皆さんこんにちはライター大和屋です。今回は、先日(7月10日、11日)行われたセレクトセールについて書こうと思います。なんといっても競馬ラボのツイッターで馬が買えなかったことで記事にされてしまうこの僕です。せっかく記事になったことですし、何故買えなかったのかを振り返って分析してみたいと思います。

セレクトセール、毎年値段が高騰し続け会場での毎年の馬主間のあいさつが「今年も高いですねえ」という定型文になりつつある感じがします。毎年毎年こんな言葉が飛び交っていましたが、今年は特に高かったような気がします。体感で言えば去年まで2000万円で落とせていた牝馬が3000万円払っても落とせない。4000万円の真ん中あたりでようやく落札というのが個人的な感覚でした。

本当に高い。そして良い馬は皆見ています。結果には結びつかなかったのですが、僕がセリ当日までにしてきた努力の一部を皆さんにお伝えしようと思います。まず最初にカタログを見ながら候補の馬を絞り込みます。僕の欲しい馬は、まずはジャスタウェイ産駒。とはいえ1歳の馬はもう持っていますのでそれほどでもありません。買えるようなら買おう的なニュアンスです。

それよりも1歳馬でいえば、ジャスタウェイを付けることのできる牝馬を購入しようとしておりました。何故かといえば僕のお友達のおなじみ丸山担オーナーと、今年はいっちょ半持ちでもしてみましょうか?という話になりました。なので1歳馬でいうとお買い得な牝馬を狙おうということでフィルタリングを行います。欲しい馬の目星をつけたら今度はカタログとにらめっこです。自分なりに欲しい馬の目星をつけたら、ここでまず第一の助っ人の登場です。二十年来の友人であり二十年来の競馬仲間でもある映画監督の渡辺謙作さんです。

大和屋暁

謙作さんは映画監督で『プープーの物語』で監督デビュー、『ラブドガン』、新垣結衣主演の『フレフレ少女』、最近では『エミアビのはじまりとはじまり』という映画を撮りました。有名どころでいうと『船を編む』の脚本を担当し日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞しております。さらに言えば鈴木清順監督の最後の弟子で、アングラ映画業界で生きた鈴木清順監督の弟子である父親の知り合いを通して友達になりました。競馬好きという共通の趣味を通してよく競馬場に一緒に通った競馬仲間といえるでしょう。

謙作さんは理論派で、特に血統面に強くニックスやインブリードや父親の傾向やコースやダート替わりを切り口に万馬券をよくゲットしておりました。もともと僕らは穴党でしたので、謙作さんのコメントでいくつも馬券を取らせていただきましたし、外れたりもしました。要するにアングラ仲間の競馬好き、家も近所だったので酒を飲む口実もこみこみで血統面でのアドバイスをもらおうということになりました。

血統を見る上でまず最初に見なければならないところは、言うまでもなくサンデーサイレンスがどこにいるかというところ。日本国内でいうとほぼほぼサンデーがどこかに入っているのは仕方なし。きょうびアウトブリードを狙おうなんて思ったら海外からの持ち込み馬を探すしかほぼ方法はないのではなかろうか。という状況ですのでサンデーが3×4になるようなところを狙っていくしかないのかなあと、僕の知識でもここまではわかります。

しかし謙作さんはレイズアネイティヴやらリファールやなんたらがどうのと僕の知識では遠く及ばない部分の話を聞かせてくれましたが、もちろん僕にはわかりません。ですが、その理論でいくと一見3×3で近すぎると思われるブラックタイドの牝馬や、海外血統の肌をつけたジャスタウェイ産駒がものすごく血統が良いということなどがわかるらしく、いろいろとおすすめの馬を教えてくれました。僕のほしい馬と謙作さんのセレクション。結果僕の馬にはならなかったので詳しくは言えないのですが、バラエティにとんだ10頭くらいをピックアップしてくださいました。牝馬中心、ジャスタウェイ産駒もまだ実際に競馬場で走っているわけではないし、リストの中には日高の馬なんかもいたのできっと買えるに違いない。これで万全と、その時点では思っておりました。

大和屋暁

さらに良い馬を買うための努力は欠かせません。次のステップとしては丸山担オーナーと共に北海道へと渡り一泊二日で牧場巡りをし、馬の下見を行います。同行してくださったのはあのファインモーションの伏木田牧場の伏木田修(ふしきだしゅう)さんです。担さんの繁殖のお馬さんたちが伏木田さんのところにいるのが縁だそうです。そして牧場では担さんのお友達のKさんにお世話になりました。馬の下見、僕は一度しか見ませんでしたが担さんは1か月前にすでに1度目の下見を済ませてあり、1か月でどう成長したかなどを見極めて馬を選んでいるそうです。僕自身には馬を見る能力はありませんので、謙作さんがおすすめしてくれた馬の中で二人で持てればいいという牝馬を中心に担さんの話を聞きます。そんなやりとりの中でいくつかこれはあまりという馬を弾いてさらに厳選し候補を絞り込みました。

