初めての個人所有馬ジャスタウェイがレーティング世界No.1の評価を獲得し、種牡馬に。
人並み外れた馬運の持ち主が脚本家という本業のキャリアを活かし、馬主ライフを書き下ろします。
「ダービー当日の空気」
2014/5/25(日)
ダービー当日の空気
皆さんこんにちは、ライターの大和屋です。競馬ラボさんに軽い気持ちでなんか書かせてと頼んでみたら二つ返事でオッケーとのことで実現したこの企画(世の中口に出して言ってみるものですね)。馬主兼ライターというなかなか珍しい経歴の持ち主ですので、それを活かして人とは違った軽い目線で皆さんに楽しんでいただけるよう努力しますので今後ともよろしくお願いします。とまあそんな感じのグダグダ企画、しばしの間おつきあい下さい。
記念すべき最初の記事。何を書こうかと思い悩んでみましたが、時期が時期なのでダービーについて書こうかと思います。ダービーといえば、競馬関係者にとって特別な日、三年前に生まれた全ての馬の最高峰を決めるレースで出走するだけで名誉なことと言われています。本当に僕もそう思いますし二年前のダービー当日、うちの仔も一応出走していたりしたんです。“一応”ですけど。
ジャスタウェイのダービーは僕がわがままを言って出走させてもらいました。NHKマイルカップからの中2週での出走でしたし、マイラーだろうと思われていたことで単勝100倍を超えるオッズ。世の中の人達にはどうせ記念出走だろ?と思われていたようです。本人的にはそんなことはないと思ってはいたのですが(ハーツクライの子供だしとかハーツクライの子供だしとか……)、結果は惨敗11着。記念と言われても返す言葉がありません。それに実際いい記念になりました。
一昨年のダービー当日は思いのほか緊張感もなく、むしろワクワクしていたような気がします。ダービーという特別なイベントに自分も参加できるのが嬉しかったんでしょう(記念出走的な気分になっていたのもあるのかもしれない)。いつもより人が多い競馬場を見ればテンションがあがる。馬主席の中も人でいっぱい、華やかなお祭り気分が伝わってくる。ですがその中でただ一か所、出走馬主席は例外でした。
出走馬主席というのは言葉の通り、メインレースに馬を出走させる馬主さんとその関係者だけが入れる特別な場所で、いつも空気がピリピリ張りつめています。ダービー当日はそのピリピリした空気がいつも以上だったように感じられました。ゆったりとしたスペースで四人掛けの丸テーブルがあり、一頭の馬ごとに一つのテーブルが提供されます。僕はあそこにいくといつも激しく緊張するので急いで酔っ払って大半は他の所をうろうろしてます。だって考えてみてください。
出走馬主席にいる馬主さんは皆メインレースの出走馬を所有していて同じレースが勝負レース。そこで勝てるのはただ一人だけ、喜びを爆発させるのは一つのテーブルの関係者のみ。他の馬主さん達は皆肩を落として帰ることになるんですからギスギスするのは当然です。まあだからこそぴりぴりした空気になるのだし、勝った時の喜びは格別なものになるんですが……。
G1の時にしか入れないパドックの内側も他のG1の時以上の人数と華やかさ。大きな帽子をかぶった女性の姿もちらほら見えて、特別感を感じます。周囲にいるファンの皆さんも凄い人数でした。
レース結果は声を出すチャンスもないぐらいの物でしたが、ダービーデイを一日まるまる本当に楽しめました。その時感じた空気感はやはり特別なものだったと思います。いつの日かまたあの舞台に立てるような馬を持てたらいい。その時は記念ではなくもっと緊張した状態で参加できればなおいいのですが。
とまあそんなこんなでもうすぐダービーです。酔った勢いで引き受けたダービー特集のニコ生にも出演します。生安藤さんを楽しみにしつつ、余計な事は言わないように気を付けようと思ってます。今年のダービー、個人的には橋口先生の悲願達成を期待しています。では皆さん、一年一度のダービーウィークを思いっきり楽しみましょう。
はみだしジャスタウェイ情報
今年のセレクトセールのポスターがジャスタウェイです。でっかいポスターにどどんとジャスが映ってます。それから競馬列伝のポスターを作っていただけることになりました。どんなコピーか今から楽しみです。プロフィール
大和屋 暁 - Akatsuki Yamatoya
脚本家・作詞家・ライター。若くして一口馬主に出資を始め、クラブ馬主歴2年目にハーツクライと運命的な出会いを果たすと、有馬記念、ドバイシーマクラシックを制す大活躍。しかし、ノド鳴りによるアクシデントに見まわれ、突如として引退したことに一念発起、馬主になる決心を固めた。個人馬主としては、初めてデビューを果たした所有馬ジャスタウェイが大活躍の強運ぶりを発揮。遂には、目標であったドバイ遠征を実現させ、ドバイデューティーフリー(現在のドバイターフ)を圧勝。「自らの馬でドバイを勝つという」夢を実現させたばかりでなく、そのパフォーマンスが評価され、2014年度のワールドベストレースホースランキングでは、日本馬史上初の1位を獲得している。
現在の現役所有馬はカリボール、マジカルステージ、ジャスコ、キングロコマイカイ。一口馬主や共有馬ではアウィルアウェイ、ルーツドール、イストワールファムなどに出資している。
本業ではアニメ版「銀魂」、「スーパー戦隊シリーズ」などの脚本を手がけ、2020年公開の映画「デジモンアドベンチャー」も担当。愛馬との数年間に及ぶ足跡を綿密に綴った『ジャスタウェイな本』などの執筆も手がけた。