第五章

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-:タイセイレジェンドといえば矢作厩舎の管理馬でした。関東のオーナーでありながら、矢作先生と関わりが深いと思いますが、そのお付き合いの経緯を教えていただけますでしょうか。

田:矢作先生も人の紹介でしたね。矢作先生が開業して、まだ2年ぐらいだったかという時に「大井の調教師の息子さんで、先生がいるよ」ということで、紹介してもらいました。私も昔から競馬をやっていたので、大井の矢作先生(矢作芳人調教師の父である矢作和人)の名前は耳にしていました。当時、安藤厩舎にタイセイアトムという馬がいたんですよね。安藤先生が定年で、そのまま次の厩舎に引き継ぐという話だったのですが、その馬をどうするかということで、知らないところ行くよりは、ということで矢作先生に「どうですか?」と。それからの付き合いですよね。当時のタイセイアトムは1000万下にいたのが、矢作先生のところでポンポンと重賞まで勝って。そこからの付き合いですかね。一番相性も良いですし、昨年もリーディングを獲られたようにあれだけの成績も挙げてきているので、信頼していますね。他の厩舎さんにも預けているので、言いづらい話ではありますが、私のところで一番良いと思った馬を預けるようにしています。

-:偶然の付き合いから、トップステーブルに預けられることになったというわけですね。

田:そうですね。決して、当初は良い馬ばかりいたわけではなかったと思います。ここまで実績を重ねられたのも、矢作先生の手腕だと思いますので。


「(矢作厩舎は) 馬主サイドから見て、こういう風にして欲しいというのを、言わなくても事前に考えてやってくれているというのはありますよ。矢作先生のところであそこまでやってダメならしょうがない、と諦めがつくといいますか、信頼して預けることができますよね」


-:値段よりも質を重視するオーナーサイドからしても、矢作先生の管理馬のレース選択は馬主サイドにとってもありがたいのではないでしょうか。

田:その辺はよく考えてくれていますよね。馬主サイドから見て、こういう風にして欲しいというのを、言わなくても事前に考えてやってくれているというのはありますよ。そういう意味では、これで走らなきゃしょうがないだろう、と納得できるところもありますから。やっぱり競馬ですから、ケガをする場合もありますし、普段の仕事ぶりを拝見しても、矢作先生のところであそこまでやってダメならしょうがない、と諦めがつくといいますか、信頼して預けることができますよね。

-:馬主としての楽しみは先ほど伺ったと思いますが、今後ファンの中でも馬主を目指したいという方もいると思うので、ファンに向けてのメッセージをいただけますか?

田:当歳にしろ1歳にしろ、自分で馬を買ってデビューするまで1年も2年もかかりますよね。そんな歳月を経て、自分の馬がデビューして走る感動は経験しなければ分からないですからね。そういう思いをしたい人がいたら、体験してみてほしいです。やっぱり楽しいと思いますよ。

田中成奉オーナー

矢作芳人調教師(左)と口取りに臨む田中オーナー


-:タイセイレジェンドでJBCスプリントなどのタイトルも手にされ、上り調子の馬主ライフだと思いますが、一方で失敗談はありますか?

田:正直、嫌な思いが多いですよ、ハハハ。期待している馬がケガして、結局、復帰を出来ないこともありますし、屈腱炎になることもありますから。それに負けることの方が多い世界ですからね。そういうことを考えると、嫌なこと、落ち込んでいることが多い中で勝った時の喜びも、また何とも言えないですし、それが楽しみでずっとやっています。

-:7月も中京で故障がありましたよね。しかし、負けることが多い世界の中でも、勝った時の喜びはひとしおですね。

田:そうですね。本当に上手く行かないことが多いですよ。それで馬主を辞めてしまう人もいることは事実です。お金も損をしますし、頭にもくることだってあります……。しかし、だからこその面白さはありますね。そこで何とか成績も上がるように研究をしながら、馬選びからレースの選定でも馬を勉強しながら、馬主をやっていくのも、結果だけを求めるのではなくて、そういう楽しみもありますし、奥が深いですよね。まだまだ飽きるということはないと思いますよね。普通は何事も飽きるじゃないですか?それがやればやるほど、楽しさも難しさもドンドン奥が深くなっていくのが競馬じゃないかと思いますね。

-:ちなみに、愛馬が負けた時のお怒りというのは、どのような感じで……?

田:いや~、けっこう表に出ますね。そんな長い時間は怒りませんが、2~3分ぐらいは怒っていますね、ハハハ。

-:じゃあ、競馬場でお見掛けしても、迂闊にお声掛けはしないようにします。

田:いやいや、それは大丈夫ですよ(笑)。

田中成奉オーナー

-:競馬場では笑顔のオーナーが見られるといいですが……(笑)。最後に、改めてお伺いすると、「安くても良い馬を狙っている」オーナーの馬は、例えば新馬戦で血統的な印象で印が集まらなくても、大化けする可能性を秘めていると期待できそうですね。

田:そうですね。今年は成績が悪いので、あまり大きいことは言えません。ことごとく人気を裏切ってしまっているので。ただ、競馬にはそういう時期も必ずあるものなので、今年の2歳のデビューもそうですが、何とか盛り返して行きたいと思っています。成績が悪いのに、あまり大きなことを言っちゃうと、ハハハ。

-:下半期の巻き返しを含め、今後の目標をいただけますでしょうか。

田:重賞ももちろんですし、G1は交流では獲っていますが、中央のG1はまだ獲っていないので、まずは何とか獲れる馬を欲しいなと思っています。先々はクラシックなどの夢もありますが、まずは中央のG1を獲りたいし、重賞も勝ちたいですね。数を買っているので、その内そういう馬が出てくると信じて、楽しみにしていますけどね。

-:我々も「タイセイ」の冠名から中央のG1馬が出ることを期待しています。

田:期待して下さい。

-:本日はありがとうございました。

田:こちらこそ。ありがとうございました。