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南井大志調教助手

ホットプレイの肌にフジキセキと言えば、南井厩舎フリークにはお馴染みだが、いよいよクズの出ない血統からクラシック級の馬が出てきた。どうしても短距離系のイメージが先行してしまうが、どうやらタマモベストプレイ(牡3、栗東・南井厩舎)は兄姉のタイプとは陣営の評価が違う模様。今回は競馬ラボ初登場となる元騎手の南井大志調教助手に、皐月賞挑戦への意欲や当日理想とする状態などをリサーチしてきた。

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南井厩舎ゆかりのフジキセキ産駒

-:タマモベストプレイといえば、南井厩舎ゆかりの血統じゃないですか。この兄姉というのが、タマモトッププレイとか、チャームポットとか、タマモナイスプレイなどがいますが、お父さんがフジキセキというのは同じですよね。一緒の中で、この馬だけ何か特徴が違うというか。もっと短距離系統の馬が多かったじゃないですか?

南井大志調教助手:全部一緒です、5頭。その中でも距離の融通が利きそうやね、一番。

-:そのあたりの話をうかがいたいのですが、フジキセキ産駒といえば結構“(性格的に)燃える血統”で、能力的には距離をこなせるけども、精神的に距離がもたないという。

南:ああ、ヨソの厩舎もそうなんや。フジキセキ産駒が、ということですかね。

-:例えば、返し馬に行く時に「テンションが高くなり過ぎているぞ」という馬もよく見ますし。

南:この馬もこの間、中山に行った時に馬場に出る時だけ、やっぱりうるさかったんで。パドックとかは落ち着いているのですけれどね。

-:そのメリハリはフジキセキ産駒の中でも?

南:フジキセキやからか、お母さんやからか分からないけど、この血統はちょっと気が悪いとこがあるから。どの馬もそれぞれ違う面で気が悪い面があるんです。

-:ちなみに乗ったことがある馬で、どういうところがうるさかったですか?

南:タマモホットプレイは最後の方に僕が乗った頃は調教で追い切りしようと思っても、馬場で止まったりとか、機嫌を損ねたら全然動かなかったりだとか、その後は。

-:言うことを聞かない?

南:やっぱり真面目に走った時は重賞とかも獲れたし、乗り味は最高やったから。ナイスプレイはそういうのに比べたら普段は大人しいですけど、やっぱり競馬場に行ったら厩務員さんは「うるさい」と言ってましたし。トッププレイが一番、真面目かな、今のところ。

-:真面目だから競走成績が良いかと言ったら?

南:そやね。この兄弟、最初から走るというイメージがなくて、走っていって経験を積んでから、という馬ばっかりやから。ベストプレイは別ですよね。最初から“何か違うな”と思ったのは。

-:それは言葉にするとしたら、これまでの兄姉とどの辺が違う?

南:速いとこいった時の反応というか、全然、違いますよ。

-:スパーンと反応をすると?

南:普段も運動とかダクとかはダラけてるというか、暴れたりもするし、スゴい子どもっぽいところもあるけど、いざキャンターとかに行ったら、凄く真面目でなかなか違うし、柔らかい。

-:良いとこが出ていると。

南:良いとこが出てます。新馬の時はやっぱりレースに行ったら不真面目というか、ジョッキーが追い通しやって、届かんかなと思ったけど。

-:なかなかゴーサインに納得しないというか?

南:そうです。レースはまだ5戦ですが、使う度にレースが上手くなっているから。競走センスは1番あるのかなと思う。

-:デビューしたのは1400mなんですけど、それは上の兄姉とかのイメージで?

南:そやね。みんな1400mばっかりやったし。でも、ナイスプレイとチャームポットは1800mも勝ってるんですよね。調教とか次第では距離をもたせることができるのかなと思ったりもするんですけどね。

-:あとは皐月賞のコーナー4つ。

南:前走のスプリングSで輸送も全部克服できたから、収穫はデカイですよね。馬込みも大丈夫やったし、全部クリアしてくれたから楽しみは増えましたね。

1800mを克服。皐月、ダービーまで?

