スプリンターズSをもっての国内ラストラン、今秋での引退を表明していたストレイトガールだが、陣営が予てから欲していたスプリント戦のタイトルを遂に手にした。その立役者である戸崎騎手は「馬のおかげ、厩舎の仕上げ」と謙遜してはばからないが、同馬のG1勝ちはいずれも当人の手によるものということを考えれば、その手腕を認めざるをえないだろう。歓喜の舞台裏は決して順風満帆ではなかった一戦を、ジョッキー目線で振り返ってもらった。

国内ラストランを見事にV!

-:改めてスプリンターズS(G1)の優勝、おめでとうございます!ストレイトガール(牝6、栗東・藤原英厩舎)は前回のセントウルSで4着からひと叩きして、そこからの変わり身、上積みがポイントだったと思うのですが、返し馬の雰囲気から教えていただけますか?

戸崎圭太騎手:ありがとうございます。跨ったばかりは、そんなに変わりない感じがしたのですが、キャンターに下ろしてからはすごく良い雰囲気で、ガラッと変わっていると感じましたね。

-:僕も返し馬の行きしなをラチ沿いで眺めていたのですが、どんな気配を感じとっているのかなと考えながら見ていました。行きっ振りや肉体面、それらが前回と違ったということですね。

圭太:そう。仕上げは絶好調だと感じましたね。

-:そして、2番枠を引いたことで、ある程度想定されていたレースプランがあったと思うのですが、そこと実際の相違を教えていただければと思います。

圭太:思ったよりも位置取りは後ろになりましたね。スタートは出てくれたのですが、横の馬にぶつけられて、勢いを失くした分、ダッシュがつかなくて。結果的に後手を踏んでしまったレースではありました。誤算でしたね。

戸崎圭太

▲返し馬に臨むストレイトガールと戸崎騎手


-:もう少し前めのポジションかと思っていたので、後退していった時には心配しました。なおかつ、あのメンバーだったので、ペースは速くなるのかと思っていたのですが、イメージの違いはありましたか?

圭太:速くなるか、遅くなるか、どちらか2択で遅くなることも考えていました。ハクサンムーンは何が何でも行くと言っていたので、周りも早くに判断して抑えて行くとなると、落ち着いてしまう。それは頭にありましたね。

-:「速くなる、速くなる」と言われている時こそ、遅くなったりするというのが競馬でよくあるものですね。

圭太:そうですね。並びを見た時に、ベルカントはあの並びだと下げて行くだろうと思いましたし、アクティブミノルもハクサンムーンの外だったので、初めからハクサンムーンを行かせてという形になると、すぐに(ペースが)落ち着く展開もありうると思いましたね。

-:あれがもし、ハクサンムーンとアクティブミノルが逆で、もう少し離れていたりしたら、アクティブミノルがもう少し主張したところにハクサンムーンが追い抜いていく形で、違ったレースになったかもしれないということですね。

圭太:多分、その2頭でやりあってということもあったでしょうね。そういうことを考えても、ペースは速くなる一択だけではない頭はありました。

-:ということは、スローになった時というパターンでも、捕えられる、差し切れる手応えというのはあった訳ですか?

圭太:だからこそ、スタートは出して良い位置で競馬をしたいと思っていたのです。ペース次第で一つ(ポジションを)下げても良い。そうは思っていたのですが、最初から後手を踏んだので、ああいう形になってしまいました。

-:あの段階で、ある程度そこら辺は仕方なく脚を溜めるというか、腹を括ってという感じだった訳ですね。

圭太:そうですね。あとは、あの後ろでインというのは考え辛いので、早めに外には出しておきました。

-:抜けだしてからの脚はすごかったですね。

圭太:ええ、手応えはありましたからね。抜けてからは本当にすごい伸び、切れ味でした。

戸崎圭太

▲史上初めて6歳牝馬という性齢で牡馬混合G1を制したストレイトガール


当初の不安を払拭した一勝

-:そのスプリンターズS関連で読者から質問があります。ペンネーム・ハルハロさんから「ストレイトガールのマイル、スプリントでの両制覇おめでとうございます!とっても感動しました!ストレイトガールは、人間で言うとどんな女性になりますか?」とのことです。

圭太:どんな女性?う~ん……。

戸崎圭太騎手マネージャー:プレゼンターの河北麻友子さんみたいな女性で良いんじゃないの(笑)。

圭太:だって、河北さんの性格を知らないじゃん(笑)。まあ、素直は素直ですね。優しさというよりは、ちょっと気の強い感じがするかなと。

マネ:「気品のある」という感じね。

圭太:気品?

マネ:品格があって、どこでもキチッとしているというか、人に観られているという意識があるというか、育ちが良い人というイメージ。ピシッとしているみたいな。

圭太:まあまあ、そうだね。気の方は、やっぱり強いものを持っていますね。

-:「また、戸崎さんのタイプになりそうですか?」とのことですが。

圭太:女性として?難しいねえ。でも、僕はストレイトガールが大好きですよ。相性は合っているかと思います。

-:今だから振り返ると、秋に乗る前は「この年齢でスプリント戦はどうかな」ということをおっしゃっていたじゃないですか。それでもちゃんと勝つのですから、素晴らしいですね。

圭太:うん、だから素晴らしいですよ。それに運も持ち合わせていると思います。

戸崎圭太

▲プレゼンターの河北麻友子さんと


-:藤原先生も言っていましたね。「こういうメンバーだから、運があることも大事だったんじゃないか」と。確かにその通りかと思いましたね。続いてペンネーム・美優紀さんからの質問です。「牝馬も特定の騎手、男性を好きになったり、嫌いになったりはあるのでしょうか?なぜかと言うと、牝馬の接し方、扱いが上手い戸崎さんなら知っていそうな気がしたので質問してみました」とのことです。

圭太:いや、その辺は分からないですよね。ただ、僕は(牝馬が)好きなのでね。

-:成績からも相性は良いですね。ちなみに、牝馬と牡馬で人を嫌う、嫌わないはあるのですか?

マネ:そりゃ、馬だってありますよ。乗る人が替われば悪さもするし。

圭太:やっぱり生き物なので、あるとは思いますよ。嫌だなと思うことは。

マネ:調教ですごく怒られた時は絶対に覚えていますもん。嫌な思いをしているというのは絶対に覚えていますよ。

戸崎圭太

▲廣崎オーナーとガッチリ握手


-:それは、牝馬、牡馬というのはあまり関係ない訳ですよね。

マネ:それは、性格的なものが大きいと思います。

圭太:そうだと思いますね。

-:話は戻りますが、ご自身にとっても、G1勝ちは秋シーズンの一つのテーマだったと思うのですが、幸先良く1勝です。この秋はまだまだチャンスがありそうですね。

圭太:まあ、そうですね。数多く良い馬に乗せていただいているのでね。結果を出していきたいです。

-:改めて、ストレイトガールという馬を評価するとどんな馬ですか?

圭太:素晴らしい馬ですね。僕は相性が良いと思っていますし、1200m、1600mという2つの距離でG1を勝つというのは、センスの高さがなければ出来ないことかと思います。この年齢を考えても、頭が下がりますね。