笹川騎手インタビュー(後編) 大先輩からみた騎手・笹川翼
2014/9/3(水)
-:昨年を通して、「南関東でやっていけるぞ、良い成績を出せるぞ」と確信はできましたか?
笹川翼騎手:いえ。斤量がまだ軽かったので、減量が取れてからどうなるのか、という不安の方が大きかったです。
-:実際に減量が取れてからの違いはどうですか?
笹:無くなった当初は感覚が違うので、焦ってないつもりでも焦っていたりしていましたね……。最近はそのズレも良くなってきたとは思います。
-:改めて、斤量3キロの差は大きいものですか?
笹:最初の3キロ減の頃に比べたら全然違いますね。ただ、昨年よりは落ち着いて競馬に乗れるようになったところはあります。前は勝負所でがむしゃらに動いて、川崎でもそのせいで落馬してしまいました。今ではそういうことはなくなりましたし、ダメだったらしょうがない、という割り切った考え方で競馬に乗れています。あとは制裁がなくなれば良いのですが。
-:レース運びも変わってきますよね。競馬において、自分の強みだと思う部分を教えてください。
笹:強みか分かりませんが、色々と考えて乗れることや、気持ちを前面に出すタイプだと思います。追い比べでも、“負けたくない”という気持ちを前面に出すので、それが馬に伝わっていて欲しいです。伝わっているかどうかは馬に聞いてみないと分かりませんが(笑)。
-:ファンの目線から見ていても、凄く積極的で、追い比べをしている姿は見ている側にも伝わって、感じるものがあります。
笹:まだまだ若いですし、積極性は自分の売りにしていきたいです。
-:自分の得意な戦法、乗り方はありますか?
笹:あまり逃げは好きじゃないですね。後ろから行って、差した方が気持ち良いですね。
-:自分の騎乗フォームはどう分析していますか?
笹:正直、前の方が良かったのかなと思います。勝てなかった時に少し崩れてしまって、綺麗に乗れるようにしないといけません。
-:現時点で一番印象に残っているレースを挙げるとすれば、どのレースになりますか?
笹:初めてメインレースに勝てた時は嬉しかったですし、これからやれるかなと……。勝つ時ってこんな感じなのかな、という感覚も自分の成長になりました。レースも考えていた通りに近いというか。自厩舎の馬でもあり、そこも嬉しかったですね。
-:大井で働くことになって、サークル内の雰囲気はどうですか?
笹:みんな優しくて、雰囲気は凄く良いと思います。若手ジョッキーは皆、仲が良いですね。
-:現時点で目標にしているジョッキーはいますか?
笹:真島さん(真島大輔騎手)は当初から目標にしていますね。気迫を出して、競馬をしていますし、当たり前のことではあるのですが、僕以上に競馬を考えているので。ああいう乗り方をしたいです。
-:レースの時にはどんな部分に気をつけていますか?
笹:馬が動く状態かどうかの感覚に気をつけています。引っ掛かりすぎても良くないですし、馬が止めようとするのも良くないので、その間くらいの感覚で乗るよう、位置どりは関係なく気をつけています。
競馬は引っ掛かってないことが、本当の“折り合い”ではなく、馬が推進しているところを、しっかりハミで受けている状態が“折り合い”だと思います。だから、行け!と思えば馬は行くし、下げようと思えば下げられる状態が“折り合い”だと思います。難しいことですが、外国人ジョッキーはそこが素晴らしく上手いですね。馬の感覚からズレない感覚がしっかりしていて、だからこそ、馬が伸びるのだと思います。
-:その上での技術面での課題と言ったら……。
笹:今言ったことも全然できていないので、そこも技術ですし、フラフラする馬をまっすぐ走らせる技術も足りてないのかと思います。精神面の課題も挙げると、疲れてくるとモチベーションが下がってしまうので、そこを解消するようにしたいです。
-:疲れといえば、朝も乗って休日が少ない毎日には慣れましたか?
笹:全休日に大井に行ったら、急にバターンと倒れてしまい、川崎を丸一週間休んだことがあります。救急車で運ばれたんです。
-:そんなことがあったのですね。原因は何だったのですか?
笹:今、調べています。それ以来、夜も早く寝るようにして、体調管理に気をつけています。
-:もしかしたら、溜まった疲れがきたのかもしれませんね。
笹:(所属の)大井開催終わりだったから、余計にそうですよね。
-:10年後、30歳になった時はどんなジョッキーになっていると思いますか?
