レイデオロ"

2017年の日本ダービーを制したレイデオロ

●京都記念は「ダービー馬にふさわしい競馬を」

年間を通して競馬と馬に関する特に優れた業績に対してその栄誉を讃え、感謝の意をあらわすために創設されたJRA賞。先日、その授賞式が1月29日(月)に都内のホテルで行われた。年度代表馬のキタサンブラックも大きな注目を浴びたが、それに負けないくらい存在感を見せていたのが、レイデオロで最優秀3歳牡馬を、ソウルスターリングで最優秀3歳牝馬を受賞した藤沢和雄調教師である。

特にレイデオロは、厩舎の悲願だった日本ダービー制覇を成し遂げた。馬の成長に合わせてレースを選んで使うのが方針ということもあり、長らくクラシックタイトル自体に縁がなかったが、日本ダービーはシンボリクリスエス、ゼンノロブロイといった名馬も2着。授賞式後のパーティーで、ついに手に入れたホースマンの憧れのタイトルへの思いを聞くと、いつもの柔らかい笑顔で答えた。

「クリスエスや、ゼンノロブロイで2着だった時は悔しかったですね。ただ、彼らは古馬になってから強くなってくれましたからね。あそこで焦らなかったことが、そういうところに繋がっていったんだと思います」。

レイデオロでダービーを獲った瞬間も、最初に頭をよぎったのは「来年はもっと強くなってもらいたいな」。そんな感覚だったという。期待通りにレイデオロは昨秋、ジャパンカップで古馬の一線級相手に一歩も引かない2着。キタサンブラックが引退した今年、シュヴァルグランと共に日本競馬をリードしていくことが期待されている。

「おじいさんのシンボリクリスエスと同じ最優秀3歳牡馬を獲ることができましたし、ずっと管理させてもらっていた一族の馬で、この先さらに成長しそうな血統の馬なので、期待しています」。言葉の節々からレイデオロへの高い期待度が伝わってくる。

ダービー馬は今週、2月11日(日)の京都記念(G2)で2018年緒戦を迎える。「順調にきていますし、疲れもなくここまで調整を進めることができています。頑張ってくれると思っていますし、ダービー馬にふさわしい競馬をやってもらいたいですね」と、力強く語った。

バルジュー騎手を背に最終追いを行うレイデオロ"

バルジュー騎手を背に最終追いを行うレイデオロ

●『幸せな人が幸せな馬を作る』

どんな時も、藤沢和師はトレードマークの笑顔を崩さない。2月4日(日)の東京競馬場。メインレースの東京新聞杯は3番人気のリスグラシューが鮮やかに差し切った。レース後、検量室前では矢作厩舎の陣営が「長かった……」と、やや涙声になりながら優勝した愛馬を出迎えていた。アルテミスSを圧勝し、クラシック制覇を期待されながらあと一歩という結果が続いていただけに、陣営は何とかこの馬にタイトルをプレゼントしようと、体重やゲートといった問題と向き合ってきた。その苦労がこの一言に込められていたような気がする。

歓喜に湧くリスグラシュー陣営を横目に、2着だったサトノアレスが戻ってきた。メンバー最速の上がりで追い込んだものの、2016年の朝日杯FS(G1)以来のタイトルには届かなかった。関係者の表情には悔しさもにじんでいたが、その中で笑顔だったのが管理する藤沢和師である。目を細めて愛馬を迎えると、検量室内では勝ち馬に騎乗した武豊騎手に冗談を飛ばしながら祝福していた。

競馬が勝負の世界である以上、検量室前は関係者の喜びと悔しさが交じり合う。しかし師は毎回笑顔で馬を迎え、笑顔で馬を讃える。若き日、英国・ニューマーケットで修業中、所属先のプリチャード・ゴードン厩舎の同僚に、ある言葉をかけられた。

『Happy People make Happy Horse』(幸せな人が幸せな馬を作る)。

この言葉を体現し続けている藤沢和雄調教師が率いる厩舎は、今年で開業30周年。クラシック戦線に名乗りを上げている馬もおり、2年連続のダービー制覇も夢ではない。「今年は3歳馬もいい馬が多いですし、いつも以上に、数多く勝ちたいですね」。そう語る調教師は、今日も笑顔で馬を迎え続ける。

1月29日、JRA賞授賞式に出席した藤沢和師ら関係者"

1月29日、JRA賞授賞式に出席した藤沢和師ら関係者