レッドイリーゼ

2月3日、春菜賞で3着に敗れたレッドイリーゼ

●松岡「500万は勝ってくれないと困る馬」

先週同様、週中に雪が降って、開催が危ぶまれた今週の東京。2月3日(土)は好天に恵まれ、検量室前は先週と比べて明らかに暖かかった。それでも寒いことに変わりはなく「毛布を持参してくれば良かった……」と思いながら、いつも通り検量室前のパトロールを行っていた。

9R・春菜賞のレース後、検量室前で悔しそうな表情を浮かべていたジョッキーがいた。1番人気で3着に敗れたレッドイリーゼ(牝3、美浦・手塚厩舎)に騎乗した松岡正海騎手である。デビュー2戦目の今回、陣営は京都のエルフィンSで迷った末、輸送のない春菜賞を選択した。

レースは初戦と違い好位で運ぶセンスを見せるも、直線では前を行くアルモニカを捉えきれず、後ろからミュージアムヒルにも差された。松岡騎手は「1400mに対応できるように調教もされてきましたし、競馬もうまくいきました。距離には対応できましたね。身体はちょっと重めでまだまだ余裕があるのですが、それでも500万は勝ってくれないと困る馬だと思っていました。それだけに、今日負けてしまったのは悔しいですね……」と肩を落としていた。

松岡騎手は、デビュー前から素質に惚れ込んでいた。「この馬は、例えるなら軽自動車ではなく、ベンツのような馬なんです。乗り味もいいし、競馬に向かう姿勢もいいし、スピードもあるし」と、高級車に例えて絶賛する。新馬戦を勝った直後には「持っているポテンシャルは相当高い。桜花賞を目標にしている」という言葉が聞こえてきたほどだった。

管理する手塚貴久調教師も「一瞬の切れ味にいいものを感じています。今回は力負けではないと思いますね」と話すように、期待の高さは変わらない。ただ、この一族には特有の気性の難しさがある。母スタイルリスティックは英G1キングジョージを勝ったナサニエルの半姉という良血馬。レッドイリーゼの1歳上の半兄は、昨年のリゲルSを勝ったレッドアンシェル(牡4、栗東・庄野厩舎)。気性の激しさを見せながら重賞戦線で活躍する。

担当する久保智史助手はレッドアンシェルが入厩する前、他の厩舎で兄姉を担当したスタッフに性格面などの話を聞いて回った。「(兄や姉は)人を落としたとか、なかなかいいコメントが聞けませんでした……」と不安になったそうだ。実際、出張馬房のマットをひっくり返したり、道端のカラスを蹴りに行ったりと、やんちゃな面を披露している。

妹のレッドイリーゼも、デビュー戦ではゲートに入るのを嫌がるなど気難しさを出していた。中間の調教にも跨った松岡騎手は「新馬戦はパドックで跨った時などは落ち着いていましたが、ゲートの前で気の悪さを出して嫌がっていましたね。でも厩舎も努力してくれて、ゲートはだいぶ改善されていましたよ」と、課題克服の手応えは掴んだようだ。

●手塚師「まだ桜花賞を諦めていません」

陣営の"教育"が実を結び、レースでは気難しさを見せることはない。「兄や姉の気性が良くないと聞いていたので、新馬の頃から考えながら、手塚先生と相談して調教を進めてきました。競馬では折り合いに関しては特に不安はないんです。イレ込み癖もあったけど、最近ドッシリしてきたし、もう少し長い距離にも対応できますね。身体がもう少しシャープになって、そこに筋肉がついてどしっとしてくればいいですね。今回は負けてしまいましたが、この馬に対する期待の大きさは変わりません」と前を向く。

今回は賞金を加算できなかったが、陣営はクラシックへの出走を狙っている。次走について、手塚調教師は「今のところアネモネSを考えています。まだ桜花賞を諦めていません」と巻き返しを誓った。桜満開の阪神競馬場でレッドイリーゼの鋭い末脚が見られるかどうか、すべてはトライアルでの結果にかかっている。