ハクサンムーンとの初タッグを組んだセントウルSでは、惜しくも2着に屈した戸崎圭太騎手。とはいえ、パートナーは約半年ぶりの実戦であの内容ならば、上積みに期待せざるをえないが、今年は新潟競馬場での開催。夏からの連続開催で傷んだ馬場は、先行馬にとって大いに不利に映るところだ。
この新潟でも順調に勝ち星を重ね、馬場も熟知しているであろうリーディングジョッキーは、大本番でハクサンムーンをどう捌くのか。いよいよ幕開けする秋のG1に懸ける思いを語ってもらった。


ひと叩きして上昇のイメージを掴んだセントウルS

-:初コンビとなったハクサンムーン(牡5、栗東・西園厩舎)のセントウルS(G2)を振り返っていただきたいです。レース前の時点では、返し馬の旋回癖の心配もありましたが、結果的に普段よりは全く回らずにサッと出ていきましたね。

戸崎圭太騎手:そうですね。レース前にも改めてインターネットでチェックをして、一応、イメージを作っていたのですが、1回転だけして、スムーズに行きましたね。アブミも延ばしていって、準備は万全だったのですが(笑)、思ったよりもスムーズでしたね。

-:元気がないから(回転が)少なかったのか、ジョッキーが替わったからそういう方向に出たのか、どう思いましたか?

圭太:いや、ジョッキーが替わって変わるようなことはないと思いますよ。あの感じで見ているとね。

-:今までの傾向を聞くと、やっぱり回っている時の方が走っているような話はチラホラとは耳にしたので、そういう意味でも休み明けだったのかと思いました。

圭太:終わってみれば、休み明けの分、馬がオットリとしていたところはありましたね。全体的にそういう印象は受けました。


休み明けを1回叩けば、反応ももう少し良いかと思いますし、次回もスタートには気を付けたいと思いますね


-:馬体重も486と、微かな差ながらもデビュー以来最高の体重だったので、完成されている古馬の年齢を考えたら、少し余裕があるというか、まだ先を見据えた状態なのかなという感じがしましたね。

圭太:そうですね。思ったよりも大人しかったですし、それは感じました。一回使ったことでそれは良くなってくると思いますよ。

-:映像で見ていたら、ウイナーズサークルで返し馬で待っていたじゃないですか。先生(西園正都調教師)とはどういう話をされていたのですか?

圭太:あそこでは、もうレースの話はなかったですね。強いてあげれば、「乗ってアブミを履いたら、すぐに放すから」と。そこは言われていましたね。その以前にレースでは「必ず(ハナへ)行け」ということではなかったですね。レース前の報道を見ていても、そういうコメントもされていたので、きっとそういうことを言われるのかと思っていましたし、心構え通りでした。

-:ただし、ゲート自体は、前回に続いてあまり良くなかったですね。

圭太:ゲートも一歩目はいつも遅いらしいんですよね。だから、「一歩目はある程度、出していってくれ」という指示もありましたね。あとは「行く馬がいたら行かせる形で良い」ということだったので。ただ、スタートはゲートの中では大人しいので、タイミングが悪かったものではないのです。休み明けを1回叩けば、反応ももう少し良いかと思いますし、次回もスタートには気を付けたいと思いますね。

-:良いスタートを切るに越したことはないタイプですからね。

圭太:良いスタートの方が良いタイプとは思いますからね。

-:ゲートを出てからの気配や、走りはどうでしたか?

圭太:速かったですね。二の脚は速いですわ。

戸崎圭太

荒れた新潟の芝 枠順が重要

-:一回、乗り味を確かめた上で、次のレースに向けて、どんなイメージが出来ましたか?

圭太:正直、まだハッキリとは決めきれていません。ただし、枠順が大きいかというイメージはありますね。枠順が出てみないと、組み立て方は出てこないかな、という感じですか。今の新潟の馬場も連続開催で特殊ですしね。

-:2カ月ずっと同じでコースですね。

圭太:そうですね。だいぶ内も荒れてはきているのでね。

-:新潟は平坦ですし、前が残りやすい馬場ではあるとは思うのですが、それだけ同じコースを使っていて、しかも、現状でも直線では外を回っているのを見ていると、逃げ馬からすれば、難しいレースになる印象は受けますね。

圭太:ただ単に、スタートを上手く切って、ハナに行って、という形だけではないと思うので、枠順はかなり重要ですね……。枠順で乗り方は変わってくるかと思います。

-:考えられる範囲で説明すると、どんな状態ですか。内だったら、外だったら?

圭太:う~ん、自分の馬もありますし、他の馬の枠順もありますね。特に前に行く馬との兼ね合いもあるでしょうね。

-:並びによっては、もちろんハナに行くこともある訳ですか?

圭太:全然、あるんじゃないですか。

-:前回みたいに外に行って、内にテン行ける馬がいたら、番手に付けるということもある訳ですか?

