第93回凱旋門賞直前展望[和田栄司]

金曜の朝にレイトデクラレーションが締め切られ、12万ユーロの追加登録料を払ってバリードイルの3頭目タペストリーが出走を正式に決め、今年の凱旋門賞はフルゲートの20頭立てで行なわれる。エクトーは僚馬モンヴィロンをペースメーカーに使う。そのモンヴィロンは11番枠、2番手が予想されるルーラーオブザワールドが6番枠なら、予想通りの展開で進むだろう。

凱旋門賞の近10年の勝馬は8頭が3歳馬、内3頭が3歳牝馬、また最近の3年間は牝馬が連勝している。古馬に比べて3.5キロ減の斤量、しかも牝馬は牡馬に比べて1.5キロ減、3歳牡馬56キロに対し3歳牝馬54.5キロである。更に今年はキングジョージを筆頭に、早い段階から3歳馬が古馬を席巻した。シーズン最後に組まれた最高峰の凱旋門賞も例外ではないだろう。

◎にはペースメーカーを使うエクトーを推す。4月のG3フォンテーヌブロー賞から長いレイオフを経て、前走G2ニエル賞で残り400mから200mまで10秒台の切れのいい脚を見せた。マイル以上の距離は使ったことがなかったのに、初めての2400mでハイレベルの順応性を見せた。グレゴリー・ブノワ騎手自身のお手馬モンヴィロンの逃げを中団の後ろから、早めに動いて直線勝負をかけると見た。

○には4歳牡馬のルーラーオブザワールドを抜擢する。昨年のダービー馬は去年の凱旋門賞が7着。しかし、今年はドバイWCで13着に敗れた後、前走G2フォワ賞を逃げ切るまで長いレイオフを経験、この間にクールモアからカタールのアルシャカブレーシングが権利の半分を獲得した。とにかくフレッシュな状態で鞍上もフランキー・デットーリ騎手と文句ない。

▲は一番遅くエントリーしたバリードイルのタペストリー。運も味方した。テレスコープの回避で騎乗馬がいなくなったライアン・ムーア騎手が空いていたからだ。ガリレオ産駒の3歳牝馬は、1000ギニー17着の後、ロイヤルアスコットのコロネーションSでも6着に敗れた。しかしその後、愛オークスで2着、ヨークシャーオークスではキングジョージを勝って来たオークス馬タグルーダを破った。

前走カラ競馬場のG1メイトロンSでは進路を塞がれ、走る気を失くしたのかジョセフ・オブライエン騎手も最後は追わず9着に敗れた。元々マイルの馬ではなく2400mの方が合っているのは成績を見ても一目瞭然である。バリードイルもそれに気が付いたのではないだろうか。わざわざ約1680万円の追加登録料を払ってまで出走してくるのにはそれなりの打算があって当然だ。

△はタグルーダ、アヴェニールセルタン、ジャスタウェイの順にした。タグルーダはセントレジャー馬キングストンヒルと同様初めての海外遠征が気になる。アヴェニールセルタンは1番枠では後ろで器用な脚が使えるか心配。最初は8月のG2ノネット賞を勝った段階で真っ先に凱旋門賞出走を決めただけに、対抗まで考えた。しかし、枠順発表で評価を一気に下げた。

ジャスタウェイは、安田記念から119日目のレース。近代競馬の凱旋門賞の歴史の中でもこんなスケジュールで臨んだ馬はいない。しかし、ドバイデューティーフリーで圧勝、安田記念でのエキサイティングなレース振りを目の当たりにしては、世界最高レーティングの馬に失礼、という意味で△を付けさせて貰った。やはり日本馬の中では1番期待が出来る。

14番枠のジャスタウェイは中団の後ろ、12番枠のハープスターは後方、そして2番枠を引いたゴールドシップには是非宝塚記念のように前々で競馬をして貰いたい。幸い日曜日の馬場はボン(良)表示が予想されている。ルーラーオブザワールドの後ろは2列の流れが予想されるだけに、今年は前にいる方が好結果につながるような気がしてならない。

【凱旋門賞】
◎エクトー
○ルーラーオブザワールド
▲タペストリー
△タグルーダ
△アヴェニールセルタン
△ジャスタウェイ


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。