3歳馬、モズカッチャンが古馬を抑えて初戴冠!【平林雅芳の目】

モズカッチャン

17年11/12(日)5回京都4日目11R 第42回エリザベス女王杯(G1)(芝2200m)

  • モズカッチャン
  • (牝3、栗東・鮫島厩舎)
  • 父:ハービンジャー
  • 母:サイトディーラー
  • 母父:キングカメハメハ

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少しだけ肌寒いが、秋の日差しを浴びるなかのスタンド前からスタートの、エリザベス女王杯。豪華な顔ぶれで、馬券的にも面白い一戦。そんな期待感で溢れる大勢の視線のなかで始まった。
人気の中心のヴイブロスの位置を確認する。好位につけて行くが、肝心の直線で弾けない。その少し前にいたクロコスミアが抜けだしたところへ、これまた内で脚を貯めていたモズカッチャンが一気に伸びて交わしての勝利。ミッキークイーンがいい脚で外から脚を伸ばしてきたが3着まで。
またまたMデムーロ騎手の勝利であり、Rムーア騎手騎乗のルージュバックは伸びあぐねて9着で終わった…。

調教中のアクシデントで脚を痛めた武豊騎手。騎乗予定だったスマートレイアーのG1初勝利のチャンスがあっただけに、悔しかったと思う。家でTV観戦も面白くないので、朝からいつもの如く競馬場へとやってきた。女性ファンが多い京都競馬場。いつもより華やいでいた。売店も行列が長い。それも男性が多く感じたのは、一緒に来ている女性陣のための行動だろうと思える。食べ物にありつけないのが困る。
長い時間を経てやっとパドックに馬が入場。今回は馬体中の増減が少ない。このクラスの馬だけに、牝馬でも落ち着いている。特にスマートレイアー。以前はうるさい仕草だったが、やんちゃ娘が大人になって堂々と周回している。リスグラシューも気になる。あれだけ時計を出しているのに、馬体が増えている。いつも腹目があがり気味の馬も、今日は気にならない。気配はクロコスミアがいい。

馬場入場と返し馬を見たいが、スタンドのコース側が日向でもあり人が多く、また最近の若者は背が高いだけに、後ろからでは人の背中を見る様なもの。なかなか全体像が見られない。隙間からチラっと見れる雰囲気だけだった。
レースはどうしても見たいからと、いつものウイナーズサークル傍のテント内から観戦する。見渡すテラスは人、人、人で埋まっている。女性客が多いせいか、今日の手拍子は大人しめだ。

ゲートが開いた。スマートレイアーもいいスタートを切れたと確認する。クロコスミアが出る、と、最内のクインズミラーグロが押して押して出て行った。この馬、パドックで綺麗なリボンで鬣を編んで貰っていた馬である。先手を主張するとは意外でもあった。クロコスミアが2番手。ヴィブロスは前にマキシマムドパリを置いての絶好位の4番手外めだ。その後ろにモズカッチャン。そしスマートレイアーがそれをマークするかの様に、すぐ真横にいた。

逃げるクインズミラーグロに2馬身ないぐらいで、後ろをクロコスミア。そこから3馬身ぐらい開いて後続でゆったりと進んで行く。
向こう正面を過ぎ、山の下りにかかるまではそう動きもない。3番手のクインズミラーグロ以下が前との差を詰めて坂の下りに入ってきた。ラスト600のハロン棒を過ぎて前と後ろの馬との差がかなり少なくなってきた。2番手のクロコスミアがクインズミラーグロの横に出して、手綱を引いたまま最後のカーブに入ってきた。

坂の下りでもペースが上がらないから、内の馬が窮屈になっていく感じである。スマートレイアーを中心に見ているだけに、その下りでいた位置が先ほどよりも悪くなっているのが判る。付いていけないのだろうか。前にいたヴイブロスからも少し離れてしまう。
そして直線へと入ってきた。スマートレイアーの動きがもどかしい。ヴイブロスも直線で馬場の真ん中の方へ進路を選んだが、そこでも伸びの鋭さが出ない。視線を切り替えると、すでに前ではクロコスミアとモズカッチャンが凌ぎ合っているところ。そこへミッキークイーンだけが鋭い伸びを見せて迫っていく。他の馬の伸びはもうひとつ、3頭の接戦だが内2頭の決着で、モズカッチャンの勢いが勝っていた。

後でビデオを見ると、直線入口を廻ってクロコスミアが先頭に立った瞬間に、モズカッチャンが進路をそのクロコスミアの真後ろに出そうとする。その時に前にいたマキシマムドパリが頑張っているのですぐには抜けない。ラスト200を過ぎてもMデムーロ騎手がステッキを入れて押しているのに、マキシマムドパリを抜けない。その間にクロコスミアはどんどんと前へ行ってしまっている。
Mデムーロ騎手がステッキを左に持ち替えて、大きく左臀部へと数度打つ。そこから進撃が始まって、勢いづいた後は手綱を押すMデムーロ騎手。そのアクションでクビをグイッと出したところがゴールで、外からミッキークイーンの浜中騎手も内のクロコスミアの和田騎手も、体を低く手を大きく前に出して《馬よ、伸びてくれ!》とばかりに追う姿であった。クビ・アタマの僅差の決着であった。

ほとんどの馬が検量室前の枠場に入ったり下馬して引き上げて行くのに、まだMデムーロ騎手とモズカッチャンは帰ってこない。やっと両手を広げたポーズで姿を現した鞍上のMデムーロ騎手に、場内がやんややんやの喝采である。それに応えるMデムーロ騎手。
かくして今年の女王決定戦もミルコのものであった。秋華賞では4コーナーから早めに押し切るかの様に進出。一旦は楽勝かのリードだったが、最後はリスグラシューにも差されての3着。しかしあの時は落鉄していたそうだ。ヴイブロスにルージュバックは外枠を引いた。良馬場ならなお内目がいいはず。内で脚を貯められる馬が優位と思っていたが、ここまで楽な展開で前残りの流れになるとは、であった。

鮫島調教師が初G1勝利だそうだ。それも62戦目の挑戦でついに手に入れた。最近は頓に重賞挑戦の多い厩舎でもあり、ついに悲願を達成なされた。同じ3歳馬であるリスグラシューは8着、秋華賞を勝利したディアドラは12着であった。決して体調面は悪くないとパドックで感じた両馬であったが、目に見えない疲れでもあったのだろうか。と、言っても同じ3歳馬のモズカッチャンが勝った。歴戦続きなのは同じである。馬は1頭1頭が当然に別なもの。それが個性であり、特色なのであるから。
競馬のセオリーどおりに、内で脚を貯められる馬の勝利。終わってみれば簡単なことなのだが、それをちゃんとシミレーション出来るか否かで、馬券の行方が違ってしまうのである。今回も終わってみれば、本当に難しい一戦だったと思える。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。