関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

戸崎圭太騎手



プロフィール
【戸崎圭太】
1980年栃木県生まれ。
1998年に大井・香取和孝厩舎からデビュー。
勝負服のデザインは「青、胴赤星散らし」
初騎乗:1998年4月12日第3競走 ミヤサンヤシマ号 (1着/9頭)
初勝利:1998年4月12日第3競走 ミヤサンヤシマ号
NAR通算成績は978勝(09/03/06現在)
JRA通算成績は6勝(09/03/06現在)
■主な重賞勝利
・08年帝王賞(フリオーソ号)
・08年東京ダービー(ドリームスカイ号)
・07年東京ダービー(アンパサンド号)

08年は306勝をあげ、自身初の全国リーディング1位を獲得。NARグランプリ最優秀騎手賞に輝くなど大きな飛躍を遂げた。中央競馬にも頻繁に参戦しており、ファイト溢れるプレーを披露している。




記者‐戸崎騎手、お忙しいところ有難うございます。

戸崎‐いえいえ。

記者-今回のインタビュー原稿はパソコンに掲載されるんですけど、戸崎さんはインターネットをされますか?

戸崎-いえ、全然やらないですね。僕、基本的に機械に弱いんで(笑)。

記者-そうなんですか。メールなんかは?

戸崎-携帯のメールはたまに使いますけど、僕、直接電話かけちゃいますからね。電話の方が話が早いじゃないですか。メールを送るときも本当に必要最低限のことを打つだけで、絵文字もほとんど使わないです。

記者-そうですか。しかし戸崎さん、2008年だけで1700を超えるレースに騎乗されていますけど、これだけ乗っていたら休みがありませんよね?

戸崎-そうですね。でも、僕は競馬が好きですし、馬に乗るのが凄く楽しいんですよ。平日に地方で乗って、土日が休みの時でも、中央競馬のレースを第1レースから全部観ていたいですからね(笑)。だから、休みの時にどこかへ行きたいっていうのも、あまり思わないですね。



記者-プロフィールに「趣味・ゴルフ」とありますけど…。

戸崎-あー、ゴルフも2~3年行っていないですね。腕が落ちたんじゃないかなあ(笑)。

記者-(笑)これだけ沢山のレースに乗ると騎乗技術が上がるんじゃないですか?

戸崎-うーん、ただ数多く乗るだけじゃダメですよね。ただ乗ってくるだけ、回ってくるだけじゃなくて、その時々で何か課題を持って工夫して乗らないと巧くはならないんじゃないかと思います。

記者-例えば折り合いの付け方だったり?

戸崎-そうです。馬によって個性が全然違いますから、それに合わせるにはどうやって接してあげればいいのか、 という事を常に考えて工夫する事が大事だと思います。

記者-馬の数だけ個性があるわけですもんね。

戸崎-それが生き物を相手にしている、この仕事の面白いところです。同じ馬に乗っても日によって状態が違いますしね。もし全部同じだったら飽きちゃいますよ(笑)。

記者-本当ですね(笑)。

戸崎-レースでも、相手や枠順や馬場状態なんかが毎回違うから工夫のし甲斐があります。

記者-なるほど。ちなみに戸崎さんは、ご自身が乗っていないレースでもご覧になるんですか?

戸崎-はい、自分が乗っていないレースも観ますよ。やっぱり、いつ騎乗を頼まれるか分からないし、もし頼まれた時に何も知らないで乗るよりは、ある程度展開をイメージ出来ますからね。まあ、僕は競馬が好きなんでずっと観ていられますから(笑)。

記者-イヤイヤ観ても情報が頭に入ってこないでしょうしね(笑)。

戸崎-本当、そうですよ(笑)。

記者-しかし覚える事が一杯ですよね?戸崎さん、まさか全部の馬の…。

戸崎-いや、さすがに全部の馬の事は覚えられないです(笑)。

記者-ですよね(笑)。

戸崎-もちろん全部を完璧に覚える事は無理ですけど、新聞の馬柱を観ていると「ああ、この馬はこういうレースをしたな」っていうのをポワーッと思い出したりはします。

記者-そういう情報を元に作戦を考えられて。

戸崎-そうですね、でも考え過ぎないようにしていますよ。あんまり考え過ぎるのは自分には合ってないです(笑)。だから感性を大事にして。頭よりも感性ですね!

記者-なるほど、感性重視ということで。ところで、戸崎さんが中央で乗るようになったキッカケというのは?

