コチラ検量室前派出所

ルメール騎手

5月5日、笑顔を見せるルメール騎手

●昨秋から4戦連続で着外

まったく関係ない話から始めるのも申し訳ないが、検量室前パトロール隊員が毎週のように通う東京競馬場のうどん屋に『冷やしうどん』というメニューがある。その名の通りタレは冷たいのだが、うどんをゆでたままどんぶりに投入することから、麺は温かいのである。一度麺を冷やしてほしい。今の私の願いは世界平和とそれだけだ。

5月1週目の東京競馬場は30度に届くかという暑さ。そんな時に『温かい冷やしうどん』を食べて汗がポタポタ落ちる中、土曜11R・プリンシパルSを制したのはコズミックフォース。鞍上はC.ルメール騎手。現在リーディング2位。NHKマイルC(G1)ではタワーオブロンドンに騎乗し12着だったものの、5月2日のかしわ記念(Jpn1)をゴールドドリームで制すなど目下好調を維持している。

そんなルメール騎手がヴィクトリアマイル(G1)でコンビを組むのが、昨年のオークス馬ソウルスターリング。しかし彼女は今、トンネルを抜け出せないでいる。昨年秋の復帰戦・毎日王冠で8着。続く天皇賞(秋)で6着、ジャパンCで7着。今年初戦だった前走の阪神牝馬Sでは10着に敗れた。

その敗因について、名手を直撃した。すると、困った表情を浮かべながら「うーん……。前走はペースが少し遅かったです。最初はリラックスして走れていましたが、レース中にポジションを上げたところ、直線では早くバテてしまいました。僕もちょっとビックリしました」と話す。さらに「4コーナーではすごくいい感じだったんです。動きは良かったと思います。でも突然バテてしまいました。去年の桜花賞で3着に負けてしまいましたが、あの時と同じような感じでしたね」と、これまで数々の名牝の鞍上を任されてきたトップジョッキーも驚く内容だったようだ。

ルメール騎手

ソウルスターリングの最終追い切りに騎乗

休み明けをひと叩きし、状態は上向き。今週末に控えた決戦に向けて、カギに『ペース』をあげる。「ヴィクトリアマイルはいいペースが欲しいですね。ハイペースは歓迎です。いいペースなら道中絶対リラックスして走れますし、最後まで伸びてくれると思います」と、巻き返しを誓っていた。

そもそも、不振の要因は何なのだろうか。そんな単純な疑問をルメール騎手に投げかけたところ、苦笑いを浮かべながら「気持ちが切れてしまうのが問題ではないと思うのですが、ただ、去年の秋から直線でちょっと大変です」と語った。こうなると『大変』の意味が気になる。

「反応があまり良くないのです。原因はちょっとよく分からないですね。彼女(ソウルスターリング)のいいところは長い脚を使えることです。道中リラックスして走れれば、ゴールまで長く脚を使って伸びてくれます。でも引っ掛かったら反応できないんです。それが最後の伸びが足りない原因かもしれません」。

ということは、逆に考えれば道中ある程度ハイペースになりさえすれば復活は可能、とも考えることはできる。

●調教では「すごくいい走り」

ソウルスターリングの母スタセリタは現役時代、ルメール騎手が手綱を取ってフランスオークスやヴェルメイユ賞といったGIを制した。そんな偉大な母とダブるところがあるという。「ソウルスターリングはお母さんに似ています。同じような身体付きです。でもフランケルの子はちょっとテンションが高いところがあって、たまに気性が難しい時があります。お母さんは扱いやすい性格だったんです。気持ちの面はお父さんに似ているのかもしれませんね」。そう柔らかい表情で話す姿は8年近く前、母に騎乗していた頃を思い出し懐かしんでいるかのようだった。

ヴィクトリアマイルの意気込みを聞くと「阪神牝馬Sで負けたから分からないです(笑)」と冗談を挟みつつ、「調教でもすごくいい走りを見せてくれています。しかし競馬ではリラックスして走らないといけません。リラックスして走ってくれれば、絶対いいレースができます。応援してください!」と力強く言った。

来週5月20日(日)のオークス(G1)では、大本命に推されそうなアーモンドアイに騎乗する。「アーモンドアイのオークスも楽しみですね!」と満面の笑みを見せてくれたルメール騎手が、昨年のようにG1の表彰式で何度もこの笑顔を見せてくれることだろう。

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