ブリンカーを着けると掛からなくなる?その真相は!?…こちら検量室前派出所(仮)

フェイムゲーム

ステイヤーズSで2着だったフェイムゲーム

秋の東京開催が終わり、冬の中山開催がスタート。東京競馬場へうどんを食べに行っていたと言っても過言ではなかったパトロール隊員は、毎週末悲しみに暮れつつ取材を敢行している。「中山にもうどん屋はあるでしょ」というご意見を頂きそうだが、東京競馬場のうどんのおいしさは専門店級だと、ここに改めて書いておきたい。

さて、そんな中山開催初日。メインレースは平地日本最長の3600mで争われるステイヤーズS(G2)。レース後、普段のように検量室前をウロウロとパトロールしていると、こんな声が聞こえてきた。

「ところどころで掛かってしまいました。こんなに掛かるなら、ブリンカーを着けたほうが良かったかもしれません。調教では掛からなかったのでブリンカーは必要ないと思いましたが……」。

2着のフェイムゲームに騎乗した、オセアニアの名手・H.ボウマン騎手のコメントだ。ブリンカーを着けると掛からなかった??ブリンカーを着けるとハミを取るようになるとはよく聞くが……。

疑問に思った隊員は、実際にフェイムゲームに乗ったことのあるジョッキーに"証言"を集めてみることにした。まず突撃したのは、昨年の宝塚記念でコンビを組んだ柴山雄一騎手

隊員:どうなんでしょう、フェイムゲームはブリンカー着けたほうが掛からないのでしょうか?

柴山騎手:僕が乗った宝塚記念の時の話ですが、あの時はブリンカーではなくチークピーシーズを着けて臨んだんです。その時は逆に全然進んでいきませんでした。促しながらの追走でしたね。普段の調教から難しい馬で、気まぐれな性格なんです。ハマると天皇賞・春(2着)のようなスゴい走りを見せるんですが……。ブリンカーは馬にハミを取らせるために着ける場合が多いですからね。逆のパターンはあまり聞かないですねぇ。

なるほど。やはり実際この馬に騎乗経験がある方に話を聞くと説得力が違う。そこに、騎乗を終えて調整ルームに戻ろうとしていた田中勝春騎手がやってきた。勝春騎手は新馬戦と2戦目でこの馬に騎乗経験がある。

田中勝騎手:乗り方の問題もあるかもしれないね。その騎手によって感じ方は違うから。ただフェイムゲームは普段から気が散漫な馬で、走りに集中しないし、調教もレースも、ハミを取ったり取らなかったりする馬なんだ。難しい馬だからね、ブリンカーが必要だと感じたのかもしれない。

ふむふむ。フェイムゲームがいかに集中力に欠けるかはよく分かった。が、肝心の『ブリンカー事件』は解決していない。さて、どうしたものかと思案していたところに、救いの神が現れた。内田博幸騎手だ。何万頭にも騎乗してきた経験と、それに裏付けられた技術を若手に分かりやすい説明で伝えてくれる紳士である。

隊員:実際ブリンカーを着けると掛からなくなる馬はいるのでしょうか?

内田博騎手:うーん、ブリンカーを着けたほうが掛からないという馬はいたなぁ。着けたほうがハミが抜けて乗りやすくなる馬は確かにいたよ。

いた。まるで絶滅危惧種を発見したような気持ちになる隊員。ブリンカーを着けると掛からなくなる馬は実在したのだ。気分は藤●弘探検隊だ。そして、内田騎手はこう続けた。

内田博騎手:一言にブリンカーと言っても色々あるからね。ブリンカーを着けると掛かるけど、チークピーシーズなら着けても掛からないという馬もいる。浅めのブリンカーじゃないとダメという馬もいる。そこはやっぱり生き物だから、難しいんだよね。それぞれ性格も違うし、色々なタイプがいるから。

内田騎手は普段から「馬は生き物。だからこそ難しい」とよく口にする。長年の経験を持つジョッキーが言うのだから間違いない。普段から『競馬に常識はない』という意識で競馬に取り組もうと改めて思った次第だ。

最後に、内田騎手はこんなことを言っていた。「怖がりの馬にブリンカーを着けたらいけなかったりするからね」。怖がりの馬は周りを確認するが、それができなくなる分余計に周りに反応してしまうそうだ。よく考えれば確かにそうである。これは馬券にも生かせそう、そう思いながら隊員は、夕暮れの中山競馬場を後にし、近所のうどん屋に駆け込んだのであった。