競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【中山記念・解説】中山は庭、最後の伸びが違う!ウインブライトが差す!!
2019/2/26(火)
19年2/24(日)1回中山2日目11R 第93回 中山記念(G2)(芝1800m)
- ウインブライト
- (牡5、美浦・畠山吉厩舎)
- 父:ステイゴールド
- 母:サマーエタニティ
- 母父:アドマイヤコジーン
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マルターズアポジーが自分の仕事をして、1000mが58.2の速いラップで逃げる。2番手と積極策のラッキーライラックが直線入り口で交わして先頭。そのままかと思われたが、ゴール前でキッチリと差したのは中山巧者のウインブライト。G1馬が5頭もいる強力メンバーでも力を発揮する。そのしたたかさは恐れ入るものであった。
関西馬で力発揮は、ラッキーライラックだけ。ディアドラは終始、手応えがもうひとつ。スワーヴリチャードも、右廻りはエンジンのかかりがいまいち。それにしても…の結果だった。
海外遠征に行った馬の国内緒戦が難しいのは、以前から知っていた。その見極めが大事で、過去に痛いめに何度もあってきた。だからこそディアドラは昨年のドバイ帰りの札幌、クイーンSでの圧勝とかを見ているだけに、この馬に関しては何ら問題ないだろうと安心をもしていた。馬券はディアドラを軸に相手探し、あれは要らない、これはもうひとつ。と内心で当たった気持ちでいた。牝馬は環境に強い性格で動じないものだと…。
それがスタートした瞬間から、《アレッ》と思ってしまう。発馬で少し躓き加減に出た様である。だが大きなビハインドにはならず、すぐに馬群の後ろで動きだした。ところが何となく、鞍上のルメール騎手の手が動きだしている様に画面では見える。実際にそこにいてライブで見ているのと、画面を通して見ているのでは違うのを何度も経験している。位置はいつもどおりだろうが、何か行きっぷりがいつもと違う感じがする。
マルターズアポジーの外連味のない逃げであり速い流れだろうから、追走に手こずっているのも判る。だが他の馬がそう悪くない手応えで行っているのに、何か嫌な予感がする。
ラッキーライラックが、マルターズアポジーからそう離れてない位置で、勝つにはこのポジションなんだろうと思える位置にいる。それでも4角手前で前を捕らえに行った時は『いくら何でも速いだろう!』とTVの画面に向かって声が出ていた。
ウインブライト、ステルヴィオと直線で伸びて行く。その後ろの列のスワーヴリチャードにエポカドーロが、もうひとつ伸びあぐねている。まだ後ろのディアドラに至っては、いつものガツンと来る伸びが見られない。馬券はディアドラを頭に買っているのに、とてもそんないい処まで来る気配ではない。
過去10年を調べても、マルターズアポジーのラップは相当に速いものである。最初の12.4はゲートからだけに仕方ない数字だが、あとはほとんど11秒台。4角から直線へ入る時が12.1。ここはラッキーライラックが交わして行くところの数字。直線の2Fはラッキーライラックとウインブライトの数字だろうが、マルターズアポジーの刻んだ数字はハイペースとは言わないまでも、ミドルとは思えない緩みのないものだった。
1着のウインブライトにクビ差のラッキーライラック、頭差のステルヴィオまではしっかり流れに対応して力を発揮と見ていい。そこから下のスワーヴリチャード、エポカドーロ。そしてディアドラは流れが向いているのに、力を発揮出来ていない。ここらに中山の1800の難しさがあるのかも知れない。
またまた外国帰りの馬の見極めとか、G1馬でも果たして力を発揮出来得る舞台なのかを精査しないと、馬券なんて獲れるものでないことを思い知らされた。ましてウイン5。たった1人の人がゲットした様だが、恐れ入るものであり、その発想、着眼点には誰も及ばないものがあるのだろう。凡人には読めない、判らないものが競馬にもあるようだ。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。