馬も屋根もしぶとい!ゴールドシップ、天皇賞を制す!!

ゴールドシップ

15年5月3日(日)3回京都4日目11R 第151回天皇賞(春)(G1)(芝外3200m)

ゴールドシップ
(牡6、栗東・須貝厩舎)
父:ステイゴールド
母:ポイントフラッグ
母父:メジロマックイーン

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3歳時は、3冠のうちダービーだけ5着。皐月賞菊花賞。そして有馬記念を勝ち、宝塚記念は2連覇中のゴールドシップ。G1勝利が5勝は伊達ではない。
2コーナー過ぎからのロングスパートで馬を叱咤激励しながら、横山典Jとのコンビでもぎとった天皇賞(春)だった。空を仰いで両腕で舟形をイメージするパフォーマンス。馬に自分に酔い知れる、至福の時間だっただろう。
キズナは伸びを欠いた、と言うよりも一度もギアが入らずじまいでのゴール。何事もなければいいのだが…。


8時半前には競馬場に着いた。しかしもうすでに開門していて、場内は人、人、人で溢れている。ベンチ、椅子は全て座れる余地はない。売店で飲み物を買うのにも列をなす。ゴールデンウィークと好メンバーでの天皇賞(春)。盛り上がって当然だろう。
パドックもいつも以上に見にくい。ひとつ前のレースの仕事を終えてからパドックへと向かう。3階のテラスから見るが、人の後ろだけに見えにくい。
いつもの2階へと下りる。人の間から垣間見る出走馬達。ラストインパクトがギリギリだ。もう少しで入れ込むと言った処か。馬体は黒光りしていい。ゴールドシップが一番後ろを歩いているが、自分から前へ歩いていて、なお大人しい。こんな時はいい。キズナ、あんまり締まった感じはしない。威圧感も前ほどには感じない。返し馬を見たくて早めに切り上げたつもりだが、すでにゴールドシップは1コーナーの先にいた。すでにもう1頭もポケットに。どうやらホッコーブレーヴの様だ。
そして馬場入場。スタンドは見渡すかぎり人で埋め尽くされている。一番最後に、フェイムゲームがいい感じでゴール板をキャンターで駆け抜けていった。

3角手前からのスタート。奇数枠はゴールドシップだけとなったゲート入り。ところがなかなか寄りつかない。何度か試みてもダメ。結局は目隠しをしてゲートに入ったのだが、馬自身はそんなにうるさくしてなかった。
しかし、やっぱりゲートの出は遅かった。押して押してブービーに付けた。その少し前にキズナ。前はどうなったと見ると、クリールカイザーが前にと躍り出て、坂を下って行く。アドマイヤデウス、ラストインパクトにデニムアンドルビーまでが後方グループにいるのに驚く。
1周目のスタンド前、ゴールドシップが少し前に出てキズナが最後方となる。アドマイヤデウスが前々と出て、6番手まで上げて1コーナーを廻る。そのアドマイヤデウスが2コーナーでやや外へ膨れ気味となったのを後でPVで見る。すでにゴールドシップが順位を上げ出す。キズナもその動きについて行く感じで少し前に出る。しかしゴールドシップの動きはもっと積極的だった。ラスト1200を通過する時に左ステッキを1発、ついでラスト1000のあたりで、さらに1発入れて促して前へ前と進軍する。

3コーナーを廻る時には、前にクリールカイザーとスズカデヴィアスの2頭しかいなかった。内でジッと貯めるカレンミロティク
坂を下ってラスト600のハロン棒を過ぎる時に、内のカレンミロティックが満を持して勝負に出た。前の2頭の間から先頭に踊り出て直線へ入ってくる。ゴールドシップがそれを追ってくる。キズナも外々を上がって来ている。前との差を一気に詰めてきた。カレンミロティックが絶妙かと思えた仕掛けだが、ゴールドシップが詰めて来ている。
横一線となって追う後続組。キズナの伸びが思う様でない。むしろその内からフェイムゲームの伸びがいい。前はカレンミロティックを交したゴールドシップがゴールへと駆けこまんとしている。そこへ強襲するフェイムゲーム。内からラストインパクトがいい伸び脚だが、前までには無理な勢いだ。しかし、キズナは伸びない…。

アドマイヤデウスは、失速気味だった。サウンズオブアースは、一度も見せ場すらなかった。デニムアンドルビーもしかり。ちと足さばきが硬かった感じを受けた。魅せたのは蛯名J騎乗のカレンミロティックであり、怒涛の寄せで迫ったフェイムゲームだった。
しかし勝ったのは、ロングスパートをかけて、なおかつ最後にもうひと伸びさせた横山典Jに導かれたゴールドシップ。
数字的に見れば、切れ味勝負となった今年の天皇賞(春)。ラスト800が11.7~11.8~11.5で、最後の1ハロンが12.0。フェイムゲームは最後のカーブに入る時でも、まだ後ろの馬群の中。そこから一気に来た脚は凄まじいと言える切れ味。
しかし何と言ってもゴールドシップであろう。2コーナー過ぎから動いて行った、鞍上の手腕に尽きる。癖馬を乗りこなすベテランの真骨頂である。
長いインタビューを終えてウィナーズサークルへやってくる処で彼を待ち構える。『見たか~!、ヒラバヤシ!』と響く大きな声で叫ぶ横山典騎手に、ガッチリと握手をしておきました。

それにしてもキズナである。今年の2戦よりも伸びていない。ギアを上げきっていない感じだ。あそこまで来ていたら伸びてくるはずのキズナが、伸びるどころか、後ろの馬に交わされている。大きな骨折を経験した馬だけに、精神的なダメージでもあるのだろうか…。
素人の私がイロイロ言っても仕方ない。残念ながら昨年以上のパフォーマンスを期待していたのだが、これも競馬であろう。

火曜の朝一番に馬房に、田重田さんとキズナの処に駆けつけた。幸い何事もなく、ホッとしていつもどおりの仕事に入れた…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。