ララベル"

フェブラリーSで15着に敗れたララベル

●フェブラリーSは15着…真島大「本当にありがとう」

2月18日(日)、東京競馬場で行われたダートの頂上決戦・フェブラリーS(G1)。ノンコノユメが豪脚を繰り出して見事に優勝。レース後、検量室前には笑顔の輪が広がった。そんな中で特別な思いを抱いていた陣営がいた。今回が引退レースだったララベル(牝6、大井・荒山厩舎)。15着に終わってしまったが、関係者は安堵の表情に包まれていた。

フェブラリーS直前の独占インタビューはコチラ→

レース後、馬の無事を確認した荒山勝徳調教師は、プレッシャーから解放されたのか笑顔でレースを振り返る。「欲を言えばスタートが良かった分、垂れたとしてももう少し主張してほしかった。最後のレースですからね。もう一回くらい使おうかな(笑)。ポジション下げるなよ……と内心思っていました。いつもだったら譲らないで『お前なんで譲らないんだ』と大輔を怒るのに、今日は簡単に譲っちゃったもんね(笑)。なんで下げるんだって、ね?ノリちゃん!」と、近くを歩いていた横山典弘騎手に話を振るくらい上機嫌だった。それに対して横山典騎手は、満面の笑みで「はい!」と応えた。取材陣にも和やかな空気が広がった。

「本当にありがとう、お疲れ様ですと言いたいです」。騎乗した真島大輔騎手はゆっくり口を開いた。全19戦中17戦でコンビを組んできたが、「1戦1戦色々な経験をさせてもらいました。ララベルと戦ってきた全てのレースが記憶に残っています。昨年のJBCレディスクラシックも、勝った後の表彰式で、それまでを思い返した時、こみ上げるものがありました」と、共に歩んだ日々を振り返る。

初めて跨ったのはデビュー前。能力試験と言われる試走の時だった。「まだ緩さはあったのですが、乗った瞬間インスピレーションと言うか、『自分はこの馬にずっと乗るんだ』という感覚を覚えました。背中がいい馬はたくさんいますが、背中どうこうではない、違った感覚です。試験後荒山先生に『この馬で大きいところを獲るので乗せてください』と頼みました」。

デビュー前から右トモが弱く、順調とは言えない状態が続いた。「早く使い過ぎると故障すると思い、荒山先生にお願いしてゆっくり使ってもらいました。デビュー戦からこの馬を壊さないように、常に気をつけてきました。僕がケガをして乗れなかった時も、他の人が乗る時は『先のある馬なので、大事にお願いします』と伝えていたくらいです」。6歳牝馬にしてキャリアはわずか19戦。この数字が、彼女のこれまでの競走馬生活をよく表している。

日々、付きっ切りでケアにあたった横山厩務員、大事に乗り続けた真島騎手。磐石のチームワークで戦った『チーム・ララベル』について、荒山調教師は「厩舎の中でも、大輔も、ララに関わる人間みんな思っていることですが、これから馬で仕事をしていく我々に、ララはすごく大きなお土産をいっぱい置いていってくれました。身体の弱さを抱えながら、常識を打ち壊してきてくれた馬です。ララには頭が下がります。こういう馬がいるんだなと。この馬に色々なことを教えてもらいました。厩舎の引き出しを増やしてくれました」。レース後、笑顔で感謝の言葉を続ける。

●中央G1制覇は仔に託す「また夢を見させて欲しい」

地方競馬ファンは、常に地元の馬たちが中央競馬の強敵たちを倒すことを夢見ている。しかし現実は厳しい。中央競馬勢の壁は厚く、近年、地方馬は幾度となく壁に跳ね返されてきた。その壁を打ち破ったララベルは地元・大井競馬だけでなく、多くの地方競馬ファンたちのアイドルだった。

この馬のファンは本当に多い。昨年のJBCレディスクラシックで勝った瞬間、多くのファンが涙を流した。パトロール隊員もその一人だ。荒山師は「レース前の返し馬で、スタンドから『真島~!』、『ララベル~!』という歓声が聞こえてきたんです」と証言する。真島騎手も「本当にファンが多い馬ですね。ずっと応援してもらえて、感謝しています。この子を追いかけてくれたファン、そして遠くまできてくれた出資会員さんたちの存在はありがたかったです」と語る。

競走生活を終えたララベルは2月24日(土)、大井競馬場で行われる予定の引退式を経て、生まれ故郷の北海道へ帰る。当日は直線を軽く走るとのことだ。

「ララベルは恋人というか、僕を育ててくれたパートナーです。本当に感謝しかありません。ゲートの中まで本当におっとりしていて闘争心があるのか分からないのですが、ゲートを切ると真面目に走ってくれる。乗っていて安心する馬なんです。子どもに乗ってみたいですね。ララベルの全てが伝わればいい馬になりますよ。いいお母さんになってほしいです。そしてゆっくり過ごしてほしいですね」。 真島騎手は少し寂しげな表情を浮かべながら、近づく『アイドル』との別れを惜しんだ。

荒山調教師も笑顔で話すものの、その表情はどこか寂しそうだった。「まずはホッとしています。レース前は着順うんぬんでなく無事に、そういう思いで送り出しましたが、いざ現地に来てレースを迎えると勝ちたい、頑張ってくれという思いもありました。中央初G1、自分の管理馬がファンファーレにあわせて出てきて、手に汗が出てきました。ララにはこういう中央の大きな舞台に出れるような元気な子を産んでもらって、また夢を見させて欲しいです」と夢を託した。

約3年半前。大井競馬場でデビューした1頭の栗毛の牝馬。順調に数多くのタイトルを獲得したように見えるが、その裏で、数多くの挫折を経験した。多くの関係者とファンに支えられ、ビッグタイトルを獲得した『魔法少女』ララベルは、今日、国内ダート最高峰の舞台で引退を迎え、新たなステージに足を踏み入れる。

ララベル"