ワグネリアン"

友道師にとっても"衝撃"のデビューを飾ったワグネリアン

●予定通りのローテ「ダービーからの逆算」

週間天気予報の最高気温に20度という文字列が登場してきた今週。中央競馬も3歳トライアルが始まり、クラシックの足音が聞こえてくる。そんなトライアルの中で最も注目を浴びているのが、3月4日(日)に行われる弥生賞(G2)だろう。

当初の想定に名前が載ったのはなんと6頭。1983年以降を見ても、一番頭数が少なかったアグネスタキオンが勝った2001年(8頭)より少なく、弥生賞史上もっとも少頭数で行われるのでは…とも噂されていた。最終的に登録馬は11頭だったが、ここまで増えないのは、やはり「近年最高メンバー」とも言われる出走馬のレベルの高さにあるだろう。

中でも注目されるのは3戦3勝、無敗で朝日杯フューチュリティS(G1)を制したダノンプレミアム。パワフルな走りでまったく底を見せていない。その2歳王者に負けず劣らず高評価を得ているのが、同じく3戦3勝で東京スポーツ杯2歳S(G3)を圧勝したワグネリアン(牡3、栗東・友道厩舎)だ。

東スポ杯2歳Sから3カ月半の休み明けを不安視する声も聞かれるが、管理する友道康夫調教師は「予定通り」と、その声を一蹴する。

「当初からこのローテーションは決まっていました。ダービーから逆算してのローテーションです。今後も色々なことを経験させて、ダービーでもいい走りができるように調整していきたいところです」。

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道悪の野路菊Sを圧勝したワグネリアン

友道厩舎は過去にダービー馬マカヒキを育てた。ワグネリアンも、ダービーという大舞台を見据えている。「マカヒキはこの時期すでにだいぶ完成されていました。ワグネリアンは気性面など、まだ未完成な部分があります。そのぶん伸びしろがあると思いますし、この先が楽しみです」と、偉大な先輩に負けない評価を下している。

弥生賞の大きな注目ポイントは、師の口にする「気性の課題」がどこまで改善されているか、だろう。前走は馬場入り前の地下馬道でテンションが上がり、かなりチャカついていた。友道師は「普段は落ち着いているのですが、トレセンの中でも競馬場でも、馬場入りの時に前向きなところはありますね。新馬の時からあんな感じでした。今の課題はこのような面が少しでも落ち着いてくれることです。ただ東京までの初めての輸送でも、カイバも食べていましたし、体重も4キロ増えていたように、こちらが考えていた他の課題はクリアしてくれたかなと思います」と、手応えを掴んだようだった。

●祖母ブロードアピールには「似てないところばかり」

そんな厩舎のエース候補を初めて見たのは1歳になってからだったという。祖母は芝ダート問わず短距離で豪脚を披露しファンを魅了したブロードアピールだが、「おばあちゃんとは全然似ていませんでしたし、うちの厩舎にいるマカヒキともまたタイプが違いました。身体がコンパクトだったので、お父さんに似たのかなと思いましたね」と振り返る。

上がり3F32.6秒という豪脚で制したデビュー戦も、友道師にとっては"衝撃"だったようだ。「正直、あそこまでいい内容を見せてくれるとは思いませんでしたね。あのレースはヘンリーバローズという評判馬がいたので、どこまで太刀打ちできるかと思っていました」と語った。

2戦目の野路菊Sは雨で馬場も悪く、初戦とはまるで違う条件だった。師も最初は雨でタフになった馬場を心配していたという。「うまくクリアしてくれましたね。あまりノメっていた感じもしませんでした。おばあちゃんのブロードアピールが雨が降った芝もダートも走っていたように、そこが出てくれているのかもしれません」と安堵の表情を浮かべる。

友道師は調教助手時代、ブロードアピールを管理した松田国英厩舎に所属していた。「ブロードアピールにも乗っていましたが、似てないところばかりですね。体型も全然違いますから。終いの脚も含めて(父の)ディープインパクトや(母父の)キングカメハメハの血が出ているのでしょうね」と語るその表情からは、自身が跨った馬の孫ということで思い入れも深さが伝わってくる。

「順調に来ています」。そう笑顔で語る師の視線は弥生賞だけでなく、確実にその先の頂上決戦を見据えていた。