戸崎-やっぱり地方交流戦ですね。交流戦に使う馬がいないと、自分が中央で乗りたいと思っていても乗れませんから。最近では、エージェントをはじめとした関係者の皆さんのおかげでだいぶ数も乗せてもらえるようになってきて、本当に有難いですよ。僕一人の力だけでは、こんなには乗せてもらえないですから。

記者-中央のレースに乗っていかがですか?

戸崎-乗りに行き始めた頃は、競馬が分からなくなりましたね。

記者-競馬が分からない?

戸崎-はい、レースに乗るときに、何がいい事なのか分からなくなっちゃって。今までの経験というか、積み上げてきたものがゼロになった感じですね。こっち(大井競馬場)は小回りのダートですけど、中央はコースは広いし芝もあるから乗り方もそれに合わせなきゃいけないし。慣れるまでは少し時間がかかりましたね。でもそのおかげで競馬の幅も広がったと思います。中央で感じた事を大井のレースで試してみたりして。まあそれが上手くいく事もあれば、いかない事もあるんですけど(笑)。



記者-そうですか。ちなみに中央で得意なコースってありますか?

戸崎-特にどこっていうのは無いですけど、中央のコースはどこも広くて乗りやすいですね。あんまり広すぎるから最後の直線の入口が分からなくなった事もありますよ。

記者-え?それはどのコースで(笑)?

戸崎-中山の芝1600mです(笑)。初めて乗った時、あそこのコースは4コーナーでどうやって進んでいけばいいのか分からなかったんですよね。

記者-コースの下見は…。

戸崎-事前にしましたけど、実際に乗ってみたら分からなくなっちゃって(笑)。しかも、後ろから行けば馬群にくっついていけたのに、逃げちゃって(笑)。

記者-目標に出来るものが無い状態で(笑)。

戸崎-だから勝負どころでも思いっきり追い出せなくて、周りをチラチラ見ながら乗っていました(笑)。

記者-初めてのコースだと、追い出しのタイミングも分かりにくいですよね?

戸崎-やっぱり初めは戸惑いましたね、今は慣れてきましたけど。

記者-かなり乗っていらっしゃいますもんね。ちなみに中央で乗りたいレースはありますか?

戸崎-やっぱり日本ダービーですね。もう…夢ですよね。実際に中央のダービーに乗るなんてまだ想像できません。

記者-東京ダービーを連覇された戸崎騎手でも。

戸崎-うん…、想像出来ないですね。大井でも中央でもダービーはやっぱり特別です。ダービーには魔物が住んでいる、とよく言いますけど、あれは本当ですよ!

記者-去年ドリームスカイで勝った時も。

戸崎-中央のディープスカイと“スカイ”繋がりで。四位さんも僕も連覇という繋がりもあって「ああ、今年はそういう流れだったんだな」と思いましたよ(笑)。

記者-断然人気のディラクエに勝ってしまったんですからね。

戸崎-みんなディラクエに勝って欲しいと思っていたんでしょうけど、僕だけ周りの空気を読まないで(笑)。

記者-(笑)そんな大仕事をやってのける戸崎さんですが、レースの乗り方で影響を受けた騎手はいますか?

戸崎-うーん、大井の頃はやっぱり内田博幸さんですね。中央に移籍されてからもアドバイスをいただいてます。あと中央では安藤勝己さんですね。

記者-戸崎さんから見て、地方出身の騎手と中央の騎手の違いって感じますか?

戸崎-はい。地方の騎手は強引に馬を動かすというか、馬への当たりが強い感じですね。中央の騎手は、芝のレースが多い事もあって当たりが柔らかい感じがします。あれだけ掛かるディープインパクトをなだめながら乗って勝つユタカさん(武豊騎手)の技術は本当に凄いです。

記者-もし戸崎さんがディープインパクトに乗っていたらどうですか?

戸崎-多分僕ではディープインパクトは御せなかったと思います。抑えきれないでブッ放していたんじゃないかな?で、ディープインパクトが逃げ馬になっちゃったり(笑)。

記者-新しいディープインパクト像ですね(笑)。ディープインパクトもいいですけど、現在、戸崎さんはフリオーソというスターホースとコンビを組まれて。

戸崎-はい、もう本当によく走ってくれるなあ、と思っています。

記者-そろそろ中央の強力なメンバー相手でもGI勝ちが見えて来ましたね。

戸崎-そうですね。この間の川崎記念でカネヒキリ相手にあれだけの良い勝負が出来ましたし。もともと、逆転出来る力はあると思ってずっと乗っていましたから。

記者-相当自信があるんですね。

戸崎-もちろんです。いつかはカネヒキリも逆転出来るくらいの馬だと思っています。本当、フリオーソは年度代表馬に選ばれた地方競馬一番の馬なので、これからも乗せてもらえるように、ミスしないように気をつけます。



記者-フリオーソのレースに限らずお聞きしたいんですけど、今までで一番印象に残ったレースって何ですか?

