2014年度のワールドベストレースホースランキングNo.1に輝いたジャスタウェイ。2018年6月より、その産駒たちがデビューしましたが、競馬ラボとしても(僕にとっても)所縁の深いジャスタウェイの子ども達の活躍を、関係者のコメントから追っていこうという、不定期連載です。

ジャスタウェイな子ども達

●ジャスタウェイ産駒初の海外挑戦となるマスターフェンサー

まずは、日本時間5月5日(祝・日)の朝に発走を控えるケンタッキーダービー(G1)に挑むマスターフェンサーについてトレセンで伺いました。昨年8月の阪神芝2000m戦でデビューした母セクシーザムライ、父ジャスタウェイのマスターフェンサー。デビューは芝で、新馬、未勝利と芝2000m戦を2走するも、未勝利でしたが、厩舎の先輩であるエポック(ダートで5勝)の弟ということ、母系が強くでやすい兄弟からも、管理する角田晃一調教師はダートの可能性を感じていたそうです。

ジャスタウェイな子ども達

その見立て通り、ダート初挑戦のキャリア3戦目では、阪神ダ1800m戦で1分51秒1の好時計で3馬身半差の快勝。続く500万下も連勝し、一躍ダートの3歳界の新星として名乗りを挙げました。

「2勝目を挙げた頃から、関係者(※)からは参戦の誘致を受けていました。結果的に、前走の伏竜ステークスで2着に入ったことで、ポイント上位となり、選定されることになったのですが、オーナーが勇気のある決断をしてくれました。馬の精神面を考慮すると、もう1~2週間、ゆとりがあれば…というのは本音ですが、出ないことにはチャンスはないですからね」

角田先生はご存知の通り、名手として知られた元ジョッキーですが、騎手時代にフランスでの騎乗経験はあるものの、アメリカの競馬は未知数といいます。しかし、先生はマスターフェンサーの血統面に期待を寄せます。

「母はキーンランドのセリで落札された馬だし、父のジャスタウェイも左回りがよかったからね。その父をたどっても(アメリカ調教馬の)サンデーサイレンスで、アメリカに縁のある血統ではありますから。ダートの質もまた日本とは違うし、雨が降ったら、また馬場もガラっと変わるだろうから、一概にいえないけれど、適性がないわけじゃないと思います。手前を換えてくれなかったり、競走馬として改善すべき余地は沢山ありますが、(2走前の)ヒヤシンスSの1600mは短い。距離がもっとあってもいいくらいですからね」

ジャスタウェイな子ども達

ジャスタウェイな子ども達

中4週での米国遠征。決して条件は楽ではありませんが、輸送は無事にクリアしたと聞きます。「距離は長ければ長いほどいい」というコメントに重ね「直線ももっと長くていい」と仰っていたことから推測すると、今後の3冠戦にも続戦するのでは?と推測しますが、ジャスタウェイ産駒にとって、これが初めての海外遠征。実りある結果を期待します。

ケンタッキーダービー出走馬選定ポイントシリーズの関係者

ジャスタウェイな子ども達

チャーチルダウンズ競馬場で調整するマスターフェンサー

●オーナー秘蔵っ子のカリボール 圧巻の差し切り勝ち

また、ジャスタウェイ産駒といえば、ジャスタウェイの馬主であり、競馬ラボでも連載を行ってくれている大和屋暁オーナーの所有馬・カリボール。先日(4月20日)、京都芝1800mのあずさ賞で2勝を挙げたことをご存知の方は多いかと思います。

ただ、500万下戦ということもあり、「その後」の話は手薄。話題を取り上げるには時期尚早かもしれませんが、その勝ちっぷりが鮮烈だったこともあり、オーナーの愛馬でもあり、競馬ラボ的にも注目したい馬でもあり、手綱をとった藤井勘一郎騎手に伺いました。

ジャスタウェイな子ども達

「どちらかと言うと、もっとジワジワ行く印象だったんですよね。初めて阪神で勝たせてもらった時もそうでしたし、新馬戦も (三浦)皇成君が中団からちょっと早めに動いての競馬だったので、あそこまで切れるというのは、分からなかったですね」

藤井騎手も驚きを隠さなかった末脚。レースでは、スタートこそ良かったものの、二の脚がつかず、後方からの競馬に。前半5Fは61.2秒と先行有利の流れ。3コーナーに差し掛かる位置でも、先頭集団から離れた位置を追走していたカリボール。万事休すかと思われましたが(僕は競走除外明けのレースで故障でもしたかと思いました)、そこからが圧巻。鞍上のアクションに応えると、一気に馬群へ追いつき、直線では外から豪快に差し切りました。

ジャスタウェイな子ども達

トレセンでのカリボール(厩舎スタッフが騎乗)

「僕自身も調教でも度々乗せていただいていて、馬の特性は掴んでいるつもりでした。しかし、スタートの一歩目は前走も速かったんですけど、そこからエンジンが掛からなくて。正直ジワジワ行った方が、ちょっとずつギアを上げていった方が良いんじゃないかと思っていましたし、意識しての競馬だったわけではありませんが、調教でも毎朝そんなに急かすような攻め馬はしていないので、ユックリ構えていたら馬が走ってくれるかなと思いながら…。だから、良い意味でカリボールに助けてもらったというか、覆してもらったというのはすごく感じますよね」

前走は調教を含め、テン乗りだったジョッキーということもあり、返し馬を終えてから脚元の不安を感じたジョッキーが大事をとって競走除外に。そこから仕切り直しの一戦。未勝利戦では先行して押し切る競馬だったこともあり、結果といい、戦法といい、ジョッキーだけでなく、誰もが想像しない勝ちっぷりでしたね。その馬に驚かされた張本人でもある藤井ジョッキーはこう締めくくってくれました。

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あずさ賞のレース後、大和屋オーナーたちと記念撮影する藤井騎手

「競馬って、ラップ的にこのコースのこの条件だったら、この位置が良いとかやっぱりあるじゃないですか。そのデータの数字として見えるものと、それじゃ見えない部分というのも大きいと思うんですよね。と言うのは、同じポジションでも折り合いが付いているのか、否かでも終いの切れ味は違いますし、今回の京都の芝も自分は長いなと感じたんですよね。あれだけ整備されているトラックでも、自然が相手だとはすごく感じますよね。枠順一つで展開も変わりますし、外から同じようなポジションで競馬をしているように見えても、その日その日の状態次第でもありますから。それは自分がJRAのレースに乗っていて、すごく感じる部分ですよね」

競馬は様々な要素が重なり合って成り立つ、繊細な世界。海外での経験を積んだ藤井騎手でさえも、「日本の馬の方が、海外よりももっと『リズム、リズム』という感じはします」と感じ取っているようです。今回の競馬がカリボールにとっては本来の「リズムに沿った競馬」だったのかもしれません。ただ、父のジャスタウェイは(詳しくは省きますが)逆境の時に力を発揮することのある意外性の馬でした。今回も、誰もが意図していなかった競馬で新たな一面をみせたカリボールはそんな父の長所を引き継いでいるのかもしれません。