イスラボニータ、最後にグイッと伸びて久々の美酒だ! 【平林雅芳の目】

イスラボニータ

17年4/23(日)3回京都2日目11R 第48回マイラーズC(G2)(芝外1600m)

  • イスラボニータ
  • (牡6、美浦・栗田厩舎)
  • 父:フジキセキ
  • 母:イスラコジーン
  • 母父:Cozzene

マイラーズCの結果・払戻金はコチラ⇒

心地いい風に淀の芝がなびいていた。いつもどおりの芝丈なんだろうが、風に流されるそれはけっこう長く感じたものであった。
しかし終わってみれば1.32.2と、この10年で2番目タイのタイムでのつば競りあいと、速い決着だった。ヤングマンパワーが粘るところを、エアスピネルが交わしにかかる。その2頭の間に入ってきたイスラボニータ。最後は半馬身の差をつけてのゴールで、何と2年7ケ月ぶりの勝利を、ルメールJの技ありの騎乗でもぎとった…。

パドックを見ていて、イスラボニータはやけに落ち着いていて、まるで走る気があるのかと思える程だ。逆に、ダッシングブレイズは少しうるさいぐらいの周回。もう少し落ち着かないものか思えた。エアスピネルは、2人引きで悪くない周回。馬の造りは、ブラックスピネルが実にいいかなと思えた。そうそう、フィエロはこれでいいのかな~と思えるほど、体のラインが気に喰わない。もっと良く見せる馬だがな~と思って見ていた。
馬場入りして、すぐ左へと返し馬をしていくのを見ていて、ブラックスピネルの歩様がやけに硬く見えて仕方なかった。こんな歩様の馬だったかな~と思いだしてみるが…。エアスピネルは、いつも以上にいい感じで走っているなと思っていると、少し行って頭を上げて、結局はいつもと変わらないままか~と、ちとガッカリもした。

展開が判らない。ブラックスピネルが今回は行かないとの記事を読んだが、本当かなと思っていた。開幕週で前が有利、内が有利は誰にも判るだけに、あえて外を廻る流れに持ち込むのか疑問でもあった。
エアスピネルが、いいスタート。外のクルーガーも、イスラボニータも悪くない。内のサンライズメジャーが、すっと先手を取っていく。ヤングマンパワーが2番手でクルーガー、エアスピネルに内からフィエロが前掛かりになって加わる。その後ろにブラックスピネル。外にイスラボニータがいたのだが、内へすっと切り替えていった。

3F手前では、ブラックスピネルを内から抜き去り、さらに前へと進めて行くイスラボニータ。前半の3Fが35.3と、マイペースで先頭を行くサンライズメジャー。2番手のヤングマンパワーに、2馬身の差をつけて坂へと入って行く。ここらでイスラボニータがエアスピネルの内を半馬身前まで出て行く。その流れに思わず《嫌な動きをするな~》と、ルメールJの行動が気になった。

ラスト800の標識にかかるあたりで、3番手のフィエロの動きがちょっと尋常でないと感じる。掛かっているのか、福永Jの姿勢がかなり突っ立って、ブレーキをかけている様に感じる。イスラボニータは、その内をすいすいといい感じで行っている。イスラボニータの後ろの外めにいたエアスピネルが、少し早めに上がって行った。前ではサンライズメジャーの外へ、ヤングマンパワーが並び加減でカーブへと入って行く。やっぱりフィエロの動きが変である。何か操縦困難な状況の様に思える。直後の内ラチ沿いにイスラボニータがいるが、何事もない様に気にしてもいない。

直線へと入ってきた。サンライズメジャーがもう一度エンジン全開でまた半馬身、前へと出て行く。ヤングマンパワーが負けじと追う。エアスピネルが外から脚を伸ばしてきた。フィエロが少し内を開けた。そこへ入るイスラボニータ。一気に前との差がなくなってきた。

フィエロが外へと流れる。後ろのクルーガーの脚も無くなった時で、少し立ち上がる感じだ。その内にいたイスラボニータが、先頭を行く前の2頭の間が開かないと思ったのか、フィエロの方へと寄って進路を確保しに行く。ちょうど、エアスピネルが外から伸び出して来ている時で、フィエロが狭くなって、少し手綱を引く福永J。前ではヤングマンパワーが先頭に立った。エアスピネルがその外へ並んで蓋をしたいのだが、イスラボニータの勢いがいい。

ヤングマンパワー、エアスピネルの間に完全に入ったイスラボニータ。3頭が馬体を接しての追い合いになる。その後ろで外をブラックスピネルが伸びてきてはいるが、前を抜く脚色にはない。ヤングマンパワーを置いてエアスピネルとイスラボニータの戦いとなるが、イスラボニータの勢いが上廻りだす。最後は半馬身の差で抜けていた。

エアスピネルは良く走ってはいると思うが、イスラボニータの機動力の方が上だった。今回のポイントは、向こう正面で内へと切り替えたルメールJの騎乗ぶりが、最大の勝因だろう。あそこで内を選択したのが、最後に生きてきた。パドックではやる気があるのか?と思えるほどに気合が乗っていないのに、実戦ではまったく違う。このスイッチの切り替えが素晴らしい。古馬はこうでなくてはの見本か。
人気はエアスピネルに譲ったのは、昨年の阪神カップ以来だからかと思える。音無師が検量室から出てきての帰り際に、『この芝生が合わないな~』のひと言を置いて去って行った。

火曜朝、坂路監視小屋でその事をさらに聞いてみた。『前の日からそう思っていたのだけれど、芝が長いわ。うちの馬は脚を上げない走法だから、芝が長いと良くないみたいだ…』であった。だから返し馬で硬さがある様な走りになっていたのかと納得。ブラックスピネルは、この後は放牧へ出して安田記念へと駒を進めるそうだ。
スタンドでは、笹田師とも話が出来た。『今回はパドックでも落ち着いていたね。覆面も外したしね。この後は厩舎で調整して、予定どおりに安田記念へ向かいます』との事。 春の最終目標である安田記念。イスラボニータを始め、まだまだ強豪が出てくるだろう。だが戦いはまだこれから、始まったばかりである。

マドンナの《ラ・イスラ・ボニータ》のリズムがずーっと頭の中で流れている、そんな火曜の朝でした…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。