近年はメンバーの揃わない感のあった有馬記念だったが、今年は豪華メンバーが集結。戦前の枠順抽選会なども一役を買ったことで話題を呼び、昨年比でも売り上げアップを記録したように、例年以上に世間の注目を集めた一戦だったといえよう。そんなグランプリで見事に有終の美を飾ったのがジェンティルドンナ。そして、その鞍上は戸崎圭太。ドラマの主役に、会心の騎乗を振り返ってもらった。

願ってもない枠をゲット

-:昨日はジェンティルドンナ(牝6、栗東・石坂厩舎)で劇的な有馬記念優勝おめでとうございました!今の気分はいかがですか?

戸崎圭太騎手:……心が浮ついていますね。なるべく落ち着かせようとは思っているのですが、嬉しい限りで、まだ余韻に浸っています。

-:戦前にも色々な話を聞かせていただきましが、まさかこんなに形になるとは。

圭太:これが実現するのとしないのとでは、また違いますからね。いや~、競馬にはドラマがあるなと感じましたね。色々な馬にも乗せてもらいましたが、ここまでストーリー・ドラマを深く感じたことはなかったですかね。感じたことがなかったというより、一番劇的に感じたものは今回でしたね。

-:レースに至るまで、まず今回のポイントとしては、枠順抽選会というものがありまして、抽選順は幸運にも一番ということで、完璧に理想の枠を選択することが出来た立場だったと思います。抽選会までの先生(石坂正調教師)との打ち合わせは、どれほどされたのですか?

圭太: 1週前追い切りの時に、僕の中でも理想の枠を大体決めて、先生に話したのですが、希望が丸っきり一緒だったので、難なく「それで行こう」ということでした。当日は先生が発表してくれるということだったので、ああいう形になりましたね。

-:第一希望は2枠4番ですね。

圭太:そうですね。第二希望は3枠6番ですね。次いで、4枠8番。

-:偶数の内目ということで。

圭太:そうですね。極端な内枠の1枠1番、2番は嫌いましたね。

-:内枠でジェンティルのスタートダッシュなら、ハナに出ていってしまうかもしれませんよね。

圭太:それはないと思いますが、どんな形にせよ、下げようとは思っていたので。一方で内でゴチャつくのも嫌だなというのも、先生の考えと一致したので。抽選順が遅ければどうなっていたかはわかりませんが、本当に相談もなく楽に決まりましたね。

-:抽選会ではガッツポーズも飛び出ましたね。

圭太:まあ、一番ですからね。良かったですよね(ニヤリ)。

戸崎圭太

栗東トレセンへ赴き、有馬記念1週前追い切りに騎乗


ジェンティル向きの馬場状態

-:正直なところ、レース前は不安を感じながら挑まれているのかな、という気がしたのですが、そういう希望通りにも行って、運も向いていたわけです。もちろん不安があったとしても、レースに対しての一発狙おうというモチベーションもあったわけで、やっぱり見ていても、何か大きなことをしてもおかしくないのかな、という気はしていました。そして、今回のもう一つのポイントに、当日の馬場状態も割と影響したのかなと。

圭太:そうですね。中山開催が始まって、一番乾いている馬場だったとは思いましたね。毎日、中山に乗っていたわけではありませんが、そう思います。

-:それは、前のレースに乗っている時点から、そう感じていたわけですよね。

圭太:ありましたね。なおかつ、ジェンティルにとっては良い方に向きますからね。

-:レース展開も理想的な運びに見えましたね。

圭太:ヴィルシーナが行って。他がいて、2~3番手の後ろには付けようと思いましたね。ただ、ラチ沿いに行く気はなかったです。ゴチャつくのも凄く嫌だったし、あとはジェンティルの渋太さというのも活かしたいなと思っていたので。今回はゴチャつくよりも早めに進路を見付けられるところを通ろうとは思っていましたね。

-:思い描いていた展開とは近いものだったですか?

圭太:う~ん、でも、前があんなに離していくとは思わなかったし、僕も壁が前に出来ると思ったんです。エピファ(ネイア)もあんなに前に行くとは思っていなかったし、エピファの後ろで、と想定していたのですが、エピファがヴィルシーナの後ろに入れる形になったので、そうすると自然と前に壁がなくなる形となり、少し行きたがる面も見受けられたんです。それでも、あのペースの中、凄くまとまって、良いリズムで走れたかなと思いますね。

戸崎圭太

-:馬の状態、当日の雰囲気自体はどうでしたか?

圭太:元気一杯でしたね。天皇賞(秋)とどこか変わったかというと、特に変わりはないのですが、良い状態を維持しているとは感じましたね。

-:追い切りにも1週前に乗りに行かれました。ただ、冷え込んだ時季になってからは、坂路の追い切りも重い馬場だったり、滑る馬場だったりで、なかなか見た目では判断し辛い印象でした。

圭太:そうですね。馬場が悪かったので、そんなにガシガシと出来なかったんです。

-:よく引退レースというと、“どこまで仕上げるの?本気で勝負にくるの?”という懐疑的なファンや関係者も多いと思いますが、もちろんそんな仕上げでもないですし、やっぱりジェンティル陣営は勝ちに行った有馬記念だったということですね。

圭太:そうですね。その思いが実ったレースだったと思いますよ。

インタビュー(後半)
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