競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【神戸新聞杯】秋のビッグレースへ能力を再確認
2021/9/21(火)
そのダービーのパトロール・ビデオを観た。絶好の位置取りをした福永Jのシャフリヤール。ところが向こう正面で後続が前へ前へとあがって行き、いつの間にか位置が後ろとなった。
直線への入りも外へ出そうにも壁があって出せない。少し接触もあった。やむなく少し内へと進路をとる。
スペースを見出したシャフリヤールが前と進んで行くと、先頭へ出たサトノレイナスが外へ流れる。それを抜き去ったエフフォーリアもつられるように外へ流れる。
真っすぐに伸びてきたシャフリヤールの前は邪魔な馬が居ない。外から矯正してきたエフフォーリアだが、その内をスルリと前に出てハナ差の勝利。《運の強い馬が勝つ》と言われるダービー。まさしくそんな勝利であった。そしてこの秋。3着のステラヴェローチェも出てくる。改めて春の能力の再確認が出来る筈だ。
【セントウルSの回顧】
21年9月19日(日)中京11R ローズS(G2、芝2000m)
- アンドヴァラナウト
- (牝3、栗東・池添学厩舎)
- 父:キングカメハメハ
- 母:グルヴェイグ
- 母父:ディープインパクト
馬名が読みにくい。近頃、この手が多い。で、JRAで馬名の意味を調べる。《北欧のニーベルンゲン伝説に登場する指輪》だそうで、さらに調べないと判らないことばかり。
好発のアンドヴァラナウト。エイシンヒテンがダッシュ良く先頭。すぐ好位に付けられた。レースの最初の1Fを13.1で入るなんて重賞はそうはないだろう。
前半1000mが1.01.2で後半が58.8。完全なる前残りのペースである。その流れを造った松若Jはお見事と言うしかないだろう。それを射程圏に入れて完璧に捕らえた福永Jの計算された騎乗。さすがである。この1、2着は自分の能力を出し切った清々しい競馬だった。
一方、2番人気の岩田康Jのタガノパッション。そして3番人気のルメール騎乗のクールキャットはまったく精彩を欠く競馬であった。。タガノパッションはアールドヴィーヴルのすぐ後ろ。クールキャットは後方で最後まで見せ場さえもなく終わった。タガノパッションはゲートになかなか入らず、あの時点で嫌な予感はした。それにしてもである。
注目していたアールドヴィーヴル。馬体の増加を見込んでいたが思ったほどでなかった。道中も勝ち馬の後ろで悪くない位置。4コーナーへ向かう手前で早めに前へと促して行った。それが後600あたりで後ろからのタガノディアーナに先を越される勢い。一瞬に馬群に囲まれてスペースまでなくなってしまう。反応が悪すぎた。スイスイと他馬が伸びて行く時にモタついていた。
ゴリゴリと押して何とか脚を伸ばして3着には来たが、とても前に届く脚色でなかった。オークス出走組よりも夏に使ってきた馬が多かったにしろオークス組はあまり成長したとは思えない。勝ち馬だけがソダシへの挑戦権を得たと言えようか。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。