笹:精神的にも技術的にも、もっと大きくなりたいです。可能な限り、上のポジションを目指したいですね。
「今年は『去年の43勝を超えたい』と口にしてきました。その倍くらいは毎年勝てるジョッキーになりたいです。近い夢は重賞を勝つことですし、大きいところでは、中央や海外で乗ってみたい希望もあります」
-:2年目の今年は昨年に比べて良い感じできている実感はありますか?
笹:一時は全然勝てない時期があって、どうしようかと思ったのですが、最近は斤量にも慣れて、リズムが良いです。乗り方も変わってきたような気がします。ただ、勝ち鞍は足りないですよね。これから上げていかないとダメです。
-:12月31日にはどんな成績で終わりたいですか?
笹:今年中に通算100勝を達成したいですね。
-:重賞でのタイトルも欲しいところですね。
笹:もちろん勝ちたいですが、そればかりは巡り合わせですからね。焦ってもしょうがないかなと。ただ、今でもチャンスは沢山頂けているので、嬉しいです。
-:今後の目標として、どんなジョッキーになりたいですか?
笹:制裁が嫌なので、それがないようなジョッキーになりたいです。汚い乗り方をせず、成績が伴うジョッキーになりたいです。
-:数字としての目標はありますか?
笹:今年は「去年の43勝を超えたい」と口にしてきました。その倍くらいは毎年勝てるジョッキーになりたいです。
-:ジョッキーとしての将来の夢はありますか?
笹:近い夢は重賞を勝つことですし、大きいところでは、中央や海外で乗ってみたい希望もあります。
-:大きな夢が実現するとなれば、また、大井競馬からスタージョッキーが登場することになりますね。それでは、最後にファンの方々へのメッセージをお願いします。
笹:大井競馬はレベルも高くて、接戦も多く、乗っている側からも力関係が把握し辛いことが度々あります。競馬にも迫力があって面白いですし、イルミネーションも綺麗ですからね。沢山の方が足を運びやすい競馬場じゃないかと思います。ダイアモンドターンも自分でファンとして行ってみたいくらいです。今年も半年が終わりましたが、まだまだ頑張っていきますので、是非、大井競馬場と僕への応援をよろしくお願いします。
【大井の大先輩・戸崎圭太騎手】
「南関東の中で注目している若手騎手は全員だけれど、中でも大井の笹川君かな。(笹川騎手が2013年デビューのため)大井で一緒の時期にはいなかったのですが、デビューした時から勝っていますよね。それに、勝っている結果だけが良い、というのではなくて、勝ち方も良いですし、レース振りが良いのでね。今後、楽しみな存在だと思いますね」
【笹川騎手が目標とする真島大輔騎手】
「センスがあるし、落ちついているし、若手の中では抜けていますよ。騎乗に関しては言うことはありませんね。上手いし、自分で考えて研究しながら乗っている。ミスも少ないほうだと思います。これから重賞級の馬がまわってきた時にどうなるか、でしょうが、そうやって良い馬と巡り会っていくことが、本人の糧になっていくでしょうね」
【師匠の米田調教師】
「技術面で言えば、あたりが良いし、筋肉もついてきて順調に育っています。精神面では「愛馬心を忘れないように」といつも言っているのですが、馬を大切にしますし、まじめで向上心もあります。生活面も問題なく、自分で考えて動ける子ですね。去年の活躍は本人が一生懸命やっていることが周りに伝わって、乗鞍も集まったのだと思います。
今後の課題は全体的な筋力のアップ。それと、上手く乗れる馬は上手いけれど、乗り切れない馬もいます。しかし、それはこれからの経験でしょうね。いつになっても愛馬心を忘れず、周りから信頼されるような騎手になってほしいです」
プロフィール
【笹川 翼】Tsubasa Sasagawa
祖父が新潟県競馬の元騎手で、引退後は西山牧場・白井分場の場長を勤めるなど、幼少の頃から競馬に近い環境で育ち、騎手を志した。地方競馬教養センター騎手課程第91期生として昨年4月にデビュー。同期にはルーキーイヤーには43勝を挙げ、南関勢では川島正太郎騎手以来、5人目となるNARグランプリ優秀新人騎手賞を獲得。今年はここまで34勝で、南関東リーディングのTOP20をキープ。次代の南関東を引っ張る存在として、さらなる飛躍が期待されている。(成績は2014年8月30日時点)
1994年 新潟県出身。
2013年 大井競馬よりデビュー。
地方初勝利:
2013年4月9日 大井競馬1R アンルヴェプルミエ