昨夏に独占インタビューへ出演。競馬メディア初となる取材へ快くお答えいただいた「タイセイ」の冠名でお馴染みの田中成奉オーナー。その後も6歳にしてタイセイドリームが新潟ジャンプSを制覇、タイセイサミットがクラシック戦線で奮闘。また、オーナー自身も今年のセレクトセールで1億円超の落札をみせるなど、タイセイの人馬たちが見どころ・聞きどころタップリの活躍をみせている。今年も2年連続となるインタビューで愛馬の近況を余すことなく直撃。この秋はタイセイ軍団の更なる活躍を予感させる逸話ばかりだった。

芝、ダートを経て、遂に障害で開花したタイセイドリーム

-:先日は新潟ジャンプS(JG3)タイセイドリーム(牡6、栗東・矢作厩舎)で優勝、おめでとうございました。

田中成奉オーナー:ありがとうございます。

-:タイセイドリームは芝で準オープンにまで登りつめ、その後はダートでも可能性があるのかと思ったのですが、障害へ転向。しかし、あれよあれよと重賞制覇となりましたね。

田:そうですね。平地では決め手に欠けるところがあったのですが、それでも堅実に走って、準オープンまでは良い走りを続けてくれました。準オープンに上がってからも、すぐにオープンに行ってくれるのではないかと思ったのですが、そこで頭を打ったような感じでしたね。もともと大型馬で、冬だと絞り切れないところがあるのですが、夏場は強いのです。それが、今年に入り、暖かくなってきたのに4~5月の成績が今までの走りではなかったのですよね。「これは今までの感じじゃないな」と。

田中オーナー

▲新潟ジャンプSの優勝レイを背に語る田中成奉オーナー

-:それで障害に矛先を向けたわけですね。

田:ええ、その前から障害の練習は放牧先でしていたのです。6歳になって成績が今ひとつだったので、1回、障害を飛ばしてみよう、と放牧先で練習をしてもらいました。厩舎も(平地で)頭を打つようだったら、と障害転向を考えていましたね。それがレースでも本格的に障害だけにしていったら、こういう結果が出て。

厩務員さんに後から聞いた話なのですが、最初は飛越があまり上手くなかったみたいで、段々と上手になって、レースを使う一戦毎に飛越も安定してきたようです。初障害の時は4着で、初障害というのは不利なわけですから、そこで4着ということはすぐに勝てると。未勝利、オープンと勝って、そのまま3連勝してくれて、底を見せていないので、今後が楽しみですね。これからはもっと強い相手と戦っていかなければいけないのでしょうが、重賞を勝てたので、ひと息入れて、予定的には10月16日の東京(ハイジャンプ)のJG2を予定していますが、それ次第ではおそらく暮れの(中山大障害)。目標的にはそこしかないですね。

-:平地での詰めの甘さが嘘のような成績ですよね。

田:もともと調教も走るし、厩舎サイドも2歳の頃からすごく期待をしていた馬でして、ジョッキーが乗ったら、みんな「乗り心地が良い」と言ってくれていたのです。「何とかこの馬で重賞を獲りたいな」と厩務員さんとずっと言っていて、それが叶い、本当に嬉しい気持ちですね。私も厩務員さんも大喜びしていました。

ただ、今までは置き障害しか経験がないというか、中山はどうか、という課題はありますが、そこへ向けて挑むしかないですからね。ジョッキーも「この間は勝つには勝ったが、ちょっと気を抜くようなところがあるので、中山とかで使うのならば、もうちょっと練習した方が良い」とは言っていました。いずれにしても、それは厩舎やジョッキーで考えてやってくれると思うので。

-:平地時代もちょっと気を抜くというか、ズルさがあるようなタイプでしたものね。

田:そうですね。掛かるところがなく、逆に気を抜くのか分からないですが、難しさもありますよね。掛かるところがないから長い距離が良いのかと思ったら、長い距離には興味がないようだし、短距離の1400~マイルくらいを使ってみたり、色々試し、どれもソコソコは走るのですが、どこが一番良いかというのはちょっと掴み辛いというか……。

田中オーナー

-:ちなみに、矢作先生もこの夏に体調を崩されたそうでした。そのタイミングで重賞を勝たれたというのは、先生にとっても嬉しい知らせになったのではないでしょうか。

田:矢作先生はリーディングですし、重賞も一杯獲っていますから、そこまで喜んでいただけたか、分かりませんが、タイミング的にはちょうどご病気にかかられていて……。しかし、電話でしか話をしていないのですが、経過は順調で、仕事にも復帰しているみたいなので。スタッフの話を聞いても、大丈夫そうなことも耳にしているので、安心していますね。まだまだ頑張ってもらわないと困っちゃいますからね。

-:改めて所有馬の預託先を見ると、やっぱり矢作先生が多いですね。

田:そうですね。毎年、新馬もけっこう入れてもらっていますからね。

-:そして、オーナー自身は意外にもJRAの重賞では久々です。まだまだこれから、セレクトで買われた馬を筆頭に可能性大だと思うので、色々な意味で可能性が広がっていくキッカケになるのかと思います。

田: (2008年、ガーネットSのタイセイ)アトム以来ですかね。そうですね。特に、これから2歳馬がデビューなので。夏場は休んでいる馬も多いですし、そういう時に走ってくれる馬が活躍してくれると、助かると言えば助かりますよね。

田中成奉オーナーSPインタビュー(2ページ)
「年内残り3ヶ月を湧かせる現役馬たち」はコチラ⇒