オイシン・マーフィー騎手
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R.ムーア騎手の発言にも共感 外を回っても勝てるのが日本馬

-:続いて騎乗に対する考え方などを伺いたいと思います。ファンの間では、ポジションを取ってくれるジョッキーという認知度が高い気がしますが、日本での騎乗において心掛けていることを教えていただけますか。

マ:良いポジションに見えるのは、ダートレースだとアグレッシブに乗っているからそう見られているのかもしれません。レース前に予習はしていきますし、調教師さんの指示もあって、結果的にそう見えるんじゃないでしょうか。確かにダートではそういうイメージなのかなと自分でも思いますね。良いポジションを取るというか、乗り方としてアグレッシブに乗っているからかなと。しかし、レースの展開によっては、最後方のインコースが一番良いポジションであることもあるでしょうし、実際に自分がレースに乗っていても、芝のレースでは中団から行ってもいいのではないかと思っているんです。

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-:確かに、成績をみると、(1回中山開催終了時点で)芝のレースだとまだ逃げていないですからね。

マ:イギリスだと逃げを打つのは大好きなのですが、たまたまそういう馬に当たっていないのかな。ところで、僕は今ダートレースで何勝しているのですか?

-:(1回中山開催終了時点で)9勝ですね。芝も9勝なので、ちょうど半々ですね。難しい質問ですけど、今の騎乗スタイルというのはどういった形で作り上げてきたのでしょうか。

マ:ジョン・リードさんという、昔クールモアで乗っていて、エプソムダービーも勝っているジョッキーがいまして、僕が減量ジョッキーだった頃のコーチでした。彼の指導を受けてきましたし、今でも度々会って、木馬に乗って追い方や鞭の使い方などアドバイスをもらっています。あとは世界中に乗りに行っているので、そこで色々なジョッキーを見て、参考にしますし、発展していっていますね。

「(競走馬のレベルは)世界一だと思います。1600~2400の芝のカテゴリーでは、おそらく日本の馬が世界一だと思いますよ」


-:まだ若いですし、これからますますすごいジョッキーになられるのか、楽しみです。騎乗において、自分のセールスポイントやポリシーもあれば教えてください。

マ:自分の中で一番大事にしているのは、距離ロスなく、馬を気持ち良く走らせるということですね。イギリスでは外を回って勝つということはほとんどないですよ。逃げても後ろからでもそうですけど、ニューマーケット、ドンカスター、サンダウンパーク、ヨーク…大きい競馬場では馬をリラックスさせないといけないんですよね。

そういう部分を考えても、上手くハミが抜けた状態で運ばないと勝てません。だから、距離ロスなくということですね。ただ、(香港の)ハッピーバレーのような競馬場は形状が違いますよね。あそこの1200mなんて、本当にグイグイ行かないといけません。ペース配分はその国、その競馬場に沿った形で戦わなければいけません。それぞれの環境の特性に合わせることが重要だと思いますけどね。

-:ただ、日本は馬群の幅が広いのかなという気がするのですが。

マ:日本の馬に関しては、外を回っても勝つんですよね。調教の仕方も違うでしょうし、1ハロン毎のラップタイムを見ても違います。日本の良い馬はそれでも勝てますよね。例えとしては、先週、藤沢(和雄)先生の厩舎のコントラチェック(牝3、美浦・藤沢和厩舎)が勝ったレースのタイムを見ても、3歳の3走目で、1分33秒台で走るということは、世界中の人は誰も信じられないと思うんですよね。ライアン・ムーア騎手とも話した際、彼も「それで勝つんだよ、日本の馬は」と言っていました。日本の馬はトップホースになるほど長く脚を使えるということですね。

-:ちなみに、先週のタイムは歴代でみても速い部類でしたよ。

マ:僕も、彼女は間違いなくすごい馬なんじゃないかなと思いますね。

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-:そんな日本競馬に実際乗ってみて、競走馬のレベルはどう感じましたか?

