苦しくも楽しい馬主ライフ

水:でも馬主さんになると、趣味とばかりは言ってられないですよね。いろいろ切実だったりもしますから・・・・。

佐:実際、持ってみたらそうですね。

水:馬主さんになってみて、大変だなというのはどのような部分ですか。

佐:当然ながら、やっぱりお金はかかりますけれど・・・それよりもレースが終わった後、調教師さんが連絡をくれるのですが、常に状態の心配をしますし、メンタル的な部分もありますよ。変な時間に調教師さんや牧場から電話があるとドキッとするんですよ。“どこかやったか”とか変に勘ぐってしまって。

水:故障を聞かされる時は辛いでしょうねえ・・・・。

佐:それが一番嫌ですね。まだ私の場合は、これまで幸い治る骨折くらいで、そんなに大きな故障はありませんが、レースの時もまずは無事であることを祈っています。

水:そういった、日々ハラハラするようなこともありつつ、馬主さんとしての喜びもあるわけですよね。

佐:勝った時はもちろんなんですが、僕の場合は、走るまでの過程が楽しいんです。

水:えっ、走るまでの過程ですか。それは意外でした。

佐:当歳で買った馬がどう成長していくか、北海道の牧場まで過程を見に行くのが大好きなんです。競馬場で走るのもいいですが、未来を想像しながら成長を見ていくのはたまらないです。

水:それは想像していなかったことです。本当に馬がお好きなんですね。

佐:一日中見ていても飽きませんよ。

水:馬主さんになるべくしてなったという感じですね。もし野球の世界に入っていなかったら、調教師さんを目指したのかもしれません。

佐:いいですねー。でも僕の場合、もう少し口がうまくならないと(笑)。

水:関西圏のほうが出走は多いですが、愛馬が走られる際は競馬場まで足を運ぶのでしょうか。

佐:仕事さえなければ必ず行きます。

水:その時に愛馬の馬券は買われますか?

佐:買います。以前ほど買わなくなりましたが…。それと言うのも、あまり買った時に走ってくれたイメージがないんです。だから単勝・複勝、2万ずつと決めているんです。理由はもうお分かりですよね(背番号が22番だった)?

水:そうでしたか(笑)。結構、勝負になりそうな時は絶叫されるタイプですか?

佐:僕よりも女房(榎本加奈子さん)のほうが凄いですよ。

水:あの細い体で…(笑)。 あと、馬主さんといえば馬名を決める楽しみというのもあると思いますがいかがですか?

佐:苦労しています。決めたつもりの名前でも結構被りが多いんですよ。本当は冠名があったほうがつけやすいんですが、もうマジンはいいかなと思って。去年(ファルスター)からつけてないんです。ネットで入念に調べて馬名申請の連絡するじゃないですか。それでも『この名前は地方にいます』とか言われちゃうんですよ(笑)。

水:今後の候補とかはあるんですか?

佐:まず顔を見てからでないとイメージが湧かないから・・・。あと、今年デビューさせる馬に“ヴをつけろ”というのは女房の指令ですけどね。走る馬はみんなそうだと。ヴィクトワールピサとかエアグルーヴ、ネオユニヴァースとか。2歳馬で持っているヴィルシーナとスペルヴィアはそれでですよ。

水:奥様もかなり理解があるのですね。

佐:最近ありますね。こないだプロスパーが勝ってから(笑)。勝てなくて一度地方に出した時に『絶対走るから戻すぞ』と説得したんですよ。それで中央で勝ったら『この馬かっこいい』って。女の子というのは面白いです。数日後に賞金を当て込んで(笑)、新しいテーブルに変わっていましたよ。 僕もうれしくて、何回でもレースのDVDを見てしまうのですが…。勝ったレースを見るのは楽ですし、安心します(笑)。

佐々木主浩氏の個人所有馬一覧(2011年7月24日時点、JRAのみ)
馬名 性齢、所属 JRA成績
アドマイヤマジン (牡7、栗東・松田博) 5-1-2-14/22 フジキセキ マイワイルドローズ
キャプテンマジン (牡6、栗東・中尾秀) 4-1-3-22/30 キャプテンスティーヴ リキアイワンダー
マジンプロスパー (牡4、栗東・中尾秀) 3-0-2-4/ 9 アドマイヤコジーン ハリウッドドリーム
ヴィルシーナ (牝2、栗東・友道) デビュー前 ディープインパクト ハルーワスウィート
スペルヴィア (牡2、栗東・橋田) デビュー前 シンボリクリスエス フサイチパンドラ
グレイスファミリー (牝、抹消) 0-0-1-7/ 8 タニノギムレット ラトラヴィアータ
ファルスター (牡、抹消) 0-0-0-1/ 1 ダンスインザダーク ハルーワスウィート
プレジャーマジン (セン、抹消) 0-0-0-4/ 4 ダンスインザダーク アヴェニューズレディ

【Memo】対談が公開されたばかり、7月23日の瀬田特別をマジンプロスパーが快勝。再度の準オープン入りを決めた。また、佐々木氏が個人的に思い入れの強い、ハルーワスウィートの仔・ヴィルシーナは、8月28日の札幌新馬でデビュー予定。G1馬・フサイチパンドラの初仔であるスペルヴィアと共に、今年の2歳馬は特に良血馬を揃えており、更なる期待が集まる。