今年はJRAで活躍中のC.デムーロ騎手再び!
2012/2/26(日)
クリスチャン・デムーロ騎手
あのミルコ・デムーロ騎手の実弟で、昨年は南関東で25勝をマーク。祖国・イタリアでもリーディングに輝くなど、目覚ましい成績を残したクリスチャン・デムーロ騎手。今年は年明けから、JRAに身を置くと、京都牝馬Sではドナウブルーを駆って、見事、日本での重賞初勝利を挙げた。オリジナルインタビューとしては、昨年、船橋競馬在籍時以来の出演となるが、この一年間の活躍を振り返ってもらった。
-:まず、昨年は南関東で短期免許を取得され、活躍をされていましたが、南関東でのレースを振り返ってもらえますか。
C:よろしくお願いいたします。ボクの所属していた船橋は、小さな競馬場でしたが、いい競馬場で、たくさんのファンに応援していただきました。(兄・ミルコ騎手のレースを観に来たり)日本に来るのは初めてではなかったけれど、騎手として初めて経験した船橋ではとてもいい経験ができました。川島正行先生の厩舎に所属させてもらい、お世話になったのですが、すごくいい環境で競馬に集中することができました。
-:川島厩舎というと、地方競馬でもナンバーワンと言っても良いほど、馬の質も良かったんじゃないですか。
C:特に印象に残ったのは、フリオーソとクラーべセクレタですね。この2頭には毎朝乗せていただきましたが、とてもいい馬でした。
-:その2頭はどんな感じの馬でしたか。ファンに分かるように教えてください。
C:ご存知の通り、フリオーソは年はとってきていますが、馬体も大きくて綺麗でとても乗りやすいです。とてもパワフルで、いい心臓を持っています。
-:パワフルな馬が好きですか?
C:ハイ(笑)。見た目が大きい方が強そうでしょう?だから大きくて力強い馬が好きです。
-:一方のクラーベセクレタはどうでしたか?フリオーソとは違うタイプの馬です。
C:そうなんですよ、調教で乗ったときは馬体もそれほど見栄えがしないし、正直言ってあまりいい馬だとは感じませんでした。しかし彼女のレースを見たら印象が変わりました。とてもいい走りをしますね。
-:レースを見て「オオッ」と思ったのですか。
C:朝の調教では軽いキャンターを乗っただけなので、そのときの感触ではあまりいいとは思えなかったんです。でも、レースと調教とでは全然違う動きに感じました。レース前のテンションも違うから当然かもしれないけど、見ていて「凄いな」と感じましたよ。
-:その免許期間中でもある昨年、日本では東日本大震災がありました。その後で、もう一回来日するのは、いろんな意味で大変だったと思います。
C:震災では多くの方が犠牲になって本当に言葉もありません。世界的にも大きく取り上げられましたから日本のことが心配でした。ただ、今回の来日に関しては震災が起こってから自分なりに考えて問題ないと判断しました。しかし家族や親しい友人には「日本に行くな」と止められたのも事実です。それでもボクは今、JRAで自分の力を試してみたい気持ちの方が強かったんです。
-:今年は南関東ではなくJRAで乗れるようになった経緯を教えてください。
C:2010年シーズンはリスポリ騎手に次ぐリーディング2位になれたので、ボクも初めからJRAで乗る意思はありました。でも、年齢が若すぎたこともあって、昨年はJRAから短期免許が下りなかったんです。去年のシーズンはイタリアリーディングで1位になれたし、歳も1歳重ねた今年はJRAで乗せてもらえることになったんです。
-:もしかすると、イタリアでは最年少のリーディングジョッキーだったとか。
C:おそらくそうだと思います。
-:イタリアのTOPジョッキーといえば、ミルコ・デムーロやリスポリやピンナが日本に来ているわけですが、イタリアでは先輩である彼らと一緒に乗っているのですか?
C:イタリアも日本と同じようにいくつか競馬場がありますから頻繁には会いません。ビッグレースで顔を合わせるくらいですよ。
-:イタリアで仲良しのジョッキーはいますか。
C:イタリアではジョッキーの友達はいません。勝負の世界ですから難しいんですよ。一緒にいる時は仲良く話していても、後で悪口を言っていたような話を聞いたり……。日本のジョッキーと違い、イタリアのジョッキーはあまり性格がよくないのかもしれません(笑)。
-:イタリアの競馬の特徴を教えてください。
C:ミラノの競馬場は小倉競馬場と雰囲気が似ています。コース自体は東京コースに似ていて大きいのですが、建物とか回りの雰囲気が似ているんです。ローマとミラノはとても大きな競馬場ですよ。
-:そんな中で、イタリアの競馬が日本と比べて優れていると思う点はありますか?
C:(笑)。日本の方が優れていると思います!
-:イタリアのレースは日本よりもタフだと思うんですが、そういう状況で乗っているとテクニックが身に付くものですか。
C:イタリアは “タフ”というか“ラフ”です。馬同士がぶつかることもよくありますし、危険なシーンもあります。その中で勝つのにはすごく技術が必要です。それにスローペースの競馬が多いので、どこで動いていくべきか“流れ”を読む力が求められます。日本ではいいスタートを切って、いいポジションを取るように調教師から指示されることがありますが、イタリアでは違うんです。基本的にスローペースの競馬ばかりなので、スタートが良いにこしたことはないですが、押し出されて先頭を走るよりは出遅れた方がいいこともあります。スローだと内で包まれて動きたくても出せないこともあります。だから、“少しの出遅れくらいなら、どこかで挽回すればいい”、イタリアではそんな風に考えて乗っています。
-:とはいえ、日本もスローペースが多いと思いますが。
C:日本の競馬はそんない遅くないですよ!
-:ではイタリアの競馬はボクらが思っているより、さらにスローなんですね。
C:そうですね。日本の競馬の方がスピードもスタミナも求められるんじゃないですか?
-:じゃあイタリアの馬は凄く我慢をして走っているんですね。
C:馬がそういうレースに慣れているんです。フランス競馬みたいな感じでゆっくり行って、最後だけバンッと弾けさせる競馬がほとんどです。
-:ということは、日本の競馬は世界の中ではけっこう流れているんですね。
C:ボクもその速い流れが好きです。技術も使えますから。
-:イタリアリーディングジョッキー、クリスチャン・デムーロの技術を日本のファンに教えてください。
C:ウ~ン、言葉で説明するのは難しいですね……(笑)。
-:でも、そういう技術があるからドナウブルーの京都牝馬Sなど、日本で勝てていると思うのですが、日本での中央初勝利の時はどんな気持ちでしたか。
C:日本では来日当初から、とてもいい馬に乗せてもらっていましたから初勝利はすごくうれしかったです。しかし、3勝目の後に落馬してしまいました。
-:そうですね。とても心配しました。
C:ラッキーでした。あの落ち方で何もなかったので。他の馬がボクを踏まないで通り過ぎてくれたんですから。
-:そこはイタリア仕込みの落ちるテクニックもあるのかなと思いました(笑)。
C:ハハハ、あれはラッキーもあります。後続の馬がジャンプして避けてくれなかったら大変でしたよ。
兄のミルコ・デムーロ騎手が日本ダービーを制した時の写真と一緒にポーズ
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兄は日本の競馬ファンにもお馴染みのミルコ・デムーロ騎手。09年に祖国・イタリアでデビューすると、デビューイヤーは年間45勝。2年目はウンベルト・リスポリ騎手に次ぐ年間153勝をマーク。そして、昨年は222勝を挙げて、イタリア・リーディングに輝いた。 |