香港G1馬のサトノクラウンが58キロで堂々の連覇!!【平林雅芳の目】

サトノクラウン

17年2/12(日)2回京都6日目11R 第110回京都記念(G2)(芝外2200m)

  • サトノクラウン
  • (牡5、美浦・堀厩舎)
  • 父:Marju
  • 母:ジョコンダ2
  • 母父:Rossini

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終わってみれば、海外遠征の3頭の上位独占。それも、かの地で残した実績どおりの着順と言っては失礼だろうか。香港ヴァースでG1初制覇をしたサトノクラウンが勝利し、そこで5着だったスマートレイアーが2着。そして凱旋門賞で14着だったマカヒキが3着と、そこだけ見れば順当な結果なのか知れない(?)。
だが、4歳となったダービー馬のマカヒキに期待度が集中するのは当然。馬場が確かに緩かったかも知れない。だがその条件はどの馬も一緒、惜しいと言える様な内容でなかった脚色とあの凱旋門賞の負けといい、《マカヒキは本当に大丈夫なの?》と思わず問いたくなるようなゴール前なのであった…。

ヤマカツライデンの単騎逃げは、誰の目にも判る事実。ただそれでいても展開有利、一人旅で逃げ切るとは思えない。阪神大賞典での負けよりも、前走の日経新春杯での負けがちと淡泊過ぎるきらいもあった。自身の太目と道中早めに来られて息が入らない流れになったにしろの、最後であった。
問題はヤマカツライデンの逃げを使って道中好位に取り付いて脚を残して来れるか、それがどの馬なのかの読み合いの戦いかと思っていた。スマートレイアーの先手も過去にあったが、この距離では何とも言えない。ミッキーロケットの先行策も、当然に読まれるところ。少なくともマカヒキよりも前でレースをするのだろうと思っていた。

それがスタートの一瞬で、その読みが外れてしまう。ミッキーロケットは、ヨッコラショと言う感じでのスタートで出た瞬間に最後方となり、和田Jはすぐに内へと馬首を向けてく。サトノクラウンが、いいスタートを切って前へとつける。スマートレイアーも続く。外からガリバルディが出ていって、前のグループを形成する。マカヒキはスマートレイアーのちょっと後ろの5番手で、ゴール前を通過。
ヤマカツライデンが徐々に差を広げていく1コーナーと2コーナーの間、2番手に外からガリバルディが上がる。ミッキーロケットは後ろから3頭目のラチ沿いだ。2番手ガリバルディが前との差を縮めていったのが1000m通過のあたり。それでもヤマカツライデンとの差は5馬身ぐらいで、3番手サトノクラウンには7馬身ぐらい置き去りにしていった。1.00.2のペースは遅くはないし、速過ぎる流れでもない。

坂の頂上を過ぎるあたりで、2番手ガリバルディは3馬身から2馬身とさらに差を縮めていく。後ろには8馬身ぐらい差を開けた。さすがに川田だな・・と、この積極策は勝機もあるのではと一瞬思えたものでもある。
坂を下って行く時にミッキーロケットの位置と前からの間隔が判る、前に僚馬のアクションスターがいてまだ手応えもあるだけに、それを抜いて前にも行けなさそうである。届かないだろうなと思える。3番手を進むサトノクラウンのMデムーロが、やや追いながら前を追っていく。その差がみるみる縮まっていく。サトノクラウンの後ろでは、スマートレイアーとマカヒキが並んでまだ手は動いていない。各馬が内目を通ってきているのが判る。そして各馬が直線へと入ってきた。

一番内へ入るヤマカツライデン。その外へガリバルディ。ちょっと間を開けて外へ進路をとったサトノクラウンでその開いた間に白い馬体が入ってくる、スマートレイアーだ。マカヒキはサトノクラウンの外、半馬身近いところまで来ている。
ラスト300を待たずして、皆が仕掛けだしている。ラスト200mを過ぎていた。アングライフェンにミッキーロケットも加わった外の5頭が、内の先行する2頭を抜いた様だ。サトノクウラウンが僅かに先頭の様であるが、外のマカヒキが並んだかに見えた。内から白い馬体も負けじと伸び出している。ゴールが近づいてサトノクラウンがまた伸び始めて、体ひとつ前へと出だす。内からスマートレイアーが出て、マカヒキが遅れ始める。ミッキーロケット、アングライフェンと続いてゴールへと入った。

火曜朝の坂路、先に来た音無師には『どうしたの?、ゲートは?』と訊いた。そこは気心の知れたオトちゃんだけに、『頼むよ、ワダちゃん!』と見事な切り返しで応えてくれる。加えて、『ちゃんと出ていたらマカヒキを負かしていたかも知れないね~』まで言ってくれる。
いつもどおりの時間で来た友道師に、部屋の空気が替わる。だいぶ室内の温度になじんできた頃合いに師に訊く。《やはり馬場ですか?》と。とても凱旋門賞といい今回といいマカヒキはどうしたんですか、なんてことは口に出せない。『エエ、ジョッキーもそう言ってましたね』と、慎重に応える友道師。加えて『4角に入る時はいい感じで来てたとも言ってました。直線半ばまでは、勝とうかの勢いでしたしね・・』と締めてくれた。
傍で音無師が、『大阪杯は誰が乗るんや~・・』と尋ねる。新聞にはルメールで出ていたのにな~、なんて事は口にも出せない。当然にその名が友道師から出てくる。

海外帰りの馬の3頭でも、前走から今回までの期間の短い馬が上位に来たと言う事。それではいけないのだろうが、そんな結果である。そして言い方は悪いのかも知れないが、ここが本番ではないと言う事であろうか。最大目標であるところへ段階を経て仕上げていく。それを資質が上廻り、結果を出してしまう馬がいる。そんなスーパーホースのイメージばかりで観てばかりではいけないと言う事なのかも知れない。

今回のマカヒキは勝っても当然だろうが、負けても不思議でないと思っている者が多かったかも知れない。また香港でしっかりと結果を出したサトノクラウンを、ちと低評価していたのかも知れない。昨年のこのレースでは56キロだったが、G1馬となった今回は58キロでの出走。それでいて、一番早く勝負に出て行った4角手前からのスパート。最後はやや流し気味ぐらいの感覚ではなかっただろうか。
そして2着のスマートレイアー。この後はオーストラリアに参戦の様である。そんなにもう何度も走れる姿を見られない年齢になってきている。まだ古馬も元気一杯なのである・・。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。