-:2層前に勝ったきさらぎ賞はどういう風に見ましたか?

南:アレも理想通りの形だと。その前のシンザン記念は間隔が開いていたから、和田さん(騎手)がビッシリと追っ付けていかないと全然付いていけなかったけど、それが活きたんか知らんけど、きさらぎ賞はスッと前に行けた。ヨーイドンの形になったら絶対にイケると思ってたから。

-:それだけ瞬発力とキレがある?

南:あります!

-:逃げていた大久保龍志厩舎のマズルファイヤーと追い比べになって?

南:イケると思った。(追い比べの理想の形で)絶好の形やった。



-:そのレースを勝って、1カ月ちょっと短期放牧で開けて、スプリングSに行きましたね。この時のコンディションというのは、短期放牧明けでどれぐらいのデキだったんですか?

南:ある程度、皐月賞に向けて輸送も考えての調整だから、MAXの仕上げではないですけどね。

-:それでロゴタイプの2着。さすがにG1馬だなという感じはしました?

南:珍しいですよね。2歳チャンピオンが走って。ここ最近じゃ、なかなかないことやから。

-:ロゴタイプの2着になれたということはこの先は明るいとみていますか?

南:着差も道中の差そのままやから。展開次第では……(逆転の期待も)。

-:この馬は競馬が上手くて、ある程度、先行して中団より前にいるじゃないですか。皐月賞の傾向を考えると、一番ポジションは理想的と言われるところにいそうな馬なんです。前走のスプリングSからどれぐらい調子を上げられそうですか?

南:使うまで結構ピリピリしてて心配してたんですけど、体重がメッチャ減るんとちゃうかなと思って。マイナス6キロやったし、コレやったらと良いかなと。今はスゴく落ち着いてるんで、レースを使った後はね。

-:もちろん減った体重も戻せている?

南:戻ってるし、レース後もパクパク食べるしね。息の入りも早い馬やし。

-:皐月賞でも流れ次第ではアッと言わせるシーンがあるかもしれないですね。

南:あっておかしくない馬ですよね。能力はホンマにあるしね。

-:このお母さんの子というのは。スゴいお母さんですね。

南:今年か、来年で終わりかな。フジキセキしか走ってないもんね。他の(種牡馬)を付けたときは走ってないからね。しかも20何歳やから。歳をとってからのトッププレイとか、ベストプレイの方が良いもんね。

-:あんまり繁殖牝馬としては高齢になり過ぎると良くないというのが、通例ですよね。

南:でも、高齢になった方が良い馬出してるもんね。珍しい。

-:この馬に注文が付くとしたら、どういうところですか。例えば、雨が降って馬場が悪くなる過ぎるとどうか、とか。

南:全然大丈夫。ダートも走れるし、この間も結構悪い所を走ってきてるしね。普段でもグチョグチョの馬場とかでも全然気にしないからね。前走のスプリングSの最終追い切りでも相当悪かったですから。

-:結構、心配な面はないんですね。

南:2000mがどうかですね。前走は勝負どころでちょっと抜くというか、自分からグッと行くところがないから、3コーナー手前で和田さんが一発ステッキを入れてるしね。それでスッと反応してくれてるから良いけど。

-:逆にそこをスッと動ける馬の方が距離の融通が利かないから。

南:それもあるかもしれない。

-:この馬の良さと言ったら、真面目過ぎないところ?競馬に真面目過ぎる馬というのは、必死になり過ぎてゴール前で脚が上がってしまいますからね。

南:止まっている訳じゃないしね。3着馬には詰められているけど。





-:中山だったらマイナスになりやすいポイントというか。京都の硬い馬場でしか走らない馬もいますから。

南:京都しか走ってなかったから、それはメッチャ不安やったんですよ。コーナーが4つだし。

-:それを克服できたというのは?

南:デカい。この馬はどこでも走れるんちゃうかなと。

-:あとは距離がどこまでこなせるか。ここまで来たらダービーも視野に入れて?

