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戻ってこない内田博騎手が見せていた「男気」とは…こちら検量室前派出所(仮)
2017/11/16(木)
爽やかな晴天に恵まれた先週土曜(11月11日)の東京競馬場。お約束のように場内でうどんを食べていると、偶然、某競馬新聞社でトラックマンとして活躍している後輩と遭遇した。聞けば、今日は休みだそう。この業界で働く人間にとって、土日の休みは実に貴重。「代わりに俺が休んでやるからさ」と"交渉"したが、後輩は笑いながら行ってしまった。血も涙もない男である。
そんな話は本当にどうでもいいのだが、検量室前に向かうと、ちょうど6R・2歳新馬の出走馬たちが地下馬道を歩いているところだった。ここ最近の評判も良かったバトルマイスター(POGの指名馬)がV.シュミノー騎手騎乗で出走するだけに、個人的に少し楽しみにしていたレースである。
しかし、勝ったのは1番人気のスウィングビート(牡2、美浦・加藤征厩舎)。一瞬詰まりかけるシーンはあったが、そんなの関係ないと言わんばかりの完勝。バトルマイスターは残り200mから勝ち馬と併せ馬の形になり、2頭で一気に後続を突き放して3着馬に1.8秒の大差を付けるも、2着に敗れてしまった。いかん、さすがにこれは相手が悪かった……。
スウィングビートに騎乗した内田博幸騎手は「追い切りに乗って、いい馬だということは分かっていました。今後も楽しみです」と笑顔で称賛する。追い切りでは先行したとはいえ、厩舎の大将格であるノンコノユメに先着した脚力は本物だった。
この言葉にはちょっとした裏話がある。各雑誌やスポーツ紙にも今回のコメントが載っているが、実は走る内田博騎手を各記者が追いかけながら聞いたものである。
このレースでJRA通算1100勝を達成した内田博騎手は、優勝馬口取りが終わった後セレモニーにも臨んだ。通常、口取りや表彰式に参加した騎手は次のレースに騎乗馬がいる場合、走って検量室に戻ってくる。すぐに次の騎乗馬が地下馬道にやってくるからだ。それだけでもギリギリなのに、今回は記念のセレモニーもあった。時間的にかなりタイトである。
しかし、ジョッキーが検量室前に戻ってこない……。記者たちもザワつき始める中、ようやく帰ってきた頃には次のレースで騎乗するアオイシンゴが地下馬道に入ってこようとしている時だった。これにより、走りながらコメントを聞くという状況が生まれたのである。
どうやら1100勝セレモニーの後に、ウィナーズサークルに集まっていたファンにサインをしていたようだ。制限時間ギリギリまでファンサービスに徹するあたりが、実に内田博騎手らしい。
普段、検量室前でレース後のコメントを各騎手に聞くが、内田博騎手の受け答えは特に丁寧で、分かりやすい。レースのコメントだけでなく、「(馬の)将来を考えたからこうした」など、細かい点についても話してくれる。もちろん、どの騎手の方々もそうなのだが、内田博騎手の目線は常に馬とファンに向いているように感じる。馬とファンを大切にするこの姿勢は、真のプロフェッショナルと言ってもいいだろう。こちらも内田博騎手の思いを汲み取って、できる限り正確に、コメントなどの情報を伝えていこうと改めて思った次第だ。
「勝った馬が強すぎます。反則みたいな強さです」。そう言いながら検量室に戻ってきたのは、惜敗したバトルマイスターに騎乗したシュミノー騎手。管理する手塚調教師も、勝ち馬のあまりの強さに苦笑いを浮かべた。そして「4コーナーの勝ち馬の手応え、あれはもの凄かったなぁ!」と、ほぼ同じポジションにいた松岡正海騎手も興奮気味にレースを振り返っていた。
スウィングビートを管理する加藤征弘調教師は「調教の動きも良かったし、外に出せば伸びると思っていた」と自信があったようだ。注目の次走は、一度放牧に出した後、年明けになるとのこと。
ちなみに、今回のスウィングビート1着で、外国産のタピット産駒は東京ダート1600mで[12-4-3-25]の勝率27.3%、複勝率43.2%となった。条件戦に限れば[10-3-2-8]で勝率43.5%、複勝率65.2%。1番人気に限れば7戦7連対という、これまた反則のような好成績である。
そろそろタピット産駒が東京ダート1600mで独占禁止法に引っ掛からないか心配になったパトロール隊員であった。
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