さてこれで万全、かと思いきや、更に努力は惜しみません。セリ前日に北海道へ移動し、さらに1歳馬の下見を行います。といってもこれは牧場のお友達に挨拶がてら今年のおすすめを教えてもらうためのもので、馬の良し悪しは僕には分かりません。

まだ終わりません。札幌に移動した後、いつもお世話になっているNさんと合流し狙っている馬のリストを渡します。Nさんは血統でのチェックを行うだけでなく、次の日の朝、会場のデポジットで足や喉の具合を確認してくれた上に実際に馬体を見て歩き方などを見てくださいます。こうして様々なフィルタリングを行い厳選に厳選を重ねていった結果……


行く馬がいなくなりました。


冗談のような話なのですが、デポジットの結果が想像以上に厳しく、どういうわけか僕が欲しいと思っていた馬たちに限って喉や足にリスクを抱えているとのこと。必ず発症するわけではないけどリスクがあることを覚悟したうえで手をあげるなら止めないけどとのこと。そう聞かされては血統的にどんなに欲しくてもなかなか手が出ませんよね。というわけで1歳馬はすでにレイズアンドコールの仔がいるのも手伝って見送ることになりました。

次の日は当歳セッション。血統的な面とジャスタウェイとの配合の相性、そして当日の馬の動きや馬体などをチェックした結果、GOサインが出たのは実質一頭になってしまいました。終盤近くのキンシャサの牝馬、セリ落とせなければそれで今年の収穫はなくなります。2日目の後半は有力馬主の人たちがすでに予定数の馬を購入して帰ってくれる可能性があり、思いのほか安く買える場合がある反面、買えなかった馬主さんがなんとしても買わねばと白熱する場合もあります。とはいえ牝馬、なんとかなるだろう、なんとかなってくれと願いつつセリに挑みます。

するとまあ積極的な掛け声が飛び交いました。あっというまに2000万円、3000万円と値段があがっていき、僕の思う適正価格を超えてゆきました。結果的には外国の有力馬主さんがセリ落としたようです。仕方ないのでもう1頭と思って急きょ参加した馬は、某大物馬主さんとの競り合いになり、あえなく撃沈とあいなりました。

とまあそんなこんなで3年ぶりに何も買えないセレクトセールとなりました。ここで言えることは全体的にとても高く、良い馬は必ず他にも良いと思っている馬主さんがいるということです。今後、僕にセレクトセールで馬が落とせる日が来るのかとても不安です。

とまあ結果は伴いませんでしたが、旅行自体はとても楽しく仲の良い皆さんと一緒に多いに笑い飲んで、たくさん美味しいものも食べました。そんなこんなでセレクトセール遠征記はこれにて終了でございます。

大和屋暁

とまあそんな感じで残念なこともあれば良いこともあるという好例かもしれません。セレクトセールが終わった週の金曜日、プロソフトクリーマーの森川さん所有のイイナヅケ(牝4、笠松・後藤正厩舎)がとうとう笠松で3勝目をあげることができました。前走が抜群の手応えの中、圧勝まであるかと思わせておいて3コーナーで手応えが怪しくなって3着でしたので、今回は大丈夫かと思っていましたが、先手を主張しマイペースの逃げをうち、詰め寄る相手をゴール前では突き放すという危なげのない強い競馬を見せてくれ、3勝目をマークしてくれました。

後藤正義調教師曰く、入厩してきたころは足元がしっかりしてこないことや、減った馬体重が戻ってこないなど、思うように使うことができずに時間がかかりましたが、最近では足元も良化し順調に使えるようになったことも良かったとのこと。なにはともあれ無事3勝をあげてくださった後藤調教師、向山牧騎手、そして厩務員の方や厩舎スタッフの皆さま、そして後藤調教師の奥様に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

イイナヅケは今後ノーザンファーム天栄へと移動し、馬体をチェックした後に調整を経て再度中央へと入厩する予定です。中央未勝利で地方転厩、そして再転厩。再び中央に戻ってどんなレースをしてくれるのか、今からとても楽しみです。頑張ってほしい。

とまあそんなこんなでいろいろと忙しかった数か月間でしたが、これにて一息つけそうな雰囲気です。担さんのG1初挑戦やシンガポール遠征など、盛りだくさんの内容でした。今後はマダムジェニファーやイイナヅケと、自分の馬の話題で盛り上がれるといいなと思っていたりしますが、それはもう少し先のことかもしれませんね。

大和屋暁

大和屋暁

あ、それから蛇足ではありますが、ノーザンホースパークの駐車場に多数設置しているジョッキー人形、僕の勝負服の人形が設置されていました。遊びに行くことのあるかた、ぜひ探してみてくださいませ。担さんや保坂さんの勝負服もありますよ。皆一様に喜んでおりました。