未完の大器サトノアラジンに待望のG1タイトル 川田「気持ちよく乗れました」

サトノアラジン

●6月4日(日) 3回東京2日目11R 安田記念(G1)(芝1600m)

モーリス、ミッキーアイルが引退し、確たる主役が不在といわれたマイル路線。1番人気はマイラーズCで復活星を挙げたイスラボニータだったが、勝ったのは昨年の4着馬サトノアラジン(牡6、栗東・池江寿厩舎)。前走の京王杯SCで不完全燃焼に終わった鬱憤を見事に晴らして見せた。

レースを引っ張ったのは昨年の覇者ロゴタイプ。各馬、先行する事に意識がある中、サトノアラジンはゆっくりと後方の位置取りをチョイスして後方4~5番手。前半3F33.9秒の速い流れをマイペースで進む。「何よりも自分のリズムで走らせる事に重点を置いていました」と意識して騎乗したという川田将雅騎手は前が速い事も体感しつつスムーズな競馬に徹する。

サトノアラジン

今年はこの流れが味方に付く。直線は大外に持ち出し、川田将雅騎手の右ステッキが唸りをあげるとグングン加速。「いつでも抜け出せるポジションを確認していました。4コーナーの手応えが抜群に良く、直線を向いてからは鋭い末脚を見せてくれました。1頭1頭抜き去りながらも、前にロゴタイプがいる事はわかっていましたし、なかなか抜かせてくれませんでしたが、ゴール板では捕らえてくれると信じていました」

その川田騎手の想いに応えるかのようにサトノアラジンは更に加速。連覇が目前となったロゴタイプに迫り、内外離れて馬体が重なったところがゴール。「差したかどうかはわからなかったのですが、すぐにビジョンを振り返ったら、(サトノ)アラジンが映っていたので、あぁ捕らえてくれたんだなと思いました」と待ちに待ったG1タイトルを手に入れた事の喜びを噛み締めながら話す。

「やっと勝てました。この馬には昨年から乗せてもらっているのですが、前哨戦は勝てても、G1では思うようにいきませんでした。今日は馬場も枠も良かったです。ゴールまでしっかり伸びて、気持ちよく乗れました」と静かに語る。「2歳の頃から期待されていた馬ですし、6歳になってG1でも一生懸命に走ってくれるアラジンにとっていい結果になってよかったです」と、これまでの惜敗を払拭する結果に喜びを語る。

昨年は初コンビとなった京王杯SCを勝ちながら本番で4着。秋はスワンSを快勝しながらマイルCS5着。今年は前哨戦の京王杯SCでも道悪に泣いて9着と力を出し切れなかっただけに、ここにかける意気込みは並々ならぬものがあったはずだ。

サトノアラジン

管理する池江泰寿調教師も「良馬場、外枠を引いた時点で運が向いたと思ったが、やっと勝てた。ゴールの瞬間は、はっきりとわからなかったのですが、周りからお祝いの言葉を頂いたので、勝ったんだなと分かりました」とゴールの瞬間の気持ちを語ると、「この馬のポテンシャルは非常に感じていて、これでG1勝てなかったら調教師失格とさえ思っていたので、喜びは一潮でした」と、この1勝が非常に大きなものであることを強調。まさに陣営悲願のG1タイトルとなった。

1400m戦での成績が良い事に対し、「3歳の頃はクラシックでうまく行かず、距離に関してはジョッキーやスタッフと話しながら試行錯誤してきました。マイルも十分走れると思っていただけに、調教師として仕事が出来たなと思っています」と最大限能力を発揮できるのはマイルだと信じていた自分に全うした結果が実を結び、喜びと自信に溢れた様子。

「デビューの頃から多くファンに支持して頂いて、G1で恩返し出来たかなと思います。秋にはマイルCSという素晴らしいレースが日本にはありますが、今後に関しては様子を見て、オーナーと話して決めます。選択肢を広げて考えたいと思います」と海外レースへの再戦も選択肢のひとつと話す。

圧倒的な破壊力を持つ反面、その脚質から展開や馬場に泣く脆さも顔を出す。「能力はわかっていたけど、展開に左右されてしまうので、次もいい形で、天気と枠に期待したいですね」と川田騎手は気を引き締めながら話すが、G1ウイナーとなってこれからは受けて立つポジション。遅咲きの新マイル王に更なる進化を期待したい。

サトノアラジン
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