というのは、本当に能力のある馬が勝つんですよ。

-:ちょっと話題はずれますが、記憶に残る有馬記念というのはありますか?

友:有馬記念、使ったことないからなぁ。正直、有馬記念の日って、中京・阪神も混むから、サッサと帰って、あんまり観てないんですよ。「早く帰ろう」みたいな(笑)。

-:じゃあ、今回は泊まるんですね?

友:泊まります。生で観たのは、マツクニさん(松田国英師)のところにいた時、フサイチエアデールを使った時、観ましたよ。それ位で、有馬記念はリアルタイムで観ることがあまりないですね(笑)。

-:ちなみに、来年の正月開催で出走させる期待の馬などはいますか?

友:金杯はないです。未勝利くらいしかいないですけれど、アドマイヤジャガーっていうのは、千八に使う予定ですね。札幌を一回使った馬ですけれど。

-:2歳のアドマイヤリイチはどうなったんですか?

友:ゲート試験は受かったんですけれど、骨膜炎が出まして。もう乗り始めてはいます。サクラルーセントは正月は福寿草特別あたりには使いたい馬ですね。サクラエルドールはラジオNIKKI杯2歳Sに向かいます。センスが良くて、頭のいいタイプですよ。岩田も気に入ってるのか火・水・木・金(曜日)と、付きっきりで乗っています。

-:岩田騎手もアンライバルドがデムーロ騎手でどうなるのか、気にしているんじゃないでしょうか?

友:来年は、どこから使うかわかりませんけれど「使う時は岩田で」と思ってますし、一回、別のジョッキーが乗ることでどんな競馬をするかですね。今回はゲートが良ければ、前目で運ぶのもアリだと思うんですよね。不利を受けづらいポジションを取ってくれればいいですけれど。

-:そこで周りがアンライバルドの弱点を知っていて、接近されるとイヤですよね。

友:日本の騎手っていうのは、自分のポジションを取るのに「おっつけて引っ掛かったらどうしよう」っていうのがあると思うんですよね。抑える自信がないというか。その点、外国人っていうのは自分でポジション取りにいって、そこで競馬をさせますから。

-:凱旋門賞のシーザスターズみたいな感じで、スタートはちゃんと出たけれど、入りたいところにムリクリねじ込んでゆくような。

友:そうですね。外国の競馬はこじ開けていきますもんね。アタマひとつでもスペースがあったら、グイっと。

-:最後にアンライバルドの有馬記念での見どころをお願いします。

友:やっぱり、ずっと言ってますけれど、スムーズな競馬ですよね。神戸新聞杯・菊花賞もスムーズだったら、結果はついてきたと思いますし。ここ2戦はリズムを崩していますから、いいポジションで競馬をさせてあげたいですよね。

-:しかし、そうゆう気性でありながら、中山への輸送を克服して結果を残すのは不思議ですよね?確か、先生としては相性悪い競馬場だったんでしたよね?

友:そう(笑)。スプリングSが、開業以来の中山競馬場の初勝利ですから(笑)。障害行ったら、落馬はするし、サクラメガワンダーの皐月賞もダメでしたし。ワンモアチャッターも返し馬で、放馬して…。

-:ジョッキーも落馬して骨折しちゃいましたよね?

友:そうですね。2002年に開業して、勝つのに7年かかりましたから。

-:アンライバルドにすれば秋3度目の正直ですね。デムーロ騎手に指示はされるんでしょうか?

友:あぁ、クセとかは言うつもりですけれど、位置取りとかは何も言わないです。

-:今年は展開がわかりづらいですよね?スローもあれば、ハイペースもありそうですし。

友:でも、リーチザクラウンが行くでしょう。テイエムプリキュアも行くでしょう。やっぱり、速い流れにはなるんじゃないですか?となると、ブエナビスタが差してくるって話ですけれど(笑)。

-:いやいや、皐月賞のアンライバルドも観たことのないような、凄い差し脚でしたよ。

友:そうでした。今回もそうなるといいですね。

-:そうゆうシーンになる事を楽しみにしています。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

友:ありがとうございました。




友道 康夫

1963年兵庫県出身。
2001年に調教師免許を取得。
2002年に厩舎開業。
JRA通算成績は158勝(09/12/17現在)
2002年11月30日3回中京1日目1Rランドチャレンジ
2002年12月1日3回中京2日目6Rインターマーベラス


■最近の主な重賞勝利
・09年皐月賞、スプリングS (共にアンライバルド号)
・09年府中牝馬S (ムードインディゴ号)
・08年天皇賞(春)、阪神大賞典 (共にアドマイヤジュピタ号)


獣医を目指した事がきっかけで、競馬界に関わることになり、浅見国一厩舎、松田国英厩舎での厩務員として下積みを経て、調教師免許を取得。02年の初勝利以降、着実に結果を残し、近年では、サクラメガワンダー、アドマイヤジュピタなどの実力馬を輩出。更に今年のクラシック戦線での主役を担ったアンライバルドを管理するなど、進境著しい調教師として知られている。