瞬発力と持続力

大前提として、馬が前進するためには後躯で強く地面を蹴り、前に進むためのエネルギーを発生させる必要があるが、その際に発生する『運動エネルギー』を如何にロス無く推進力に変換するかが重要になってくる。

「エネルギーを推進力へ変換する」と一口に言っても、馬体の構造で大きくその内容は異なり、主に2種類に分類される。発生したエネルギーを一気に、瞬間的に推進力に変換する「瞬発力タイプ」と、瞬間的な速度は前者にこそ敵わないが、より長時間に渡って高速域を維持することの出来る「持続力タイプ」の2種だ。

この2種を判別する際、主に見るべきポイントは「飛節」「尻の角度」の2箇所。それぞれ部位別にどのような構造が「瞬発力タイプ」「持続力タイプ」に寄っているのかを見ていく。

ワグネリアン

こちらはワグネリアン。飛節部分が地面に対して真っ直ぐに伸びている、典型的な「直飛」の構造だ。父ディープインパクトも直飛であるため、ディープインパクト産駒には比較的直飛の馬が多い。

飛節は関節部分に当たるため、後肢を踏み込む際に関節が曲がり、地面を蹴った後に関節が伸びる。真っ直ぐであれば曲げこんだ際に発生したエネルギーをロスなく推進力に変換することができるため、昔から理想的な形とされてきた。後述する体の伸縮性と関連するが、一般的には長い良い脚を使える形とされる。ディープインパクトが長い切れる脚を使えたのは、典型的な直飛だったことも関係しているだろう。

カツジ

こちらはカツジ。ワグネリアンと同じディープインパクト産駒だが、飛節部分は明らかに「くの字」に折れているのが分かる。典型的な「曲飛」の造りと言って良いだろう。曲飛は直飛と比較して、地面を蹴った後に後肢が伸び切らない。そのため昔は敬遠される形であったが、曲飛のサンデーサイレンスが日本に輸入され、その後大活躍を見せ血統的に繁栄したこともあり、近年の活躍馬は飛節の折りが深い、曲飛の馬が多い傾向にある。

前述のように曲飛は構造上後肢が伸び切らないので、単純に推進力が得られにくいというデメリットがある。しかし、伸び切らない分1ストロークが速くなり、瞬間的に加速することが可能。故に短距離馬には割合曲飛の馬が多い傾向にあり、一瞬の加速力に優れることからテンにダッシュ力を要する逃げ馬、中団後方で脚を溜めて一気に末脚を爆発させる追込馬など、レースの流れの中で瞬間的に脚を使う脚質の馬が多く見られる。

プリモシーン

こちらはプリモシーン。トモ(腰)の部分である骨盤、仙骨が傾斜して斜めになっている「斜尻」。この形はトモの筋肉を縮めて伸ばすのに適した形となっているため、一般的に瞬発力に秀でていると言われている。サンデーサイレンスがこの造りをしており、その産駒が台頭していることもあって、近年の活躍馬にはこのタイプの馬が多い。ただ、パワーが付き切っていないと腰の甘さに繋がることもある。

ケイティブレイブ<

こちらはケイティブレイブ。骨盤の角度が傾斜しておらず、トモの角度が水平に近い「平尻」。斜尻と比較して瞬発力には劣るものの、長く脚を使うのに適しており、逃げ先行馬に多い形。近年は少なくなってきた印象がある。序盤からスピードを生かした競馬スタイルが合っており、転じて先行有利のダートを主戦場とする馬も多い傾向にある。