1月28日、セントポーリア賞を制したハッピーグリン"

1月28日、セントポーリア賞を制したハッピーグリン

●同じ府中の芝1800mで中央馬を粉砕!

門別からニューヒーロー誕生だ。1月28日(日)、東京競馬場で行われたセントポーリア賞(芝1800m)。前半1000m通過63.1秒のスローペースを4コーナー10番手から差し切ったのは、門別競馬・田中淳司厩舎所属のハッピーグリン(牡3)だった。抜群の手応えのまま進出すると、上がり3F33.3秒という寒風を切り裂くような鋭い末脚を見せ、鮮やかな勝利だった。

検量室前では関係者が喜びに湧いた。管理する田中淳司調教師はこれがJRA初勝利。「道中スローでしたが、上手く走ってくれましたね。外に出してからの勢いが違っていました。JRA初勝利は嬉しいです。ホっとしています。馬の力のおかげです」と満面の笑み。地方所属とはいえ、生産したのは社台ファーム。吉田照哉代表は「育成時代からいい馬でした。これはクラシックを狙えるのでは……」と、クラシック挑戦も示唆するなど絶賛した。北の地からやってきた『刺客』が、一躍クラシック戦線の主役候補に名乗りをあげた。

地方競馬ファンで、『あの名馬』と姿を重ね合わせる方も多いのではないか。そう、門別競馬・田部厩舎に所属し、皐月賞2着、ジャパンC2着など数々の実績を残しながら、シンガポール国際カップも制した北海道の英雄・コスモバルクだ。コスモバルクが最初に中央競馬でインパクトを与えたのが、東京芝1800mの百日草特別。何の縁か、ハッピーグリンも偉大な先輩と同じ舞台で衝撃を与えた。

ハッピーグリンの中央挑戦はこれが初めてではない。昨年(2017年)の夏、札幌競馬場で行われたコスモス賞、すずらん賞に参戦し、共に3着に食い込んでいる。コスモス賞では後に朝日杯FS(G1)で2着となるステルヴィオと0.2秒差。素質の片鱗を見せていた。田中調教師は言う。

「コスモス賞の時は鞍上も少し仕掛けが早かったかな……と言っていました。身体付きはダート馬ではないですし、血統的にも芝向きだと思います。最近より適性がダートから芝に傾いてきた感じで、自信を持って参戦しました」。

陣営も『勝算アリ』の遠征だったのだ。ただし、一つ不安な要素がある。レース前にゲート入りを嫌ってしまい、これについて発走調教再審査となる可能性があるのだ。再審査となった場合、中央競馬の開催場でゲート試験を行う必要がある。これからは東京、京都、小倉開催となるため、いずれかの競馬場まで行かなければいけない可能性が浮上する。門別からゲート再審査のため再び輸送することは馬にとっても大きな負担となってくるだろう。田中調教師は「JRAさんの判断次第になると思います。今後はその結果を踏まえて考えていきたいです」と語ったが、皐月賞トライアルで門別のニューヒーローの姿を見られることを祈るばかりだ。

●大野騎手も絶賛「前に並ぶ時の脚が速かった」

今回、ハッピーグリンを勝利に導いたのは、デビュー14年目を迎える大野拓弥騎手だった。「ペースが遅かったですが、4コーナーで前に並ぶ時の脚が速かったですね。強かったです」と笑顔で振り返る。2017年は自己最多の年間56勝。1月31日(水)には相棒・サウンドトゥルー(セ8、美浦・高木登厩舎)とのコンビで挑む川崎記念(Jpn1)が控えており、目が離せない存在だ。

サウンドトゥルーは今年8歳を迎えたが、昨年12月の東京大賞典で大野騎手がレース後に「トモの踏み込みが更に良くなっています」と振り返るように、その成長は留まることを知らない。「若いころに比べて硬さも取れてきましたね。サウンドトゥルーには中央や地方の色々な競馬場につれていってもらったので、場慣れと言いますか、色々経験させてもらいました。騎手として成長させてもらったところもあります」と愛馬へ感謝の気持ちを表する。

サウンドトゥルーの他にも、今年10歳を迎える人気者スノードラゴンの主戦も務めるが、ここ最近はセンチュリオンなど追い込み馬での活躍も目立つ。「最近の馬は競走生活が全体的に伸びていますが、スノードラゴンやサウンドトゥルーはうまく走ってくれていると思います。他の追い込み馬に乗る時も、彼らに乗った経験が生かせていると思いますね」と手応えがある様子。「川崎記念は2度挑戦してまだ勝てていないので、今年は勝てればいいと思います。状態もキープできているという話なので楽しみです」と、"三度目の正直"に向けて腕を撫していた。

普段から落ち着いた物腰の大野騎手も、次第にベテランの域が見えてきた。「僕自身は馬の細かなところに気づいて乗れるよう、より上手くなっていければと思います」と今年の目標を語る。門別のニューヒーローと共に飛躍の2018年となるか、楽しみでならない。

1月28日、東京9Rを制したハッピーグリン"

笑顔でハッピーグリンをねぎらう大野拓弥騎手

1月28日、東京9Rを制したハッピーグリン"

ハッピーグリンの勝利に笑顔の田中淳司調教師