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池江泰寿調教師

池江泰寿調教師

厳寒期がベスト条件。週末は気温に注目

-:トゥザグローリーの近況を教えてください。宝塚記念の時も取材をさせていただいて、鳴尾記念でこの馬の先行できて、そこからまた脚を使うという、今まで我々が思っていたトゥザグローリーとは違った競馬が出来ました。元々、折り合いに苦労する面がありましたから、出して行って折り合いを付けて、有利な位置で競馬をして最後も伸びるという新しい面を見せてくれたのですけど、宝塚記念ではそれが上手く出ず、逆にオルフェーヴルの強さが目立ってしまったレースになってしまいました。

池江泰寿調教師:あれはポジション、展開は全く関係ないですね。もうレース前に終わっていました。当日の暑さに参っていたんです。トレセンで朝5時に乗っていると、涼しいから大丈夫だったんですけれどもね。どうしても装鞍所に集合するのがレースの70分前ですから気温も高い。それを見越してミストは用意していました。待機馬房でミストを使ってドンドン馬房内を冷却していたのですが、外は35度ぐらいあったのかな。かなり蒸し暑くて、もう装鞍所でグタッとしてダメでしたね。これは競馬を度外視して、見てなかったと思ってくれても良いですよ。

-:そうでなかったら、オルフェーヴルから3.8秒も負ける馬ではないですよね?

池:これはファンもわかっているでしょう?有馬記念を見たらわかるように、この馬は冷え込まないとダメですよ。今朝、ちょっと冷えたじゃないですか?すると、馬の調子は良かったんですからね、今日は(10月16日)。

-:気温は11度ぐらいでした。

池:ええ、やっぱり10度を切らないとダメですよ。だから、気候的に11月もちょっと暖かい日もあるので、12月、1月、2月、3月がこの馬のベストシーズンですね。



-:じゃあ、ギリギリ許容範囲内の秋の天皇賞という感じですか?

池:う~ん、秋天も結構、汗ばむぐらいに気温が上がりますからね。実際、秋天は毎年、夏のスーツで行っていますよ。だから、JCぐらいからようやくエンジンが掛かるんじゃないでしょうか。12月の終わりになったら本当に良くなるんですよ。


■「宝塚記念は競馬を度外視して、見てなかったと思ってくれても良いですよ」

-:この馬が夏に良くないという面はファンもよく知っていると思うんですけど、やっぱり母がトゥザヴィクトリーという、ファンも多い馬なので、期待はしていると思うんです。G2では勝っていますし、あとはG1だけですから。

池:2月辺りに中距離のG1があったら、おもしろいと思うんですけど、なかなかそれは無理なんで、上手く有馬で結果を残したいですね。オルフェとか出てくるかもしれないし、どうなるか今の段階では分からないけれどもね。例年、1月、2月辺りの状態の良い時のG2の勝ち方を見たら、G1はいつでも勝てるんですよ。その時期に乗ったジョッキーは「すごい!G1級だ」と褒めてくれるんですよ。

-:1月、2月のパフォーマンスを見て、我々もG1を勝てる馬だと期待してしまうんです。

池:もちろん能力はね。3歳の頃は夏場もこなしていたんですよね。でも、福島のラジオNIKKEI賞の時は暑くて、サッパリだった。年を取るにつれて、ドンドン暑さには弱くなる。人間もそうで、子供の時は夏休みの昼間に遊んでいても、大人になったら嫌じゃないですか?状態自体は決して悪くはないんですけどね。ただ、叩き良化型でもあるし、もう少し気温が低くなってくれないと、本来のパフォーマンスは引き出せないですね。

-:もう1回強い相手とやって、先行して脚を使うという競馬が見てみたいですね。

池:そうですね。その通り。

-:それを期待するのはJC、有馬に残しておいたら良いですか?

池:そうなりますね。



-:それでは、2頭を応援してくれているファンにメッセージをお願いします。

池:2頭共、非常に個性があってファンの多い馬なんですけど、ジョーダンに関しては去年、秋天をやっと取れました。まだまだG1を複数取れる能力があるので、2勝目、3勝目を目指して頑張りたいと思います。トゥザグローリーは何としてもG1を勝たしてあげないといけない馬なので、しっかりとG1を勝たしてやりたい、それが秋以降、冬に向けての目標ですね。

-:ブリーダーズカップも控えたお忙しい時期に、ありがとうございました。


(写真・取材)高橋章夫

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【池江 泰寿】Yasutoshi Ikee

1969年滋賀県出身。
2003年に調教師免許を取得。
2004年に厩舎開業。
JRA通算成績は324勝(12/10/21現在)
【初出走で初勝利】
04年3月20日 1回阪神7日目5R ソニックサーパス(1着/14頭)


■最近の主な重賞勝利
・12年 宝塚記念
・11年 有馬記念/菊花賞/日本ダービー/皐月賞(共にオルフェーヴル号)
・12年 エプソムカップ(トーセンレーヴ号)
・12年 鳴尾記念/日経新春杯(共にトゥザグローリー号)
・12年 京都新聞杯(トーセンホマレボシ号)
・12年 京都記念(トレイルブレイザー号)
・12年 きさらぎ賞(ワールドエース号)


惜しまれつつ定年により引退した池江泰郎元調教師を父に持ち、武豊騎手とは同級生であり幼馴染でもある。開業3年目の06年にドリームジャーニー号で朝日杯FSを制しG1初制覇。同年に最高勝率調教師賞を受賞し、さらに08年には最多勝利調教師賞も受賞。多数の名だたるオープン馬を育て上げ、もはや知らぬ者などいない誰もが認める調教師の一人。昨年はオルフェーヴルで牡馬クラシック三冠を達成。所属馬のレベルは競馬界の銀河系軍団ともいうべき押しも押されるトップステーブル。先日の凱旋門賞では惜しくもオルフェーヴルが2着となったが、その名を海外にまで轟かした。