「気が強い馬だから、(馬房の)前にいたら、跳び掛かってくる時があるので気を付けて下さいね」

クラシック開幕を3日後に控えた栗東トレセン。桜花賞(G1)に出走するシゲルピンクダイヤ(牝3、栗東・渡辺厩舎)を尋ねると、担当の上浜智幸調教助手にこう注意を促された。確かに、馬房から距離をとっていても、周囲を警戒するように耳を絞る様子が窺える上、獣医の方が近付こうものなら、噛み付こうとするほど。翌日の運動でも尻っ跳ねをしているところを目にした。

シゲルピンクダイヤ

「人に反抗的ということではないのですが、とにかく自分の世界があるんです。人間でいえば、お嬢様…有名人でいえば、エリカ様かな(笑)。とにかく気が強い。全く触らせないかというと全然そんなことはないんですよ。体にブラシをかけさせてくれる。でも、『ああしろ、こうしろ』としつけられ過ぎると反抗的になりますね」

女王たるに相応しい?我の強さをみせるシゲルピンクダイヤは2017年の北海道セレクションセールにて1728万円で落札されると、昨年10月13日の京都芝1600m戦でデビュー。道中は3番手に位置していたものの、勝負どころで逃げ馬が突如として後退し、煽りを食う形ながら、3着まで盛り返す走り。早速、初勝利へメドがつく走りをみせた。更に秀逸だったのが、続く11月3日の未勝利戦(京都芝1600m)。ラスト3Fが11.9-11.8-11.4秒の加速ラップを抜け出し勝利。それも上がり最速で制した走りに、将来を期待した人は僕だけではないだろう。

シゲルピンクダイヤ

「追い切りを始めてから、評価が上がっていきましたね。厩舎のスタッフたちが『悪くない、悪くない』と言っていたんですけど、追い切りを重ねるごとに本当に走るかも、という評価に変わっていったことを覚えています。反応も良いですし、終いも良い時計が出ていて、『新馬でも良いところがあるんちゃう』と言っていたら、ちょっとゴチャついてああいう競馬だったので。普段、渡辺薫彦先生が乗ってくれるんですけど、先生も『すごく背中が良い』と言っているので、前から手応えはありましたね。心肺機能は全く問題ないですね。ハッキリ言ってそこが良くなきゃ、こんなところには出られないですよ」

初勝利を手にして、さあ、さらなる高みへ、というところでアクシデントが訪れた。右前脚に繋靭帯炎を発症したのだ。普通ならば「繋靭帯炎」といえば、通例、長期休養を余儀なくされるものだが、幸い僅か4カ月のスパンで実戦復帰となったのが前走のチューリップ賞。とはいえ、調整課程でいえば、坂路とプール調教が主体。坂路での追い切りも速い時計は僅か3本ほどと、満足のいくものではなかったが、それでも走れたのは前向きな気性もあったのではないかと推測する。

「追い切りの動きは良かったんですけど、馬体重は-10キロでしたし、やっぱり体のバランスといいますか、付いて欲しい筋肉が少し付いていなくて、何とか間に合ったという感じでしたからね。本当に能力だけで走ったと言ったら大げさですけど、そういう意味でさすがやな、とちょっと感心しましたね」

シゲルピンクダイヤ

シゲルピンクダイヤ

背中の筋肉は本来より足りない上、腹回りはボッテリ。その状態からひと叩きしたのだから、状態面での上積みも当然ながら期待できる。「内がよかったけれど、後入れの偶数はいいですね」という枠順は8枠16番。理想通りの枠ではなかったが、前走に続き馬名にはピッタリ!?のピンク帽子でのレースとなる。

「あまり極端なスローペースにはならない方が…。勝手な思惑ですけど、前に行って欲しいとは思っていないので、当然流れてくれた方が良いとは思います。瞬発力はありますし、ゲートは出たなりで出てくれて、理想としては中団くらいで。何しろスムーズな競馬ですよね。それはみんなそうだと思いますけど、この馬はずっとゴチャついた競馬が続いているので」とVロードをイメージしてくれた。

シゲルピンクダイヤ

最後に、一つ気になるポイントも授けてくれた。ここまで460kg→462kg→452kgと推移してきた馬体重だが、当日は二桁増のプラス体重をイメージしているという。「体重はおそらく増えます。カイバはいつも食べてくれるし、それは筋肉が戻った分だと思ってください。プラス10キロくらいを目安に頑張ろうかなと思います。今でそれくらいなので、それ以上は減らさないように、とは思っているんですけどね。逆に増減なしだったら、『エッ!? 』と疑問に思ってもらって良いかもしれません。まだ底を完全に見せている感じはないので、そういう意味で、楽しみはあるんですけどね」。

故障明けの前走は持ち前の我の強さと能力でカバーしたが、今度は使った大きな上積みが期待できる。時代の変化から臨戦課程も多様になってきた現代競馬を象徴する桜花賞で波乱を巻き起こすなら、シゲルピンクダイヤの伸びしろだ。