サクラアンプルールが、この夏も北海道の主役の座を狙う。7歳になった今年も強敵相手の中山記念(4着)、日経賞(3着)と善戦。昨年の函館記念は飼い葉を食べず状態がひと息で、16頭立ての大外枠に入って力を出しきれなかった。札幌記念の連覇を視野に入れながらも、池上昌平助手は「去年と比較すると順調」と手応え十分。年齢を重ねても重賞で好勝負できる秘訣を聞いた。

今年は飼い葉食べて体重減の心配なし

-:函館記念(G3)に向けてサクラアンプルール(牡7、美浦・金成厩舎)の追い切りを今朝(7月11日)、終えられたとのことですが、その評価から教えていただけますか?

池上昌平助手:向こう(美浦)である程度作ってきたので、それほど時計は必要とせず、終いだけシュッとやる感じでした。元気が良すぎて、前半はかなり行きたがったのですが、何とかなだめて及第点の内容だったと思います。息遣いもよかったし、最後の1Fもいい脚でした。正直に言うと、目標が札幌記念であることは確か。こういう言い方は失礼ですが、「叩き台」ということを考えてもいい具合じゃないかと思います。

-:休み明けは決していいイメージがなかったです。普段の休み明けと比較していかがですか?

池:去年の函館記念は飼い葉を食べなかったりして、調整を加減しているところはあったので、去年と比較すると順調にこられていますね。

-:食べなかった理由はどういった原因ですか?

池:輸送に弱かったり、暑さに弱かったり、環境の変化に戸惑ったり…。在厩していれば食べてくれるんですけどね。去年も函館記念を終えてからは食べてくれました。今回はそれが一発目から食べてくれて、体重を心配せずに乗り込めているんです。

池上昌平助手

-:この年齢になってもデリケートなんですね…。

池:もともと気難しい馬で、牧場(谷岡スタッド・新和牧場)の方も大事に大事に、いまの時代には珍しく6歳、7歳になっても使えるようにとやってくれたのです。牧場の方々のおかげで今もこうして使えるのかと思います。しかも、難しい馬だからこそ、馬のことを把握している牧場にしか出せないですからね。

-:レース間隔も開いていますよね。

池:こういう気性なので、どうしても詰めて使うのがよくないんですよね。ローテーションと目標を定めてやっていくスタイルで。オーナーも理解があって、厩舎に任せてくれているので。そこは助かりますね。

-:お兄さんも活躍した馬で人が入れ込んでしまいがちな気もしますが、じっくり使ってきたことが功を奏したと。

池:逆に期待しているからこそ大事に、あきらめずにやってこられたのかと思います。

「負けながら覚えさせていくことはある」

-:難しさというのは具体的にはどういった部分ですか?

池:一頭で調教がしづらかったり、他の馬がいないと飛んで行ってしまうところがあるんです。ウチのような厩舎だから、じっくりやれて環境がマッチしたのかと思います(笑)。

-:いやいや個人的な話ですが、金成厩舎さんには馬券でよく狙わせてもらっているんです。

池:ウチはしつこいくらいに基礎体力を鍛える厩舎で、早いところ(追い切り)はあまりやらないですが、大事に使っていって古馬になって走ってくるところはあるかもしれません。

-:具体的にはどういった内容を取り組まれていますか?

池:じっくりゆっくりをず~っと長めにやりますね。馬場をくるくる回っているような。追い切りも馬場の悪い時間にいきますし、目安にはならないかと思いますよ。昔でいう「マツパクさん(松田博資厩舎)」のようなイメージかもしれません。

-:松田厩舎の調教はシンドイといいますよね。

池:負荷はかかると思いますよ。しつこいくらいにやるような。

-:休み明けでもあまり仕上げ過ぎないですか?

池:オープン馬やクラシックを狙う馬などになればまた違いますが、そういうところはありますね。下級条件だとレースでの練習もできないですからね。そういったことを負けながら覚えさせていくことはあるかもしれませんね。上のクラスになると、レースの中で練習もできないですから。

-:よく安藤勝己さんも「負けて覚えることがある」とおっしゃられていますが、最近では珍しい考えかもしれませんね。

池:もちろん上を目指してのことです。それに、レースを教えてくれるジョッキーもたくさんいますからね。アンプルールなどはそういう賜物かと思います。

-:古き良き厩舎ですね。

池:言い方はよくいえばそうかもしれません(笑)。素質があっても、じっくりやっていくところはありますからね。ウチの先生のいいところかと思います。

-:馬主さんの偏りはありますか?

池:いろいろなところから入っていると思いますよ。先生も馬を探すのが大好きで、調教は我々に任せて、馬を集めることに尽力してくれますから。あとは馬が走ってくれたら最高ですけど(笑)。先生も頑張ってくれているので、僕らも頑張らなきゃ。

-:いい厩舎ですね。ますます注目してしまいそうです。

池:いやいや、そんなに勝てていませんから(笑)。

-:でも、競馬ファンは馬券的に狙いたくなる厩舎かと思います。

「ストロングポイントはコーナリング」

-:馬の話に戻らせていただくと、気性が難しいという割に、レースは内枠での好走が目立ちますよね。もまれる心配がないというか。

池:レースはセンスがいいんですよね。追い切りにせよ、走ったら問題なくて、競馬センスの塊のようで。ストロングポイントはコーナリングだと思うんです。小回りコースでもすごく上手に走ってくれるんです。

池上昌平助手

昨年制した札幌記念(G2)も3~4コーナーで一気に先頭集団に並びかけた

-:それは思っていました。コーナリングで置かれないですよね。

池:東京でも走っているけど、中山などの小回りのほうがやはり向きますよね。使える脚も一瞬しかなくて。その一瞬の脚は重賞級のモノを持っているので。

-:ただ、これが悪い意味ではなく、乗り味は決していいわけではないんじゃないかと推測します。

池:すごくピッチ走法なので、乗っていてめっちゃいい感触とは違いますね。回転の速さと立ち回りですよね。

-:年齢は重ねていますが、今年も成績は落ち込んでいませんし、昨年の有馬記念も惜しかった。ちなみに、馬場状態は求めますか?

池:走り方からこなせると思っていましたが、いいことに越したことはないですね。時計の掛かる良がいいかもしれません。

-:函館記念には2年連続の参戦ですね。

池:ハンデと馬場と休み明けという課題もあるので、克服してくれたらと思うのですが…。去年は枠も外過ぎましたし、当時はテン乗りでもありましたからね。今回は馬場さえよければね。

-:枠はやはり内が欲しいですね。

池:内が欲しいですね。後ろにさえつければ折り合うので。

-:日経賞や有馬記念は距離が長いから道中の折り合いが慎重なのではなく、馬群の中にいなかったからなんですね。

池:馬の後ろが好きな馬で、今日の追い切りも先頭に立ったらドーンといってしまいそうでしたから。ウチ自体、馬の後ろで我慢させる調教をよくやっているのでね。

-:でも、いまの競馬は馬場がいいですから、ロスなくいきたいですよね。

池:走る馬ほどコントロールをきかせられるよう調教は取り組んでいますね。若い内からそういう取り組みは意識していますけど、この馬に関しては別でしたが。3年前の函館から担当して、ここまで頑張ってくれていますからね。何とかこの夏も結果を残してくれたらと思うんですけど。

-:今回、札幌記念と楽しみにしています。

池:この馬のおかげで今年も北海道に来られていますからね。付き合いも長いですが、今年も来たからには結果も手にして帰りたいです。

-:今回は突然のところありがとうございました。