アメリカのダート競馬が日本のダート競馬と大きく違う点は、スタートからフルスピードで飛ばして、スタミナが切れた馬から垂れていくというサバイバルレースになりやすいところだろう。日本のダートは芝コースの内側にある分コーナー半径が狭く、外枠のポジションを取れる馬が有利になりやすいが、アメリカの場合はダートコースが芝コースの外にあることでコーナー半径が広い。強い先行馬も多く出走することで、外枠のポジションを取れない馬から沈みやすい傾向がある。

ケンタッキーダービーが開催されるチャーチルダウンズ競馬場も同様。例年16番枠より外枠は難しい競馬を強いられやすい。加えて前哨戦のG1アーカンソーダービーを制したオマハビーチも出走取消、各前哨戦のダービー勝ち馬が何かしら不安を抱えていることなどから、混戦ムードが高まっている。


そんな中、恵まれた枠を引いたのが◎インプロバブルだ。2歳時に無敗でG1ロスアラトミスフューチュリティを勝つなど早くから実力を証明してきた馬で、2走前のG2レベルS1(今年のレベルSは2度開催された)は早めに抜け出したところを出し抜けを食らい、前走のアーカンソーダービーではオマハビーチにマイペースに持ち込まれ共に2着。負けたとはいえ決して酷い内容ではない。

アーカンソーダービー2着からのケンタッキーダービー好走馬と言えば、9年前の覇者・スーパーセイヴァーが思い出される。スーパーセイヴァーも母父は本馬と同じエーピーインディであった。多頭数に替わるケンタッキーダービーにおいて内枠から控えられる点は大きな強調材料となる。


運が向いてきたのは昨年のG1BCジュベナイルを制したゲームウィナー。というのも、前述したようにケンタッキーダービーは外枠が不利。その中で16番枠を引いてしまった。しかしオマハビーチが出走を取り消し、枠が1つ内に詰められることとなり、実質15番枠でレースを迎えられる。近10年、15番枠は(2.1.0.7)。この1つの差は 予想以上にプラスに働くかもしれない。

※ハイカルも出走を取り消しているものの、枠は詰められない

3歳になって以降の2戦は共に2着も、2走前のG2レベルS2は逃げたオマハビーチとハナ差の2着。前走のG1サンタアニタダービーは早めに動いて、後ろにいたロードスターに差されてしまったように、内容は悪くない。父はファピアノ系キャンディライド。ファピアノ系はアメリカンファラオ、オールウェイズドリーミングと近5年で2頭の勝ち馬を輩出するなど、このレースと相性がいい。


オマハビーチ取消がプラスに働きそうな馬がもう1頭いる。無敗のG1フロリダダービー馬▲マキシマムセキュリティ。短距離で3連勝し臨んだフロリダダービーは距離を心配されたが、スピードの違いでハナを切ってそのまま後続を寄せ付けなかった。2着のボーディエクスプレスは未勝利馬だっただけにレベル自体心配されるものの、勝ち時計の1.48.8は近10年の同レースで3位タイに速い。49秒を切る年の勝ち馬は、一昨年の覇者オールウェイズドリーミングを筆頭に本番でも好走しやすい。

G1サンタアニタダービーを制したロードスターはゲームウィナーを差し切った実績がある。ネックは17番(実質内から16番目)という外過ぎる枠。主戦のスミス騎手がこちらではなくオマハビーチを選んだ点も一抹の不安を覚える。

同じくそれなりに人気になりそうなのが、3連勝中のタシトゥス。勢いがあるものの、ケンタッキーダービーが鬼門となっているタピット産駒であり、前走のウッドメモリアルSは過去10年で2番目に遅い勝ち時計だった点はどうしても気になるところだ。タンパベイダービー組も近年なかなか本番に繋がらない。


一発あるなら内枠を引いたG2ブルーグラスSの勝ち馬ヴェコマ。強い相手と当たっていないとはいえ、タンパベイダービーで悪くない内容だったウィンウィンウィンを一蹴した前走内容は評価に値する。最内のウォーオブウィルは前走のG2ルイジアナダービーで9着に大敗したものの、スタート直後に脚を捻るアクシデントがあったことから参考外。2走前のG2リズンスターS1着の際に見せたスピードは雨が降り、時計が速くなる今年のケンタッキーダービーに活きる可能性は少し残されている。

そのリズンスターSで勝ち馬ウォーオブウィルから3.4秒離された13着のプリュクパルフェは、前走のG2UAEダービーを制しているとはいえ、さすがに好走ラインに届いていない。日本から挑戦するマスターフェンサーもこのメンバーに入ると敷居は高そうだ。

ケンタッキーダービー
◎インプロバブル
○ゲームウィナー
▲マキシマムセキュリティ
☆ヴェコマ
△①、②、⑧、⑰