グランアレグリアの逃げ切りで幕を開けた2019年のクラシック。その後、グランアレグリアはオークスに向かうことがなくNHKマイルカップの参戦が正式発表された。ぶっつけ本番、トライアルの存在意義…かつての常識が崩れつつある現代競馬。どのジャンルにも新たな慣習は賛否両論が巻き起こるのは常ではあるが、馬を管理する側が適性を見極めて、しっかり結果を残しにいくことは重要であることは否定しない。しかし、強い馬同士が大きな舞台で戦うこと。それをマスコミやファンが頭を悩ませながら予想する、または応援する。それこそがシンプルな競馬の醍醐味だと改めて感じることが増えた。

そんな、昨今の競馬界だが、先週の桜花賞では個人馬主・日高の生産馬のシゲルピンクダイヤが2着に好走した。しかも、森中蕃オーナーは平地G1初馬券圏内だったのだ。こうしたように非大手陣営(と言ったら語弊があるので、渋い、渋メンなどと自分は言ったりする)が大きなチャンスを手にしたら、ついつい応援したくなってしまう。そんなファンもいるのではないだろうか。これもまた競馬の楽しみ方の一つだと思う。

クリノガウディー

●乗り手が口をそろえて評価する素質の持ち主

今週末に行われる皐月賞(G1)に挑む陣営の中で、先週のシゲルピンクダイヤにダブる馬がいる、クリノガウディー(牡3、栗東・藤沢則厩舎)だ。クリノガウディーは日高の三輪牧場の生産馬で、母やきょうだいに目立った重賞実績のある馬はいない。オーナーの栗本博晴氏は馬主歴20年以上。過去には、皐月賞を3度経験されているが、昨年の朝日杯FSでの2着が平地G1で初めての馬券圏内だった。昨年10月8日の京都芝1800m戦でデビューした当時を、担当の丸田知毅調教助手が振り返る。

「今ではレースにいって気が入るところはありますが、新馬戦では競馬が分かっていなかった分、フワフワ走っていましたね。新馬勝ちはちょっとビックリしましたが、追い切りをつけてくれていた森裕太朗騎手がずっと『いいですね、いいですね』と評価してくれていたんですよね」

クリノガウディー

レースは、好位のインから抜け出して、差し切り勝ち。ラスト2Fが11.1-11.4秒と加速する極端な上がり勝負だったため、全体時計は目立たないが、直線では一旦前が壁になったところから切り返す余裕があったほどで着差以上に強い内容だった。当時は12頭中6番人気と伏兵扱い。しかし、1週前追い切りでは時計がかかる馬場状態の中、坂路で51秒9の好時計をマーク。追い切り時計をしっかりみていれば、決して低評価でとどまる馬ではなかったはずだ。

続く東京スポーツ杯2歳S、これも見どころがあった。初めての関東圏の競馬の上、レースでも前に壁が作れず、輸送の影響もあってか、掛かり気味に先行。結果は12番人気7着ではあるが、上位勢が差し馬ばかりの中、勝ち馬から0.5秒差に踏み留まった。

クリノガウディー

クリノガウディーの隣が丸田助手

丸田助手も「上がってきた時にジョッキーには『パンとすればもっと良くなってきそうだ』と言ってもらえましたね。あれだけのトップジョッキーですからね。嬉しかったですね」と語る。「それに、僕もまだ緩さが残っているとは思っているんです。新馬の前に比べたらだいぶ良くなりましたが、まだ緩さがありますから」と続けるように、成長の余地は残しているようだ。余談だが、当時の鞍上は比較的辛口ジャッジになりやすい(と分かる人は稀だろう…)。そういう傾向を踏まえても、素質を秘めているのだなと納得させられたものだ。

●デキは前走以上 スプリングS6着から巻き返しへ

以降の朝日杯FS、スプリングSでは、多くの人がこの馬の存在を知っただろう。よって、それらの回顧は割愛させていただくが、皐月賞の前哨戦として選択したスプリングSで6着。そこからどれだけ巻き返せるか、少しでも強調材料がほしいところだが、期待できる点もある。

まず、調整過程だ。朝日杯FS後、当初はシンザン記念を予定していたが、右後肢を痛めたため直前に回避。スプリングSへ仕切り直す形に。しかし、調整過程はいかにも仕上がり途上。気のいいタイプでもあり、太めが残ることもなかったが、ひと叩きの上積みは間違いない。

クリノガウディー

1週前、最終と藤岡佑介騎手が追い切りに騎乗

「急仕上げ気味だった前走を叩いて、上向いています。攻め馬では引っかかることのない馬ですが、1週前追いはジョッキーも『気合いをつけた方がよさそうだったので、終いはやっておきました』とのこと。11秒台も出ていましたし、1週前としてはいい動きだったと思いますよ」と丸田助手。話を伺う限り、決して強気なコメントを発するタイプの担当者さんではないと映るが、こと上積みについてはハッキリとした口ぶりだった。

続いて、距離。マイル戦での好走のイメージが強くみられがちだが、「前回は気分良くいってしまった分、止まってしまいましたが、トビが大きいので2000mは守備範囲内だと思います」と語れば、朝日杯前、初めて追い切りに騎乗した藤岡佑介ジョッキーも「距離が長い方がいい」と評していたという。前回は荒れた内側の馬場を回ってきただけでなく、速めの流れを踏んでいたことからも、枠順、展開一つでリカバリーできる。

クリノガウディー

クリノガウディー

最後に、馬場。水曜時点の天気予報をみると、当日の天気は曇とのことだが(媒体によって差異がありそうです)、少しでも水分を含むとタフさが要求されるのが、春の中山の芝。その点、クリノガウディーはかねてからパワーには定評があった。「極端な道悪馬場はやったことがないので分からないですが、少々の道悪なら大丈夫でしょう」と適性を見込む。瞬発力勝負になりがちな京都などより、中山コースはプラスに働くだろう。

この馬を初めて厩舎で拝見させてもらったのは朝日杯の翌週。当時は馬房の中でも飛び跳ねんばかりに気が入っていた。丸田助手も「個性的な馬で…」と苦笑いだったが、この中間は当時に比べれば穏やかな感も受けた。「装鞍所に入ってちょっとはチャカチャカするんですけど、パドックでは大人しいですね。返し馬に行く前に馬場で歩いているくらいなので。競馬に行ったら、ちょっと気が入ってしまうだけで」とのこと。レース当日のパドックでも落ち着いた様子がみえれば好サインだ。

クリノガウディー

クリノガウディー

筆者撮影 カメラに興味を示すように落ち着きがみられた

人気が予想されるサートゥルナーリアは兄も母もG1馬という超良血で、業界の最大手・ノーザンファームが送り出す超ブランド馬。一方、クリノガウディーは兄も母も短距離馬で、際立った成績を残したわけではない。しかし、時として血統や人の評価を上回るパフォーマンスをみせる馬が現れるのも競馬の魅力。皐月賞でアッといわせるなら、クリノガウディーだと期待したい。そう思うだけの資質は秘めているはずだから。