圭太:ただ、あのメンバーからしたら、二の脚は一番ありますからね。セントウルSはアンバルブライベンが速いと思っていましたよ。一緒に1000mで乗った時も、抜けて速かったので、そこは把握していました。ただ、あの馬は今回いませんし、アンバルブライベン以外ならば、一番速いと思っていますからね。その上でどう乗るか、ですよ。


「本当に二の脚は速いな、という印象です。でも、思った以上に走りのまとまりも良かったですね」


-:理想を言えば、内枠を引いて、良いスタートを切って、周りもあんまり牽制しないような……。

圭太:いや、でも、内だと、やっぱり馬場も本当に良くないのでね。

-:かと言って、内を空けて走る訳にもいかないですね。

圭太:まあ、向正面は内を空けて走っても、という気はするので、色々な組み立て方があると思いますよ。

-:あと2週間ありますが、余程のことがないと、内が良くなることはないと思います。直前の馬場状態を把握することも、重要になってきそうですね。

圭太:ちょっと気掛かりですね。

-:前回の競馬を見ると、誰もが次に向けて良くなってくるだろう、という風に見ていると推測します。そういう意味でも人気もするでしょうし、他馬からしても結構マークがキツくなる一戦かなと。マークをしても付いてはいけないでしょうが。戦前と乗ってからの印象の違いはありましたか?

圭太:いや、特にはないですが、本当に二の脚は速いな、という印象です。良い意味での印象の違いですかね。でも、思った以上に走りのまとまりも良かったですね。もっとバーッと走ってしまうのかな、という印象でしたが、その辺はスタッフも凄く気を遣って、攻め馬からそういう工夫をしていたようなので、それが結びついているのは感じましたね。

-:レース後、先生は何かおっしゃっていましたか?

圭太:負けたことに関してはもちろん悔しかったし、残念だったと思いますが、「ヨシッ」ということは言っていましたね。助手さんも「本当にタイトルを獲らせてあげたい馬だ」ということは言っていたので、そういう気持ちも入ってきて、馬に伝わってくれると思います。次は変わってくるだろうと思っています。

-:レースに向けて意気込みをお願い致します。

圭太:一度タッグを組めましたし、それで自分の中でイメージも出来ましたし、あの馬の良いところも分かった範囲で力を出せれば、と思っています。休み明けを叩いて良くなることもあるでしょうし、G1制覇に向けて頑張りたいですね。

戸崎圭太

天皇賞はジェンティルドンナとのコンビ 重要な秋に

-:ジョッキー自身、秋も有力馬の騎乗が続きます。どちらかと言うと、ファンのイメージでは、最近は重賞以外のジョッキーと言われている気がするので……。

圭太:そうなんですか?ハハハ(笑)。そういうイメージも払拭したいですね。

-:でも、この夏から何か変わってきた気がしますね。

圭太:自分が?

-:環境が?

圭太:ああ、何か変わりましたね。ガラッとね。

-:この秋は重要な感じがしますね。

圭太:重要ですね。

-:そういった面で緊張感とかはないですか?プレッシャーというか。

圭太:いや、引き締まりますね。やっぱり気持ちはね。色々と意識が高まっているのを自分でも感じますね。

-:それは良い方向に出ていますか?

圭太:うん。と思います。

-:レースでその勝負強さを出せるように、ということですね。

圭太:そうですね。良いパフォーマンスを出せるようにね。勝負強さと言ったら、弱いのかもしれないけど……、フフフ(笑)。でも、勝負強さというのは持っているモノだと思うんでね。あとは良いパフォーマンスを出せるかどうかなんで。

-:G1で言えば、ジェンティルドンナ(牝5、栗東・石坂厩舎)の騎乗依頼がありましたが?

圭太:まあ、夢のようですよね。夢のような話だなと、最初は思いましたよね。

-:ここから追い切りにも乗られるようですが、現時点の印象ではどんな馬でしょうか?

圭太:いや~、「強い」。一言で言うと、ですよ。圧勝するタイプの馬ではないと思いますが、そのレース、そのレースできちんと走ってくれる強さ、強みというのは持っていると思うんです。一番印象深いのは、ドバイシ―マクラシックで不利をこじ開けてきたのがね。少し出られないようなところから、女の子でああいう競馬をやれるというのは、本当に強い女の子じゃないと出来ないですよね。根性がある馬じゃないと出来ないです。あれを見せつけられたので、本当に自信を持って乗れるな、という思いはありますね。

-:ジェンティルドンナはもちろん、ああいうレース捌きは騎手にとっても難しい判断なのですか?

圭太:あそこは本当に一流の馬と騎手が、あそこで落ち着けるというのは凄いことだと、それもまた感じました。まあ、全然ライアン・ムーアは慌てなかったですからね。あれは素晴らしいですね。