『ひょうたんから駒』 誰もが予想しなかった展開でケイティブレイブが初戴冠

●6月28日(水) 大井競馬場 第40回帝王賞(Jpn1)(ダ2000m)

ドバイ帰りのアウォーディー、アポロケンタッキー、ゴールドドリームに対して、チャンピオンズCの覇者サウンドトゥルーら国内居残り組がどう迎え撃つか。上半期のダート路線を締めくくる帝王賞は、中央勢で唯一G1タイトルがなかったケイティブレイブ(牡4、栗東・目野厩舎)が、鞍上自身も驚く直線一気の追い込みで大きな1勝を手に入れた。

レースは逃げることも予想されたケイティブレイブが躓いて後方からの競馬になる波乱のスタート。「コンディションが良くて、逃げる馬が見当たらなかったので、自分のリズムで行くだけ行って、あとどれだけ粘れるかなと思っていたんですけど、スタートで大きく躓きまして…。『終わった』と思いました」と苦笑いを見せた福永祐一騎手だったが、そこからは人馬ともに落ち着いてマイペースに専念。

川崎記念を逃げ切ったオールブラッシュが先手を取り、クリソライト、アウォーディーと続く展開でケイティブレイブを除く6頭は中団より前のポジション。馬群は縦長となったが、4コーナー手前ではケイティブレイブもするするとポジションを上げ、前を射程圏に捕らえて直線の攻防へ。いち早くクリソライトとアウォーディーが抜け出しを図るが、勢いが付いたケイティブレイブの末脚に抵抗する力は残っておらず、まさかの展開で真っ先にゴールへ飛び込んだ。

「馬はいつもと違う形になったのですが、非常に落ち着いて走っていましたので、ああなったら、途中で押し上げていくよりも、自分のリズムを守って最後2ハロン、直線だけ伸ばそうと。思ったより手応えが良かったので、4コーナーを回る時には行けるんじゃないかなと思いました。初めて乗せてもらった時から高いポテンシャルは感じていたのですが、自分の形じゃないとモロいところもあったので、今日も逃げの形には固執しようと思っていたのですけど…。『ひょうたんから駒』って感じで、目の覚めるような末脚を直線で使ってくれました。これからどういった形の競馬になっても安定して、より力を発揮出来るようになったと思います」とレースを振り返った福永騎手。

レース後のインタビューでは「初めて小学生の時に勝ったCDが『淋しい熱帯魚』だったので、今日(相田翔子さんが)来られるということで『勝てるといいな』思っていました」というエピソードも披露。そして「僕自身も、皆さんも思いもしないような走りで新しい一面を引き出せたと思いますし、目野先生が来年定年ということで、それまでに何とかG1をこの馬でという強かったので、今日達成出来て本当に良かったです」と、まさに会心の勝利で上半期を締めくくった。

大きなタイトルを手にし、今後は世代交代の旗手としての期待も高まる。『ひょうたんから駒』という言葉も飛び出したが、元々の先行力に加え、実績馬を後ろから捕らえた勝利は非常に価値が高い。また、4歳と年齢も若く、ほぼ休みなく走って安定した競馬を続けるタフさも魅力。師の定年まで、まだまだタイトルを増やしてくれそうだ。