マ:世界一だと思います。1600~2400の芝のカテゴリーでは、おそらく日本の馬が世界一だと思いますよ。

-:日本に来る海外のジョッキーの皆さんはそう評価されていることをよく耳にしますね。日本の馬の気性という面では、海外の馬と比べてどうですか。森の中や草原のようなヨーロッパの調教場と違って、自然の環境ではないと思います。

マ:いやいや、僕は日本の施設が世界一だと思うので、それは極端な評価じゃないのかな(笑)。そんなことを気にする必要がないくらいの施設です。それに、日本のホースマンたちが素晴らしく馬の面倒を見ているんですよね。国枝先生の厩舎、スタッフもそうですし、他の厩舎を見ていても、日本の厩舎スタッフ、助手さんが乗っていても、世界的にレベルが高いと思っています。なぜかと言えば、自分がレースに乗っていて、とても難しい馬だなと思っても、ちゃんと調教できているということがすごいと思います。やっぱり良い馬は乗り難しいですよ。僕がレースに乗っている馬でも、競馬前に発汗が強くなったり、イレ込んだりしても勝つんですよね。だから、日本の厩舎スタッフの方たちのレベルの高さはすごく感じますね。

-:日本のことわざで『隣の芝は青く見える』というたとえがあります。海外の方が上なのかなと思っていました(笑)。

マ:日本の環境は本当に素晴らしいと思いますよ。安心してください(笑)。

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▲美浦トレーニングセンターで騎乗するマーフィー騎手

2018年は世界騎手ランキング2位 ワールドクラスの技術の礎とは

-:日本に来て1カ月ちょっとですけど、競馬の日以外はどう過ごされていましたか?

マ:まず水曜日と木曜日に調教に行っているのと、あとは金曜日に身体の治療やフィジカルトレーナーを付けてもらっています。ジムにも行っています。

安:レースへ向けて、英語の出馬表で資料を作っていますね。1日10レースくらい乗るので、20レース分ほどになります。また、平日に皆で一緒にレースを観て、色々な馬の特性を把握したり、調教師の先生の指示も受けた上で、どう乗ろうか打ち合わせしています。それに、暇さえあれば、彼はずっと競馬を観ていますね。色々な馬、過去の名馬のレースなどなど。だから、競馬オタクと言ったら、オタクでしょうし、競馬がすごく好きですよ。こちらから「このレースを観ておいてほしい」と思っていた場合、既に彼自身で観ていたりしますからね。

-:研究熱心でもあるのですね。騎乗スタイルを見ていても、ヨーロッパらしい乗り方と思いましたが、鞭の入れ方、手綱さばきを観ても、力強さ、素早さを非常に感じさせられました。どうやって身体を作られているのかなと思いました。

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マ:でも、年間1200レースくらい乗るので、それがトレーニングですかね。やっぱりレースが一番のトレーニングですよ。

-:そして、馬をすごく動かすイメージを受けました。

マ:そう見てもらえるのはすごく嬉しいですけど、やっぱりチャンスのある馬に沢山乗せてもらっているので。それはすごく幸運なことだと思っています。

-:若いのに謙虚ですよね。引っ掛かっているのをほぼ見た記憶がないので、偶然ではないと思うのですが、鐙の踏み方や、騎乗をしている時の姿勢、重心などはいつ頃から今のフォームなのですか。追い方としては、たまに鐙が前後に動く時があると思いましたが。

マ:基本、一度固まってからはほぼ変えていません。でも、本当は鐙を動かしたくないですね。それに、もっと頭脳的に、上手に作戦を練って乗りたいですね。もっと力強く乗りたいとも思っています。

-:ちなみに、ジョッキーは身体の柔らかさも必要とも聞きますが、そこはどうでしょうか?

安:でも、周りに思われているイメージほど柔らかくはないと思います。ただ、馬の上ではすごく変わりますよね。だから、多分そういうように出来ているのではないでしょうかね。普段生活をしていて、柔らかいと思ったことがないので。個人的な意見ですけど、彼はどのレースに向かうにしても、朝の調教もそうですけど、馬の特性を掴むことが誰よりも早い気がしますよね。そこは感性かなと思いますけど、素晴らしいなと思いますね。そういうジョッキーが世界に行くのだと思いますよ。瞬時に馬に合わせたウォームアップが出来るという点は驚いていますね。

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