モーリス、モーリス!やっぱり今年も日本で一番強い馬だ!!

モーリス

16年10/30(日)4回東京9日目11R 第154回天皇賞(秋)(G1)(芝2000m)

  • モーリス
  • (牡5、美浦・堀厩舎)
  • 父:スクリーンヒーロー
  • 母:メジロフランシス
  • 母父:カーネギー

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土曜の前売りではエイシンヒカリが1番人気だったが、明けて日曜の早い段階からモーリスの支持が高まった。ファンの目は鋭い。
昨年の年度代表馬モーリスが、無類の強さでマイル戦では敵なしだった昨年から今年は札幌記念、そしてこの天皇賞(秋)へと矛先を替えてきた。鞍上にR・ムーアJを迎えた戦いだったが、早めの好位の5番手で脚を貯め、直線でも先に前に出ていきリアルスティールの追撃を退けての2000芝での戴冠。
1,2着は海外G1を勝ってきた馬だが、もう1頭の海外勝利馬、エイシンヒカリは先頭に立つ自分の競馬が出来ていながら12着敗退と、明暗を分けた…。

パドックでひととおり馬の状態を見た。
その時点では、エイシンヒカリも静かに歩けていた。モーリスのやや気負いが目立つツル首の歩き方。リアルスティールは案外にいいじゃないかと思えた。何かあまり良くないんじゃないかと思っていた自分がいた。ステファノスがなかなかいい。ルージュバックが廻りを観たりする顔が幼いなと思った。
早めにいつもの席に引き上げて馬場入りを見る。昨年はエイシンヒカリが内馬場から出てくる時に大変パニックに近い状態だった。今年は無事に出てくれよと待つ。しかし、出て来たエイシンヒカリはまったく昨年のシーンを再現する様な興奮ぶり。キャンターに移って1コーナーのポケットへと向かう時は落ち着いた走りに見えたが、すでにここまでに相当消耗していたのを後日、NHKの天皇賞を録画していた映像で見て知った。パドックでジョッキーを乗せないほどに入れ込み、検量室前の枠場で騎乗したが、その後もトンネルを歩いて行く姿はまともに走れるのかと思えるほどだった。。

アドマイヤデウスが、マイナス14キロとかでも馬体はシャープなラインで活気もあり悪くないな~とか、ラブリーデイも元気いっぱいで維持しているなとか、ロゴタイプのあの真っ黒な馬体は脅威を感じるなとか、返し馬を観ながら思っていた。モーリスの躍動する様なキャンターで右へと走っていく姿をみて、実に羨ましかった。
スタンドの右手の入口あたりのテラスに少し隙があるぐらいで後は見渡すかぎり人、人、人で埋まっている。大きく声を出してジョッキーの応援をする若者。馬の紹介がされる度に拍手が沸き上がる。今や競馬はライブに行っている感覚なのであろう。ストレスを発散する場なのであろう。大勢のいろいろなファンに見つめられて、スターターが壇上に昇った。。

まずはゲート、スンナリと出てくれないと最内枠からだけに後手になる、と心配していたエイシンヒカリ。前に出て最初のカーブを先頭で入った。ロゴタイプが来たが、交わす様な行きっぷりではないので安心。その外にヤマカツエースが来て、モーリスがすぐ後にいた。この後でラブリーデイがすぐエイシンヒカリの外へ来たが、この馬がここにいると言うことは、ペースがかなり遅いのだと解釈していた。
場内放送が『1000m、60秒8!』と言う。かなり遅めの流れである。最後方にヒストリカル、その前がステファノス、縦一列だが、そんなに長いスペースではない。その後も淡々と各馬の動きもないまま、最終コーナーヘと向かう。この流れなら、エイシンヒカリが直線で一気に離してしまうのではないかと、素人考えを持ってもいた。

モーリスは絶好の5、6番手の位置でレースを進める。4コーナーでは、前を行くヤマカツエースの外へと出しきて、カーブを廻ってすぐにR・ムーアJは馬をうながして、さらに前へと馬を押す。そこにはエイシンヒカリの外をまだ追っていないラブリーデイいた。実際にラスト400mでは持ったままのラブリーデイ、ステッキが先に入ったエイシンヒカリ、その後で通過しているモーリス。だがこの先、ラスト50mも行かぬうちに、モーリスはラブリーデイの前に出ている。そして鞍上の意図ではないだろうが、馬はやや外へと出ていく、馬場のいい処を選んで行った訳ではないと思えるが。右ステッキをゆっくりと入れるR・ムーアJ。
ラスト200m通過で、ロゴタイプがラブリーデイを抜いて2番手に上がった。内からアンビシャスも来ているが、リアルスティールが徐々に上がって来ていた。少しずつ外から内へと切れ込んできたモーリス。リアルスティールがロゴタイプの外から2番手にあがる。さらに大外からステファノスが脚を伸ばしてきていた。。

ラスト100mを完全に先頭で通過のモーリス、だいぶ内目へと入ってきたが、後ろとの間隔があって何事もなくゴールへと向かう。リアルスティールがその内へと入って行くが、前との脚色もそう変わらない勢いだ。ステファノス、アンビシャスがロゴタイプを外と内から抜いた時がゴールだった。ルージュバックは直線入口ではリアルスティールとステファノスの内にいたが、出してくれずと言うよりも、内から外へと出してくる勢いの脚がなかったと言うのが本当だろうと思える。今日に限って言えば、パンチ不足だったのかと。。

R・ムーアJは凱旋門賞を勝った時もそうだったが、あまり喜びを外へ出すジョッキーではない様だ。ウイニングランで帰ってきた時でもスタンドへ軽く挨拶程度の仕草をする程度。おごらない勝者、敗者をいたわる気持ちの強い人の様だ。。

ざわめき、ごった返す検量室前。馬から降りてきた武豊Jと会話するのも仕事。馬場入りまで付き合った坂口助手にも訊いたが、毎度の事だがトンネルが良くないそうだ。昨年の毎日王冠は結果が出たけれども、本質は地下馬道が嫌いなんだろう。
ジョッキーは道中の行きっぷりが『もしかして最高に折り合っているのか、反対のスカスカなのかだったが、スカスカの方だった…』と。実際にあのペースで行って、粘るどころか誰よりも先にステッキが入ってしまった。海外でG1を同じく勝ったライバルが凱旋した日本で結果を出しているのに、エイシンヒカリは自分との戦いで負けている感じだった。。

次のレースのパドックから馬が出てきてトンネルを歩きだしたあたりで、ラフな格好で急いで小走りにR・ムーアJが過ぎて行った。《そうか~、今からオーストラリアへ向かうんだ。メルボルンCへ騎乗するために…》。
世界を股にかけるスーパー・ジョッキー、《勝利に酔う暇もなく次へと動いていく。凄い!》と、後ろ姿を見送った…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。