競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【皐月賞】どこからでも攻められる混沌の皐月賞
2021/4/13(火)
3冠でいちばん難しいのが皐月賞。ディープインパクトの時も振り返ると、この皐月賞がいちばんの難関だと思った。距離が2000mの内廻りで、直線も310m。同時開催の新潟、阪神よりも50m近く短い。短い間に一気に脚を使わないといけない。
中山で勝って中山で負けたのがダノンザキッド。前走は前残りと解釈したい。そのダノンザキッドに勝ったのがタイトルホルダー。やはり積極策がいい馬なのだろう。そして無敗馬のエフフォーリアだ。まだ3戦、中山は初参戦である。共同通信杯で負かしたヴィクティファルスがスプリングSを勝利。力の証明には十分だ。そしてディープインパクトの子供達の3頭。
どこからでも攻められる混沌の皐月賞である。
【桜花賞の回顧】
21年4/11(日)2回阪神6日目阪神11R 第81回 桜花賞(G1、芝1600m)
- ソダシ
- (牝3、栗東・須貝尚厩舎)
- 父:クロフネ
- 母:ブチコ
- 母父:キングカメハメハ
桜花賞(G1)の結果・払戻金はコチラ⇒
やっと春の陽光のもとでの競馬が観られた。残念ながら桜吹雪はなかったが、乙女達の熱い戦いは見応え十分。白毛馬のクラシック初戴冠、それもまた今年も無敗での達成である。それも勝ち時計が桜花賞レコードの1.31.1。
文句ないの勝ちっぷりで、81回の歴史に名を刻んだソダシ。またまた金子真人オーナー・ブランド。鞍上は吉田隼人。若人と思っていたが、37歳になる彼の初クラシック制覇だ。レース後のインタビューで《可能性は 無限大》も、彼だけが感じえる手応えだろう。
そのソダシにクビ差まで迫ったサトノレイナスもなかなか。暮れの2歳女王戦ではハナ差だったが、今回は少し差が開いた。このライバル対決はこれからも続く。
スタートでメイケイエールが馬群の後ろに取り残された。これで後ろで折り合いに専念、と思ったが、そうは行かなかった。抑えの利かない行きっぷり。3Fではもういちばん前に出ていた。1000mの通過が56.8。これはこの10年でもっとも速い通過ラップだ。直線に入ったあたりで脚が止まった。3番手の内ラチ沿いでレースを進めていたソダシ。その後ろに続くのがファインルージュ。このラチ沿いで脚を貯めるのも勝利の方程式のひとつだ。
ラスト400でソダシは前に出た。そこから鞍上の左ステッキが入る。ファインルージュが2番手に上がったと思った瞬間に、外からサトノレイナス。アカイトリノムスメもその内で脚を伸ばすが、サトノレイナスの勢いが鋭い。ソダシへと迫る、だがその真っ白な体を隠すほどには届かなかった。
ルメールが悔しそうに内を観ている映像があった。暮れの対決では先にサトノレイナスが前に出たが、ゴールではソダシが勝った。稀に見る勝負根性、負けず嫌いなソダシの神髄なのだろう。今回は常にソダシが先んじていた。やっぱり枠順の差もあっただろう。それでもこれだけの差である。
この2頭の対決はこれから何度も続くはずだ。どうやら今年の3歳牝馬勢は強そうである。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。