コースのポイント!


凱旋門賞(日本時間10月6日(日)夜23時05分発走)の舞台となるフランス・パリロンシャン競馬場は、日本人にとっては最も馴染みのある海外の競馬場かもしれない。ヨーロッパ最大のレースにして、秋シーズンの総決算である凱旋門賞が行われるこの競馬場は、過去、日本から海を渡った名馬たちの夢を阻んできた。

2015年の凱旋門賞開催後、2年に渡る改修の末、パリロンシャン競馬場として昨年の4月にリニューアルオープンしたパリロンシャン競馬場。

凱旋門賞が開催される12Fは向正面中間から3コーナーまで上り坂が続き、そこから下り坂が始まる。構造自体は京都競馬場の外回りコースと近い。ただパリロンシャン競馬場の場合は 4コーナーに長めの直線、通称『フォルスストレート』が控えている。4コーナーから直線、ゴールまでも500mあるため、フォルスストレートで動くと最後脚が止まってしまう。早仕掛けは禁物だ。

昨年は馬場の安全性の問題で使用されなかったが、新装パリロンシャン競馬場は直線にオープンストレッチという仮柵が設置されている。直線に入ると内が大きく開くこのコース設定を今年は取り入れるとのこと。これまで以上に内枠は有利になってくるだろう。

内ラチ

改修されたパリロンシャン競馬場

秋のパリは雨が降りやすく、ドロドロの馬場になることが多いため、改修されてコースの水はけが良くなったことは日本馬にとってはプラスかもしれない。逆に、今までよりスピードが求められるコースに変貌したとも言える。

フランス競馬の基礎知識

過去の凱旋門賞を遡ると96年にエリシオが逃げ切り勝ちを果たしているが、滅多に逃げ切りはない。フランス競馬は他の欧州各国の競馬に比べて、逃げることを嫌がる特色がある。逃げるよりは、前に風除けとして馬を置いて運ぶことを求める調教師も多い。

もちろん凱旋門賞では各陣営がペースメーカーを用意する。ここまでは他の欧州各国と同様。しかし5、6頭立てのG1が珍しくない中でも凱旋門賞は頭数が揃いやすく、ここ5年を見ても20、17、16、18、19と頭数は非常に多い。ペースが流れるとはいえ、内が密集し、かといって外を回してもタフなコース設計の影響で脚をなくしてしまう。サバイバルレースとなりやすい。

内ラチ

長い直線も各馬のスタミナを奪う

以前は地元のフランス勢、特に3歳牡馬が斤量差もあり有利だったのだが、近年フランス牡馬のレベルは下がりつつあり成績は落ち始めている。それによって英国勢、アイルランド勢に押され気味だ。

斤量設定が3歳牡馬56.6kg、3歳牝馬55kg、4歳以上牡馬59.5kg、4歳以上牝馬58kgと、牝馬は牡馬に比べて1.5kg斤量が軽い。その影響もあってか、近5年中4年で牝馬が勝っている。昨年は牝馬エネイブルが連覇達成。2着も牝馬のシーオブクラスであった。今年も牝馬の激走に要警戒と言える。

昨年のエネイブルの勝ち時計は2.29.24。良馬場の場合は改修前から速い時計となりやすく、5年前のトレヴが2.26.05で走っているように2.26.0~2.28.0くらいの決着が見込める。とはいえ以前よりスタミナ血統ガリレオの血が台頭しているように、速い時計が出るようになったことで、より長く脚を使う必要が出てきている。

出走馬&展望

エネイブル(馬番8、ゲート番⑨)
3連覇を狙う世界女王は、シャンティイ開催の一昨年、そしてパリロンシャン開催の昨年と、違う舞台を器用にこなす対応力の高さは他馬と一線を画している。

加えて今年は昨年と違い、脚元への不安が少ない。その結果エクリプスS、キングジョージ、ヨークシャーオークスと盤石の内容が続いている。昨年のBCターフや今年のキングジョージのように、控えても競馬できるのがこの馬の強み。枠は9番とやや外目に入ったとはいえ、包まれないことを考えればプラス。3連覇は目前。

フィエールマン(馬番6、ゲート番②)
長距離G1を2勝している本馬は長丁場のスローペースが得意。硬めの馬場で、スローペースになればチャンスはあるかもしれない。母リュヌドールはフランス産馬で、フランスの重賞を2勝。適性を秘めている可能性はある。しかも2番枠を引いてオープンストレッチの恩恵を受けられそうな点は魅力的だ。

ブラストワンピース(馬番5、ゲート番④)
父は欧州競馬で活躍したハービンジャー。ハービンジャー自身は硬い馬場で更にパフォーマンスが上がっただけに、こちらも硬めの馬場は良さそうで、最近のパリの雨続きの天気は気になるところ。ただ4番という枠はプラス。

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キセキ(馬番4、ゲート番⑦)
凄まじい道悪になった菊花賞を勝っているように、雨で馬場が重くなっても対応できる可能性があり、前哨戦3着からの前進を期待したい。

ヴァルトガイスト(馬番2、ゲート番③)
オープンストレッチを使用することで、内枠を利することができそうなのは地元のこの馬。昨年以上に力をつけた今年は夏の英国遠征でも連続3着。パリはここ数日ぐずついた天気が続いており、タフな英国の道悪競馬もこなしているこの馬にはプラスとなるだろう。

ソットサス(馬番12、ゲート番①)
ヴァルトガイストと同じく内枠を引いた今年のフランスダービー馬。前走のニエル賞でパリロンシャン競馬場の中長距離にも対応できることを示してみせた。勢いはメンバートップクラス。あとは初めて一線級を相手にしてどうかだろう。近年不振のフランス牡馬3歳勢だが、一矢報いたいところ。

ジャパン(馬番10、ゲート番⑩)
ソットサスと同じ3歳馬。夏にこの舞台で行われたパリ大賞を制覇。前走のインターナショナルSでは、エネイブルと接戦を演じたクリスタルオーシャンを完封。単純比較するなら力は通用する。好位に着けられるとはいえ、オープンストレッチのあるコースで10番枠は少々不利。好走できるかどうかは、鞍上のムーア騎手の腕にかかっていると言っていい。

ガイヤース(馬番3、ゲート番⑫)
穴人気しそうな本馬は外枠に入ってしまった。前走のバーデン大賞では2着に2.3秒という大差をつけて圧勝したとはいえ、相手関係が楽だったのも事実。春にヴァルトガイストに完封されているように、外枠を覆すほど力をつけているかどうか。

マジカル(馬番9、ゲート番⑧)
安定感抜群の実力馬も、7月からこれで4戦目。調子のいい時に使い込むA.オブライエン厩舎所属とはいえ、上積みが心配される。2400mは守備範囲だ。

ソフトライト(馬番11、ゲート番⑥)
武豊騎手が騎乗する点に注目も、これまで戦ってきた相手関係から軽視せざるを得ない。