南:だって和田さんは「ダービーまで行くぞ」と言ってたから、フフフ(笑)。そこで皐月賞の距離と言ってられないしね。引っ掛かる馬とちゃうから、前に行こうと思ったら行けるし。

-:前走で内枠も克服しているし。この馬のベストの枠というのは内目なのか外目なのか、どちらでしょう?

南:皐月賞とかだったらゴチャつくから、真ん中とか内でスッと行けた方が。後ろから行って終い勝負もできる馬やと思うけど、皐月賞は中山やし、あんまり後ろからやったら、ちょっとでもゴチャついたら終わりやしね。やっぱり前走みたいな、ある程度は前で競馬をした方が良いと思いますけど。

-:あとは他の馬との兼ね合いで。中山の2000mというのは結構、キレ味のある馬とか、引っ掛かる馬にとっては鬼門でしょ。こんな所は走りたくないという。人気馬でもキレる馬とかそういう馬が多いけど、この馬は引っ掛かるとこがないし、乗りやすさがありますからね。

南:引っ掛かる馬もおるでしょうね、多分。ペースが速くなるんとちゃうかな。

-:乱ペースになるかもしれませんね。途中で引っ掛かって。

南:急にね。ある程度は行けるから、展開は向くんとちゃうかなと思うけど……。

当日のパドック、返し馬の気配に注目

-:毛色とかはフジキセキと全然違いますね。この馬が栗毛で、フジキセキが青鹿毛ですか。

南:毛色は栗毛。カッコイイ色ですよね。たぶん、兄弟の中で真っ黒はいないですよ。

-:やっぱりお母さんの方のノーザンテースト系が?

南:うん、そうやと思いますよ。

-:でも、タマモベストプレイは脚の細さを見たらノーザンテーストじゃないですよね。ノーザンテーストって、もうちょっと骨太な感じでしょ。タマモベストプレイは結構シャープな馬体で?

南:そうやね。

-:乗った感じは柔らかいですか?

南:柔らかい。キャンターに行ったら全然違う。普段の歩きとかは“エ~?”という、そんな大した歩きはしない。ちょっと側対歩っぽいねん。ヨソの厩舎の人が「何、それ」みたいな感じで、ハハハ(笑)。ダクとかも結構、ダラダラ歩くタイプやから。ホンマ実戦タイプ。



-:皐月賞でのパドックの見方とすれば、この馬はどういう時が良いですか?

南:イレ込み過ぎない方が良い。ある程度はグイグイと引っ張ってくれるのも良いけど。きさらぎ賞の時がそういう感じやったかな。

-:ただ、パドックから本馬場に入る時はちょっとテンションが上がって普通だと?

南:それは普通。全然、気にしなくて良い。前走も馬場に入る時だけうるさかった。多分、最後出しになるんとちゃうかな。

-:今度は多分、ダートコースから出て行くんですね。

南:この間も。歩きにくかったわ。俺の方ばっかり寄ってくるから、ハハハ(笑)。砂もメッチャかけられたし。

-:最後にタマモベストプレイを応援しているファンにメッセージを。この馬のココが良いですよというアピールを。

南:ベストプレイは競馬に行ったら真面目やし、レースごとに競馬が上手くなってるんで、本番は折り合いも付くし、テンから動くと思うんで、チャンスはあると思うから応援して下さい。

-:楽しみにしています。ありがとうございました。

(側対歩=左前-左後、右前-右後と、同じ側の前後の肢が、それぞれ1組ずつ地面に着いたり、離れたりする歩法)


【南井 大志】Hiroshi Minai

父は元騎手の南井克巳調教師。タマモクロスに乗っていた父の影響を受け、中学3年で乗馬を始める。1浪で競馬学校に入学し、2002年に栗東の橋田満厩舎所属で騎手デビュー。当時に調教で跨った名馬としてアドマイヤコジーン、アドマイヤマックスを挙げるが「乗り味が一番良かったのはラスカルスズカ」と。2012年の3月に騎手引退後は南井厩舎の調教助手に転身。その感想としては「障害に乗っていたから、精神的に楽になった。自分的にも助手になって良かったと思う」と。第二の競馬人生にやりがいを感じている。