戸崎-うーん、一杯あり過ぎて思い出せないですね。対象が限定されているなら選びやすいんですけど。

記者-例えば「一番上手く逃げられたレース」とか「上手く折り合いを付けられたレース」という事ですか?

戸崎-そうですね。

記者-じゃあ「一番上手く折り合いを付けられたレース」を教えてください。

戸崎-折り合いでいうなら…アンパサンドですね。どのレースが、というよりもあの馬でいろいろと試行錯誤した事が印象に残っています。

記者-その試行錯誤の甲斐もあってビッグタイトルを取ることが出来て。

戸崎-はい、ダービーも勝たせてもらいましたし、本当にいろんな経験をさせてもらいました。去年は年度代表馬のフリオーソという馬に乗せてもらい、そこでも本当に勉強になることばかりです。

記者-今後のご活躍がますます楽しみになるばかりですが、そろそろお時間なので最後にひとつ質問させてください。戸崎さんが今一番欲しいものはなんですか?

戸崎-え?欲しいもの、ですか?えー、そうですねー、うーん…、やっぱり勝ち鞍ですね!

記者-それは地方・中央問わず?

戸崎-はい、もういくらでも。

記者-本当に貪欲ですね。先ほどのお話しだと、全国1位にはなったけどまだ内容には不満も。

戸崎-そうですね。やっぱりまだまだ自分のミスで負けたレースがありますから。本当、技術的にも人間的にもまだ全然だと思うんで…。やっぱり、みんなから認められる騎手を目指して今年は頑張っていきたいですね。

記者-地方を代表するジョッキーとして。

戸崎-そういう存在になっていきたいですよね。それにはただ勝ち鞍が1位になればいいってものじゃなくて、やっぱり人間としての中身もしっかりしていなければいけないだろうし、重賞でもガンガン結果を出せるようにならないといけないですね。

記者-質と量を共に充実させて。

戸崎-そうなるように頑張ります。

記者-応援しています。最後にもうひとつだけいいですか?

戸崎-いいですよ。



記者-戸崎さん、なんでその勝負服(青、胴赤星散らし)にされたんですか?

戸崎-ああ、これですか。僕、中央のシルクさんのカラーが好きだったんですよ。水色のベースに赤い丸が胸に並んだあの勝負服が「綺麗だな」と思って。

記者-それで青と赤という配色にされたんですね。色も形も自由自在に選べるんですか?

戸崎-自由ですね。形と色で一応基本的な決まりはあるのでそれに沿って選んで。

記者-戸崎さんの勝負服はシルクさんに比べて青の色が濃いですね。

戸崎-あの水色はこっちに無かったんですよ。

記者-そうなんですね。星の形は…。

戸崎-的場文男さんですよ!的場さんの星に決まっているでしょう(笑)。

記者-的場さんが由来でしたか(笑)。あの的場さんの勝負服Tシャツを売っているのを昔見ましたけど、戸崎さんのも売られていました?

戸崎-いや、ちょっと分からないですね。今は売ってないんじゃないですか。 (※注:販売はしておりません)

記者-もし若い女性が街中で戸崎さんの勝負服Tシャツを着て歩いていたらどう思いますか?

戸崎-街で見かけたら嬉しいですよね(笑)。いや……、やっぱりヒキますかね。それ、街で着ちゃダメだろ、みたいな(笑)。嬉しいんだけど、街着として着ちゃうのは違うだろーって。

記者-(笑)勝負服のデザインを途中で変える事って出来るんですか?

戸崎-確か出来たと思いますけど…、出来たのかな?分からないですね。 (※注:南関東に所属している限りは変更はできません)

記者-もし変えられるとしたら?

戸崎-変える気は無いですね!あ、星はもっと増えてもいいかな(笑)。スターは体中にたくさん、100個あってもいいかも(笑)。

記者-全身スターで(笑)。最後は競馬と関係ない質問ですみませんでした。本日は有難うございました。

戸崎-有難うございました!



★取材日=09/03/05
★取材場所=大井競馬場